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文字数 2,207文字
一口に「物理的実体のない霊的・魔法的な存在 がみ え る 」と言っても、色々と種類が有る。
1つは受動的 センシングに近い「み え る 」。
2つ目は能動的 センシングに近い「み え る 」。……これは、1つ目の「み え る 」より詳しい情報が得られる場合が多いが、「み て 」いる事を相手に気付かれる場合が有る。
3つ目の「み え る 」は、最初の2つとは色々と異なる。1つ目か2つ目の「み え る 」は、あくまで「気配」みたいなモノしか認識出来ない。それを、より理解し易い形に脳内で変換するのが、この「み え る 」だ。
ややこしい事に、「見える」「観える」「視える」その他「みえる」の意味のどの漢字を、どの「み え る 」に使うかは、同じ日本の「魔法使い」でも流派によって違うし……「教わるより盗め」的な論理的 じゃない修行方法の流派だと、様々な「み え る 」を区別してない場合も有る。
そして、厄介なのが3つ目の「み え る 」だ。
気配を脳内で視覚や聴覚に変換する際に、色んな無意識の内の思い込みの影響を受ける。
たとえば、物理的な実体のない存在 が、何の魔法もかかっていない単なる壁の向こうに居たなら「み え 」ても何も変じゃない。
なにせ、感じ取った気配を脳内で視覚情報に変換してるのだから、何の霊的・魔法的な効果もない単なる壁が「み え る 」のを邪魔する筈が無い。
だが「壁の向こうに居るモノが視覚的に見える訳がない」と云う思い込みが邪魔をする。
そして、こんな状況では、同じ「魔法使い」でも「単なる壁の向こうに居る魔法的な何か」が見えないヤツと見えるヤツが居る。
俺は前者だが、「教祖サマ」は後者らしい。
どうも、これは才能の有無みたいなモノで、何かの武術の奥義みてぇに「出来るヤツは二十 前に出来るようになるが、出来ないヤツは何十年修行しても出来ない」らしい。
俺は、まず、大通りに居た何匹もの死霊が何かに突き飛ばされながら消滅していくのが「み え 」た。
俺達が居るのは路地裏で……死霊達を攻撃した何者かの姿は……建物の陰で、俺には「み え 」なかった。
だが「教祖サマ」は……この時点で、死霊達を攻撃していたのが何者か「み え 」ていたらしい。
「おい……『教祖サマ』……何やってる?」
「教祖サマ」は次々と半魚人みてぇな姿の悪霊……あくまでも俺にはそう「み え 」てるだけだが、おそらくは、「教祖サマ」が、その悪霊どもに抱いてるイメージと、そう大きな違いは無いだろう……を呼び出していた。
「く……来る……奴らが……」
「お……おい……落ち着け……。あんたでも敵わねぇヤツなら、下手にそんなモノを呼び出すなよ……。その、とんでもねぇヤツに気付かれるだろ」
「あ……あ……」
俺は自分の手駒の死霊どもを呼び寄せ、隠形結界を張る。
「ふみゅ〜♪」
「ふみゅふみゅ♪」
続いて……脳天気な声が響く……。
「あ……あれは……」
巨大な恐竜のヌイグルミに見えるモノが大通りを走り抜け……。
「正義の味方」どもの研修施設で「教祖サマ」をボコボコにしたあのメスガキの「使い魔」だ。
いや、それだけじゃない。
恐竜モドキの上を密教の「護法童子」らしきモノが飛んでいる。
更に続いて、バイクに乗った「正義の味方」が2人。
1人は……今度はフルヘルメットを被っているが……着ている服は……似たようなのを見た事が有る……。
迷彩模様のパーカー……だが、フードの部分が気が弱そうなティラノサウルスの顔になっている。
もう1人は……あいつだ……。
俺を足抜けさせに「九段」に来た連中の1人。強化装甲服 を着た密教系の「魔法使い」。
「なんで……なんで……なんでなんですか?」
「おい、『教祖サマ』、しっかりしろ……」
「なんで……僕をボコボコにしたのが、ここに揃ってんですか?」
「へっ?」
「なんで……僕の生涯たった2回の敗北……その時の相手が両方とも、ここに居るんですか?」
えっ……「教祖サマ」を自信喪失に追い込んだ奴と……俺を足抜けさせた連中の内の1人が……同一人物だったのかよ?
幸いにも、「教祖サマ」の天敵×2は……あれ?
「ふみゅっ?」
「ふみゅ〜?」
3人目が居た。
誰かは判らない。
おそらく、体格からして若い女。
防護魔法がかかってるらしいデニム地のコート。
紫色のプロテクター付のツナギに、同じ色のフルヘルメット。
そいつが路地の入口に立って、俺達を指差し……。
そいつ背後 には……「正義の味方」の研修所に居たメスガキの恐竜モドキの「使い魔」と……そして、俺を「足抜け」させた強化装甲服 の密教系「魔法使い」が大型ハンマーを持って立っていた。
「ぎゃあああッ‼」
俺が張った隠形結界内に何者か……少なくとも、かなり強い魔力を持ったヤツが上から侵入。
って上?
