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文字数 1,619文字
『緊急事態発生。特に指示を受けた方以外は、ドアに鍵をかけて、部屋から出ないで下さい。火事や有毒ガスや重大な心霊現象・魔法災害の発生は確認されていません。落ち着いた行動をお願いします』
夕食と風呂の時間が終り数時間後……施設内に音声放送が鳴る。
「始まったな……。行くぞ」
「いいんですか、これ?」
同室の源田のおっさんが、俺に、そう訊いた。
「何がだ?」
「い……いや、だって……」
「いずれ鎮圧されるさ。でも、その隙に逃げ出す」
「だから……」
「俺達は悪党だ。心を鬼にしろ」
俺と源田のおっさんは、放送に従わず、部屋から出て……。
時折、誰かの叫びや、ガラスか何かが割れる音が聞こえる。
ここでは、「正義の味方」と元「悪党」の両方が講習を受けている。
どうやら、「正義の味方」向けの「新人研修」と元「悪党」向けの「社会復帰訓練」は、色々と「共通科目」が有ったらしい。
そして、ここは、人類史上有数のディストピア的な「刑務所」と化した。
看守と囚人が入り混じり、誰が看守で誰が囚人かは、看守の側は知ってるが、囚人の側は知らない、恐るべき「刑務所」だ。
そして、吐前 のおっさんの「精神操作能力」は……「囚 人 」の 中 に は 効 く 奴 も 居 る が 、「看 守 」に は ほ ぼ 効 か な い だ ろ う 。
俺は、どうやら「囚人」である確率が高い奴をリストアップし……更に、吐前 のおっさんが「精神操作能力」を使った場合に、検知・無効化・「呪詛返し」なんかが出来るであろう「魔法使い」「超能力者」っぽい「気」の持ち主を除外し……。
そいつらに対して、片っ端から、2つの「精神操作」をかけてもらった。
1つは「不安や恐怖を増大させる」。もう1つは「『自分は、今、少しも感情的でなく、冷静で理性的だ』と思い込ませる」。
そこに、俺達「悪党」が無意識の内に持ってる「『正義の味方』なんて甘ちゃんで、俺達『悪党』の方が『現実的』だ」って思い込みが加わると何が起きるか?
……言うまでもねえ……。
「うきゃあああッ‼ 死にやがれ〜ッ‼ こん畜生があああッ‼」
そうだ、俺に殴りかかってきた、この男みたいに……えっ?
ドゴオッ‼
「うげええええッ‼」
「はぁ、はぁ、はぁ……何、ぼおッとしてんですか?」
源田のおっさんが、「一時的に身体能力を上げる」能力を使って、俺に殴りかかってきた男の鳩尾 に思いっ切り前蹴りを叩き込んだ。
ほぼ不意打ちに近かったのと、急所に命中したのと、源田のおっさんの能力のお蔭で、急に殴りかかってきた男は、床に倒れ、ゲロを撒き散らしながら、苦しみもがいていた。
「えっ? えっ? えっ? えっ? あ〜、おい、おっさん、大丈夫かッ?」
このおっさんの能力は……「世にもトホホな使うと寿命を削る能力」。「一時的に身体能力を上げる」能力を使うと、あっと言う間に、気を失なうレベルの高血圧・低血糖になっちまうらしい。
「一瞬でしたから、大丈夫です。でも……これ……」
まずい……。いきなり……目論見がビミョ〜に外れた。
「恐怖や不安に駆られながら、自分は理性的だと思ってる」暴徒どもは……まさか、あれか……「ブチのめせるなら、誰でも良かった」状態になってんのか?
