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文字数 1,014文字

「貴方は小規模な会社または店舗の社長または管理職です。同じ職場の若いアルバイトに性的魅力を感じました。では、このアルバイトを採用して数日後、仕事が終ってから……夕方以降を想定して下さい……2人っきりの食事に誘うのはOKですかNGですか?」
 最初に受けさせられた講義は「職場におけるハラスメント」だった。
 机は円形に配置されて、講師の背後には、プロジェクター用のスクリーンや、講義用のホワイトボードが有るだけで……講師と受講者の間に、なるべく「上下関係」を無くそうと言うのだろう。
 だからと言って、講師に対して下手に反抗的な態度を取ったり……何なら自分の「能力」を使って襲いかかろうものなら……そうだ、ここは「誰が看守で誰が囚人か、看守の側しか知らない刑務所」だ。
 しかも、「正体を隠してる看守」は、おそらく「正義の味方」候補生。
 迂闊な真似をしたら、何が起きるか考えたくも無い。
「OK」
 まず俺。
「問題ないような気がしますが……」
 精神操作能力者のおっさん。
「OKだろ?」
 河童に変身する能力が有る潰れた大手暴力団の元跡継ぎらしき若造。
「OKな気がします……」
 化物(チート)級の同業者(魔法使い)らしいのに……何か色々と様子がおかしい奴。
「えっと……あまり経験が有りませんが……昔の職場では、似たような事は良く有った気がします」
 世にもトホホな「使うと寿命が縮む」能力のおっさん。
「わかった、引っ掛け問題だ。嫁や本命の恋人にバレなければOKだ」
 今度は「クリムゾン・サンシャイン」。
「完全にNG。その状況だと、『若いアルバイト』は自分に好意を抱いてない可能性が高い」
 続いて答えたのは、ここに来た時に乗ってた船には居なかった十代後半ぐらいのメスガキ。
「おい……ちょっと待てよ。でも、相手がOKしたなら、それは……」
 俺がメスガキにそう言った途端。
「はい、今、補講が必要な方に通信アプリ(Meave)で通知を送りました」
 ふと、ここでの講習その他の為に渡された端末の画面を見ると……補講の通知が来ていた。
 そして、午前中の2限目の「今後の社会常識の変化の傾向」の「講義」も終り……。
 次は昼食の時間だ。
 食事は悪くない。
 メニューは豊富。
 味も良く、栄養のバランスも考えられてるようだ。
 ベジタリアン向けや、食事タブーが有るメジャー所の宗教の信者向けのメニューも有る。
 逆に、娑婆に戻った時に、ここの食事が懐しくなりそうだ。
 ふと、食堂の外のベランダを見ると……。
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