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文字数 937文字

「あ……あの……やっぱり、やんなきゃ駄目?」
 この後に及んで、ヤクザの若旦那が青冷めた顔で、とっくに話が終ってる筈の件を蒸し返した。
「このままじゃ『正義の味方』どもに俺達の居場所が丸判りだ。さっさとやるぞ」
 ここは、韓国(こっち)のヤクザである「クズリ」の部下が店長をやってる中華料理屋。
 テーブルの上には上半身裸のヤクザの若旦那が(うつぶ)せになって横たわり……。
 俺はヤクザの若旦那の背中に印刷されたマイクロ・マシン・タトゥーに、この店で一番強い蒸留酒をブッかけ……そして火を()け……。
「うわああああッ‼」
「うわああああッ‼」
 俺と若旦那が同時に悲鳴。
 若旦那は苦痛のせいで。俺は火の勢いが思ったよりデカかったせいで。
「ぎゃあああッ‼」
「お……おい……何やってんだ、馬鹿。もう1人の馬鹿を殺す気か?」
 「クズリ」が俺を怒鳴り付ける。
「……いや、火の勢いが凄かったんで、消火しようと……」
「何で、消火するつもりで、七〇度ぐらいの酒をブッかける?」
「う……うん?」
 その時、俺の元所属組織の大宮司(クソじじい)の声。
「あ……の……。このおじいさん……意識を取り戻したみたいですけど……」
 続いて「教祖サマ」のおどおどとした声。
「お……お前ら……何をしとる? この縄を解けッ‼」
「あんたが必要な情報を自白(ゲロ)してからだ。おい、この騷ぎは何で起きた? 何で『(やしろ)』への門を開いて死霊どもを解き放った?」
「貴様……」
「何だ?」
「『死霊』とは何だ?『英霊』とお呼びせんかッ‼ 御国の為に命を捨てられた……」
「ああ、その愛国者サマ達は、死んだ後も俺達にコキ使われてたんだけどな」
「おのれ……この非国民……目にもの見せて……あれ? おや?」
 どうやら、大宮司(クソじじい)は「御国の為に命を捨てられた尊い方々」の死霊を更にコキ使うつもりだったらしいが……。
「マヌケ。お前が、あんな馬鹿デカい『門』を開きやがったせいで、『魔法使い』系の『正義の味方』どもが、超強力な『浄化魔法』を『(やしろ)』にブチ込みやがった。もう『(やしろ)』は消滅して……尊い英霊サマ達は、消滅したか……()()()()によってかけられた呪縛から自由になった」
「嘘を言うなッ‼ そんな馬鹿な事が有る筈が……」
「俺の言ってる事が嘘だと思うなら、死ぬまで尊い英霊サマ達を呼び出し続けてろ、ボケ」
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