第5話 圧倒的な破壊力
文字数 1,645文字
「トオルさん、お酒何にする?」
そうはいっても、マヤはイケメンには散々辛い目に合わされているし、『三日で飽きる』ことも心得ている。
十年前ならいざ知らず、今のマヤがさほど心を動かされることはない。
トオルにメニューを渡す。
「生でお願いします」
メニューは見ずに、ニコッと微笑むトオルと初めて目がバッチリ合った。
その圧倒的な破壊力を持つ笑顔から、思わず視線を逸らす。
この青年は人と話す時に相手の目を凝視する癖があるようだ。
その眼差しは穏やかでありながら、どこか相手の心の内を深く探るようで、こちらの秘められた感情や思考を見透かすかのようだ。
(ちょっと苦手かも…)
悪い人ではなさそうだが、人見知りで他人に心を開く事がなかなか出来ない自分とは真逆のタイプの彼に、若干の苦手意識が芽生えた瞬間だった。
その時、電話の着信音が鳴った。
トオルのスマホのようだ。
トオルは画面を確認すると、眉を顰め、ため息をついてから立ち上がった。
「ちょっと失礼します」
そういうと、部屋から出て行った。
トオルと入れ替わりに店員が料理を次々と運んできた。
トオルが部屋を出て行ったのを見送りながら、
「トオルさんて、めちゃくちゃカッコイイね!ビックリしちゃった」
キョロちゃんが目を輝かせながら言う。
「おいおい、だんなの前でそれ言う?」
帝王がツッコむ。三人が一斉にマックスを見ると、無表情でビールを呷りながら、スマホを操作していた。
すると今度はマヤのスマホから着信音が鳴った。ルイからだ。
「あ、もしもし、オレ。多分近くまで来てるんだけど、店が見つからん」
「わかった。じゃあ、店の外に出るわ」
そう告げて、スマホだけ持ち、下まで降りていくことにした。
1階まで降りて、狭い通路を通り、店の外に出ると、目の前に大男=トオルが立っていて電話で話をしていた。
目が合ったので軽く会釈をして、トオルの横を通り過ぎ、店の前の通りを左右見渡してみた。
(そういえば、服装とか、何も聞いてない)
しかしそんな心配は不要だった。
すぐに20メートルほど先から、二十代とおぼしき男性とそれより若干年上に見える女性がキョロキョロ当たりの看板を見渡しながらこちらに向かってくるのが見えた。
恐る恐る近づき、言葉をかけようか迷っていると、男の方がこちらを指差し、
「○○!」
と、ゲームのニックネーム=アニメキャラの名前を大声で叫んだ。
マヤは真っ赤になって、慌てて「しー!」と人差し指を唇の前で立てた。
周囲の通行人が一斉にマヤを見たのだ。それに気付いたルイは一人で爆笑していた。
切れ長の目、シャープなフェイスラインに、薄い唇が実年齢よりも大人びて見える。
髪型はツーブロックでファッションにもこだわりがあるようだ。マヤ世代にはよく理解できない、おしりが垂れ下がって今にも下着が見えそうなもったりしたパンツに、黄緑のざっくりとしたタートルネックセーターの上からボディバッグを斜め掛けにしている。
彼を一通り観察した後、その隣で微笑んでいる女性に向かって、「初めまして」と挨拶をした。
彼女は身長は多分150センチあるかないかくらいの小柄で、ストレートの茶髪ロングヘアに、ライダースジャケットにダメージジーンズといういで立ちだ。
同い年のマヤより十歳は若く見えた。今どきの若者、といったファッションのルイと並んでいても全く違和感がない。
ルイは、身長162センチのマヤより少し高めの170センチくらいだろうか。
「もう先に始めてるよ。店はここ」
と指さしながら入口まで案内する。トオルがまだ電話をしていたので、そっとルイに耳打ちする。
「彼がトオルさん。今電話中」
「でかいな!」
ルイはトオルをじろじろ見ながら、シンプルな感想を述べて、店に入っていった。
二人に続いてマヤも店内に入ろうとしたとき、後ろからトオルの声が聞こえた。
「それは無理だよ。今から飲み会だから。もう切るよ」
少し不穏な空気を感じながらも、マヤは足を止めず店に入って戸を閉めようとしたが、すぐに大きな手が伸びてその閉まりそうな戸を押さえた。
