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文字数 1,425文字

 一方、急に暴れ出した、おっさんの方は……もう1人のおっさんの一喝で……あれ?
 さっきは急に暴れ出したと思ったら、今度は急に倒れ……。
「ええええ? あれ? どうなって……えっと……? ち……ちがうッ‼ 私じゃないッ‼」
 確かに変だ。
 「昔は羽振りが良かったが、今は零落(おちぶ)れてる」系のおっさんが使ったのは……でも……。
「待ちなさい」
 また、誰か出て来……おい……何だ、この「気」は……。
 同業だから判る……。こいつは……「魔法使い」……それも……「気」の量だけなら、俺の元の組織の首領さえ上回る……おい、危険なヤツは居ない筈じゃ……いや、こいつはヒーロー側なのか?
「いくら人を助ける為とは言え……『精神操作』を使うのは感心しませんね……」
 おい……何だよ?……俺より一〇以上若そうなのに……この……とんでもない「気」の量は……?
 とんでもない才能の持ち主だったか……とんでもない努力をしてきたか……さもなくば……。
「な……何だと? ほう……君にも判るのかね?」
 そうだ……このおっさんは、確かにさっき「精神操作」を使った。
 おそらくは、いわゆる「超能力者」。特定の「魔法」を修行なしに使える連中の1人だろう……。
 生まれ付きか修行かは別にして原理は同じ「力」「能力」なので、「魔法使い」は「超能力」を検知する事が出来る。例え、自分の専門とは違う系統のモノでも、「超能力」の発動に伴なう「気」「霊力」は感知可能だ。
 でも、おかしい。
 こいつが、今、使った「精神操作」は、微弱なモノ。せいぜい「相手の気分や感情を少し変える」程度で……気を失なわせるのは無理だ。
「その通りだ。君の能力なら……他に手段も有った筈だ」
 急に口を出してきた同業者(魔法使い)の「気」が、どんどん高まる。
 まるで凍り付いたかのように張り詰めた空気……。
「違う……予想外の事だ。私は……悪くない」
 再びおっさんが「精神操作」を発動。しかし……「魔法使い」と「超能力者」では、「力」「能力」の原理は似たようなモノでも、技術に関しては一般的に「魔法使い」の方が上。
 つまり、「精神操作」系の「超能力者」では「魔法使い」を「精神操作」するのは困難だ。まして、この、とんでもない「気」の量の……。
「そ……そうですね……。貴方の言う通りだって気がしてきました。ともかく、この人の手当を……」
 はぁ?
 どうなってる?
 俺には、あのおっさんの「精神操作」は効いてない……事前に気配を察知して自分の心を防御したからだ……のに、俺より遥かに力が上の、こいつには「精神操作」が効いてる?
「あ……ちょっと待って下さい」
 その時、別の男がやって来て……倒れたおっさんの上着からピルケースと正体不明の注射器を取り出し……。
「あ……あれ……」
「はい、甘いモノでも食べて、しばらく安静にしてて下さい」
「は……はい……」
 男が薬と水を飲ませ、注射を打って十数秒で、おっさんは意識を取り戻した。
「あ……あの……何をやったんですか?」
 俺は、念の為、その男に聞いた。
「ああ、即効性の血圧降下剤とブドウ糖の錠剤です」
「はぁ?」
「あの人、時々ああなるんで、もし、その場に居合わせたら、誰かを呼ぶか処置をして下さい」
 いや……待て……どうなって……。そう言や、海に飛び込んだ若造はどうなっ……。
 おい、本当にどうなってる?
 潜水服を着たヤツ2人が……あの若造を……()()()()()()
 ベタ過ぎるにも程が有る……。
 ()()()()()()()()()()()なんて。
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