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文字数 1,037文字

 夕食の後に「職場におけるハラスメント」の補講を受けたのは……俺と、そして、俺と同じ船に居た5人。
「おい、みんな、話が有る」
 補講が終り、講師が居なくなった後、俺は他の5人に声をかけた。
「何をやる気なんだ?」
 そう聞いたのは「若」。
「やっぱり、気付いてたのか?」
「ああ、俺達に何かを手伝わせるつもりだろ? その為に、俺達が何者で、どんな能力が有るかを探っていた」
「大当りだ。ここから逃げ出す」
「逃げ出せるのか?」
「細かいプランを詰めたい。時間は有るか?」
「逃げ出して……どうなるんですか?」
 そう訊いたのは……世にもトホホな「使うと寿命が縮む」能力の持ち主のおっさん。
「なあ……このまま、ここに居て……今の自分でいられる自信は有るか?」
「ない……奴らは……俺を思想改造しようとしている。駄目だ……このままでは……俺がやってきた事は間違いだと信じ込まされて……ああああ……」
 そう言い出したのは……自称「クリムゾン・サンシャイン」。
「や……やめろ……来るな……」
「どうしたんですか?」
 自称「クリムゾン・サンシャイン」のおかしな様子に気付いた「教祖サマ」だったが……。
「い……居る……あそこに……俺を狙ってる奴が……」
「あああ……見えます……僕にも見える……。ああ……やっと我が神の御姿(みすがた)が……」
「あのさ、何やる気が知らねえけど……この2人……外した方が良くないか?」
 「若」が当然のコメント。
「来るな……違う……お前の子供が死んだのは……俺のせいじゃないッ‼ 恨むなら……『関東難民』なんかと結婚しやがったお前自身を……来るなぁッ‼ ()()ッ‼」
「誰だ? そりゃ……?」
 自称「クリムゾン・サンシャイン」の謎の絶叫に対して、俺は、一番事情を知ってそうな世にもトホホな「使うと寿命が縮む」能力の持ち主のおっさんに訊いた。
「さ……さあ?」
「ひょっとして、初代の『クリムゾン・サンシャイン』か『永遠の夜(エーリッヒ・ナハト)』のどっちかが女で、深雪(みゆき)ってのは、その本名なのか?」
「……い……いや……どっちも男だった筈ですが……」
「お……お許し下さい……。か……必ずや貴方様への信仰を取り戻し……ああ……しばし御猶予を……偉大なるクトゥルフ様ああああッッッ‼」
「おっさん……あんたの能力で、この2人なんとかしてくれ……。この騷ぎを『正義の味方』どもに嗅ぎ付けられる前にな」
 俺は、精神操作能力者のおっさんに、そう言った。
「は……はい……」
「あ……それと、ヤクザの若旦那。ちょっと、ライター貸してくれ」
「はあ?」
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