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文字数 1,282文字

「ぐ……ぐりゅううううッ‼」
「ふ……ふんがあああッ‼」
 俺達(「クリムゾン・サンシャイン」含む)を護る結界を構成している「亡者」どもが苦痛の叫びを上げる。
 結界の外では……。
 「教祖サマ」の力は圧倒的だ。
 「正義の味方」どもは防戦一方……だが、「隠形」の呪法がかけられている服のお蔭で、「教祖サマ」の力は明後日の方向に……いや待て……。
 いつの間にか、床に何かの呪符が撒き散らされている。
 そうか……「教祖サマ」が呼び出したクトゥルフもどきは、この呪符が放つ「気配」を人間の気配と誤認して攻撃しているらしい。
 完全な消耗戦だ。
 力は圧倒的だが命中率はダメダメな「教祖サマ」。薄々、そんな気はしていたが……いわばズルして「魔力」の底上げをしたせいで、どうやら、知識・技術・経験はイマイチらしい。
 一方で、「正義の味方」どもは……その逆。「力」は圧倒的に下だが……技術や経験は上のようだ。今の所、大したダメージは受けてないが、「教祖サマ」に有効な攻撃が出来る訳じゃないらしい。
 どう云う事だ……考えられるのは……。
「お待たせ〜ッ♪」
 その時、どことなく脳天気な若い女の声。
 おい……あいつは……。
 そうだ。ここに来て最初に受けた講習で一緒だったメスガキ。
 けど……何だ、あの変な格好は……。
 迷彩模様のパーカーとだけ言えばマトモに聞こえるが……フードの部分がとぼけた気の弱そうな感じのティラノサウルスの顔になっている。
 その「ティラノサウルス」の口の中から顔が覗いてるような感じだ。
 頭頂から背中……そして、背中の下のあたりから生えてる「尻尾」には、モヒカンみたいな感じの(たてがみ)が生え……袖口には、ティラノサウルスの爪をイメージしたらしい丸い毛玉(モフモフ)が2つづつ。
 だが……最大の問題は……どこの「魔法使い」が、どんな顔して、こんなフザケた服に防御魔法をかけたか? って事だ。
「ほう……中々の力の持ち主のようだな……。我が神への生贄に相応しい」
「そうそう簡単に行くかな?」
 ん?
 何で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
 自分で張った結界を解けば……このメスガキの「気」を詳しく探れるだろうが……この状況で、そんな真似をすれば命取りだ。
 メスガキは呪文らしきモノを唱える。
 もちろん、日本語じゃない。だが……北京語・広東語・韓国語……どれとも違う……。東南アジア系の言語か……?
 いや待て、何だ……今……日本語らしいモノが……そうだ……たしか……昔の子供向けアニメに出て来た……恐竜……って、おいッ‼
 次の瞬間、結界越しでも、「教祖サマ」のクトゥルフに匹敵するのが判る巨大な気配が出現した。
「ふみゅ〜……」
「ふみゅ〜……」
 もちろん、これも霊体だ。
 この姿は……呼び出した術者の持つイメージと、こちらの持つ何かの「予断」の共同作業の産物だ。
 ともかく、俺には……メスガキが呼び出した2匹の「使い魔」の姿が……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
「行っけぇッ‼『タル坊』『(たけ)坊』‼」
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