第19話 告白

文字数 1,064文字

ふーっとトオルの吐く息が聞こえる。

『あの…、マヤさん、オレ、女性に告白した事がないって言いましたよね。だから、今ちょっと緊張しまくってるんですけど…。それに、こんなこと今日は想定していなかったし…、心の準備もできていないし…』

最後の方は独り言のようにごにょごにょ言ってよく聞き取れなかった。
マヤの心臓の鼓動がうるさく響きだす。

『でも、やっぱり言いますね!オレ、マヤさんのこと好き…みたいです。この二か月、マヤさんのことばかり考えてました』

スマホにあてている耳から熱が全身に伝わり、心臓がせわしなく跳ねる。

『まだ知り合って間もないですけど…。その、…マヤさんのこともっと知りたいんです。オレのことももっと知ってほしい…。だから…、いきなり付き合ってくださいとは言いません。だから、その…、友達から、でお願いします!』

ぎこちなく、しかし、一言一言丁寧に伝えようとするトオルが愛しくて胸が締め付けられる。

想定外の展開にどう反応していいかわからないまま、そのままベッドに倒れこみそうになるのを堪える。
スマホを持つ手を換え、座り直した。

「トオルくん、私の年齢知ってるよね?16歳も違うんだよ。友達ってのはアリかもしれないけど、その、好きとか、付き合うとかは、ちょっと無理があると思う…」

最早、自分に言い聞かせるように言う。

『でも…!』

トオルはすぐに切り返す。

『ルイ達もそれくらい離れてますよ。全然無理じゃないですよ!』

確かに、ルイ達は17歳差だ。でも、かなり特殊な出会い方のようだし、何より彼女の明美は羨ましいくらい童顔で小柄で若々しい。
自分はどう見ても年相応の外見だし、特に女を磨く努力もしていないし…。

「そうかもしれないけど…」

『あ、ごめんなさい!今はまだそこまで考えてくれなくていいんです。とにかく、また会ってほしいです。オレ、マヤさんにふさわしい男と認めてもらえるよう、がんばるんで!』

通話が終わった後も、トオルの嬉しそうな声がいつまでも耳に残り、今度こそベッドにどっと倒れこんだ。

「会うのは…全然、嫌じゃない、よ…」

そう言うのがいっぱいいっぱいだった。

『来月、神戸に行きませんか?マヤさんが好きなバラが見頃ですし。花がたくさん見れる公園があるんですよ。ついでにルイにも会いにいきましょう!』

すかさず次の約束を取り付けようとするトオルに言われるがまま、頷いていた。
バラが好きって話はオフ会の時にした記憶がある。
マヤはこのままトオルのペースにどんどん引き込まれ、後戻りできなくなるような気がしたが、不思議と不安や恐れは感じなかった。
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