続いて悲鳴。
韓国 のヤクザの1人のスタンロッドで頭をブン殴られて倒れて……。
おい……何だ? どうなってる? 魔法が使われた気配は何も感じなかったのに、周囲に居る韓国 のヤクザ達の半分ぐらいが気を失なって倒れ……って、倒れてる奴らの体には1人残らず矢が刺さっていた。
あっと言う間にこれをやったのが誰かと言えば……。
「やあ、久し振り」
「うわああああッ‼」
またしても、「教祖サマ」が恐怖の悲鳴を上げた。
ただし、さっきの倍ぐらいの大きさの……。
「『旧支配者』系魔法結社の元・総帥」サマのクセして……まるで、クトゥルフ系の化物に出喰わした一般人みてえな表情 だった。
1つは
2つ目は
3つ目の「
ややこしい事に、「見える」「観える」「視える」その他「みえる」の意味のどの漢字を、どの「
そして、厄介なのが3つ目の「
気配を脳内で視覚や聴覚に変換する際に、色んな無意識の内の思い込みの影響を受ける。
たとえば、物理的な実体のない
なにせ、感じ取った気配を脳内で視覚情報に変換してるのだから、何の霊的・魔法的な効果もない単なる壁が「
だが「壁の向こうに居るモノが視覚的に見える訳がない」と云う思い込みが邪魔をする。
そして、こんな状況では、同じ「魔法使い」でも「単なる壁の向こうに居る魔法的な何か」が見えないヤツと見えるヤツが居る。
俺は前者だが、「教祖サマ」は後者らしい。
どうも、これは才能の有無みたいなモノで、何かの武術の奥義みてぇに「出来るヤツは
俺は、まず、大通りに居た何匹もの死霊が何かに突き飛ばされながら消滅していくのが「
俺達が居るのは路地裏で……死霊達を攻撃した何者かの姿は……建物の陰で、俺には「
だが「教祖サマ」は……この時点で、死霊達を攻撃していたのが何者か「
「おい……『教祖サマ』……何やってる?」
「教祖サマ」は次々と半魚人みてぇな姿の悪霊……あくまでも俺にはそう「
「く……来る……奴らが……」
「お……おい……落ち着け……。あんたでも敵わねぇヤツなら、下手にそんなモノを呼び出すなよ……。その、とんでもねぇヤツに気付かれるだろ」
「あ……あ……」
俺は自分の手駒の死霊どもを呼び寄せ、隠形結界を張る。
「ふみゅ〜♪」
「ふみゅふみゅ♪」
続いて……脳天気な声が響く……。
「あ……あれは……」
巨大な恐竜のヌイグルミに見えるモノが大通りを走り抜け……。
「正義の味方」どもの研修施設で「教祖サマ」をボコボコにしたあのメスガキの「使い魔」だ。
いや、それだけじゃない。
恐竜モドキの上を密教の「護法童子」らしきモノが飛んでいる。
更に続いて、バイクに乗った「正義の味方」が2人。
1人は……今度はフルヘルメットを被っているが……着ている服は……似たようなのを見た事が有る……。
迷彩模様のパーカー……だが、フードの部分が気が弱そうなティラノサウルスの顔になっている。
もう1人は……あいつだ……。
俺を足抜けさせに「九段」に来た連中の1人。
「なんで……なんで……なんでなんですか?」
「おい、『教祖サマ』、しっかりしろ……」
「なんで……僕をボコボコにしたのが、ここに揃ってんですか?」
「へっ?」
「なんで……僕の生涯たった2回の敗北……その時の相手が両方とも、ここに居るんですか?」
えっ……「教祖サマ」を自信喪失に追い込んだ奴と……俺を足抜けさせた連中の内の1人が……同一人物だったのかよ?
幸いにも、「教祖サマ」の天敵×2は……あれ?
「ふみゅっ?」
「ふみゅ〜?」
3人目が居た。
誰かは判らない。
おそらく、体格からして若い女。
防護魔法がかかってるらしいデニム地のコート。
紫色のプロテクター付のツナギに、同じ色のフルヘルメット。
そいつが路地の入口に立って、俺達を指差し……。
そいつ
「ぎゃあああッ‼」
俺が張った隠形結界内に何者か……少なくとも、かなり強い魔力を持ったヤツが上から侵入。
って上?
続いて悲鳴。
おい……何だ? どうなってる? 魔法が使われた気配は何も感じなかったのに、周囲に居る
あっと言う間にこれをやったのが誰かと言えば……。
「やあ、久し振り」
「うわああああッ‼」
またしても、「教祖サマ」が恐怖の悲鳴を上げた。
ただし、さっきの倍ぐらいの大きさの……。
「『旧支配者』系魔法結社の元・総帥」サマのクセして……まるで、クトゥルフ系の化物に出喰わした一般人みてえな