そうはいっても、マヤはイケメンには散々辛い目に合わされているし、『三日で飽きる』ことも心得ている。
十年前ならいざ知らず、今のマヤがさほど心を動かされることはない。
トオルにメニューを渡す。
「生でお願いします」
メニューは見ずに、ニコッと微笑むトオルと初めて目がバッチリ合った。
その圧倒的な破壊力を持つ笑顔から、思わず視線を逸らす。
この青年は人と話す時に相手の目を凝視する癖があるようだ。
その眼差しは穏やかでありながら、どこか相手の心の内を深く探るようで、こちらの秘められた感情や思考を見透かすかのようだ。
(ちょっと苦手かも…)
悪い人ではなさそうだが、人見知りで他人に心を開く事がなかなか出来ない自分とは真逆のタイプの彼に、若干の苦手意識が芽生えた瞬間だった。
その時、電話の着信音が鳴った。
トオルのスマホのようだ。
トオルは画面を確認すると、眉を顰め、ため息をついてから立ち上がった。
「ちょっと失礼します」
そういうと、部屋から出て行った。
トオルと入れ替わりに店員が料理を次々と運んできた。
トオルが部屋を出て行ったのを見送りながら、
「トオルさんて、めちゃくちゃカッコイイね!ビックリしちゃった」
キョロちゃんが目を輝かせながら言う。
「おいおい、だんなの前でそれ言う?」
帝王がツッコむ。三人が一斉にマックスを見ると、無表情でビールを呷りながら、スマホを操作していた。
すると今度はマヤのスマホから着信音が鳴った。ルイからだ。
「あ、もしもし、オレ。多分近くまで来てるんだけど、店が見つからん」
「わかった。じゃあ、店の外に出るわ」
そう告げて、スマホだけ持ち、下まで降りていくことにした。
1階まで降りて、狭い通路を通り、店の外に出ると、目の前に大男=トオルが立っていて電話で話をしていた。
目が合ったので軽く会釈をして、トオルの横を通り過ぎ、店の前の通りを左右見渡してみた。
(そういえば、服装とか、何も聞いてない)
しかしそんな心配は不要だった。
すぐに20メートルほど先から、二十代とおぼしき男性とそれより若干年上に見える女性がキョロキョロ当たりの看板を見渡しながらこちらに向かってくるのが見えた。
恐る恐る近づき、言葉をかけようか迷っていると、男の方がこちらを指差し、
「○○!」
と、ゲームのニックネーム=アニメキャラの名前を大声で叫んだ。
マヤは真っ赤になって、慌てて「しー!」と人差し指を唇の前で立てた。
周囲の通行人が一斉にマヤを見たのだ。それに気付いたルイは一人で爆笑していた。
切れ長の目、シャープなフェイスラインに、薄い唇が実年齢よりも大人びて見える。
髪型はツーブロックでファッションにもこだわりがあるようだ。マヤ世代にはよく理解できない、おしりが垂れ下がって今にも下着が見えそうなもったりしたパンツに、黄緑のざっくりとしたタートルネックセーターの上からボディバッグを斜め掛けにしている。
彼を一通り観察した後、その隣で微笑んでいる女性に向かって、「初めまして」と挨拶をした。
彼女は身長は多分150センチあるかないかくらいの小柄で、ストレートの茶髪ロングヘアに、ライダースジャケットにダメージジーンズといういで立ちだ。
同い年のマヤより十歳は若く見えた。今どきの若者、といったファッションのルイと並んでいても全く違和感がない。
ルイは、身長162センチのマヤより少し高めの170センチくらいだろうか。
「もう先に始めてるよ。店はここ」
と指さしながら入口まで案内する。トオルがまだ電話をしていたので、そっとルイに耳打ちする。
「彼がトオルさん。今電話中」
「でかいな!」
ルイはトオルをじろじろ見ながら、シンプルな感想を述べて、店に入っていった。
二人に続いてマヤも店内に入ろうとしたとき、後ろからトオルの声が聞こえた。
「それは無理だよ。今から飲み会だから。もう切るよ」
少し不穏な空気を感じながらも、マヤは足を止めず店に入って戸を閉めようとしたが、すぐに大きな手が伸びてその閉まりそうな戸を押さえた。