「やっぱ……罰が当たったんですよ……。同 じ 悪 党 を 踏 み 台 に し て 、私 達 だ け こ こ か ら 逃 げ よ う な ん て 、ど う 考 え て も 間 違 っ て ま す よ 」
「な……なに……言ってんだよ。……お……俺達は……あ……悪党だぞ……。心を……お……お……鬼にするんだ……。同 じ 悪 党 を 踏 み 躙 っ て で も ……」
うわあああ……「魔法使い」の基礎訓練として、自分の心を制御出来るようになってる筈なのに……呂律が回ってないのが自分でも判る……。
「あの……一緒にここから脱出する筈のメンバーの誰かも踏み躙るつもりじゃないでしょうね?」
「い……いや……それは……。あのなぁ……あの『若』には、コネが有る。あんた含めた他の奴は、ショボいが何かの能力を持ってる。使い潰そうなんて、不合理に決ってるだろ」
夕食と風呂の時間が終り数時間後……施設内に音声放送が鳴る。
「始まったな……。行くぞ」
「いいんですか、これ?」
同室の源田のおっさんが、俺に、そう訊いた。
「何がだ?」
「い……いや、だって……」
「いずれ鎮圧されるさ。でも、その隙に逃げ出す」
「だから……」
「俺達は悪党だ。心を鬼にしろ」
俺と源田のおっさんは、放送に従わず、部屋から出て……。
時折、誰かの叫びや、ガラスか何かが割れる音が聞こえる。
ここでは、「正義の味方」と元「悪党」の両方が講習を受けている。
どうやら、「正義の味方」向けの「新人研修」と元「悪党」向けの「社会復帰訓練」は、色々と「共通科目」が有ったらしい。
そして、ここは、人類史上有数のディストピア的な「刑務所」と化した。
看守と囚人が入り混じり、誰が看守で誰が囚人かは、看守の側は知ってるが、囚人の側は知らない、恐るべき「刑務所」だ。
そして、
俺は、どうやら「囚人」である確率が高い奴をリストアップし……更に、
そいつらに対して、片っ端から、2つの「精神操作」をかけてもらった。
1つは「不安や恐怖を増大させる」。もう1つは「『自分は、今、少しも感情的でなく、冷静で理性的だ』と思い込ませる」。
そこに、俺達「悪党」が無意識の内に持ってる「『正義の味方』なんて甘ちゃんで、俺達『悪党』の方が『現実的』だ」って思い込みが加わると何が起きるか?
……言うまでもねえ……。
「うきゃあああッ‼ 死にやがれ〜ッ‼ こん畜生があああッ‼」
そうだ、俺に殴りかかってきた、この男みたいに……えっ?
ドゴオッ‼
「うげええええッ‼」
「はぁ、はぁ、はぁ……何、ぼおッとしてんですか?」
源田のおっさんが、「一時的に身体能力を上げる」能力を使って、俺に殴りかかってきた男の
ほぼ不意打ちに近かったのと、急所に命中したのと、源田のおっさんの能力のお蔭で、急に殴りかかってきた男は、床に倒れ、ゲロを撒き散らしながら、苦しみもがいていた。
「えっ? えっ? えっ? えっ? あ〜、おい、おっさん、大丈夫かッ?」
このおっさんの能力は……「世にもトホホな使うと寿命を削る能力」。「一時的に身体能力を上げる」能力を使うと、あっと言う間に、気を失なうレベルの高血圧・低血糖になっちまうらしい。
「一瞬でしたから、大丈夫です。でも……これ……」
まずい……。いきなり……目論見がビミョ〜に外れた。
「恐怖や不安に駆られながら、自分は理性的だと思ってる」暴徒どもは……まさか、あれか……「ブチのめせるなら、誰でも良かった」状態になってんのか?
「やっぱ……罰が当たったんですよ……。
「な……なに……言ってんだよ。……お……俺達は……あ……悪党だぞ……。心を……お……お……鬼にするんだ……。
うわあああ……「魔法使い」の基礎訓練として、自分の心を制御出来るようになってる筈なのに……呂律が回ってないのが自分でも判る……。
「あの……一緒にここから脱出する筈のメンバーの誰かも踏み躙るつもりじゃないでしょうね?」
「い……いや……それは……。あのなぁ……あの『若』には、コネが有る。あんた含めた他の奴は、ショボいが何かの能力を持ってる。使い潰そうなんて、不合理に決ってるだろ」