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文字数 1,067文字

「あの……船酔いするタチなんですが……社会復帰講座への移動は……その……」
『あ、じゃあ、受講場所は韓国で良いですか?』
「はっ?」
『博多港から高速船で約3時間です。今まで住んでおられたNeo Tokyo Site01から博多港まで通常のフェリーで移動した場合の3倍程度ですね。船による移動時間は4つの受講場所の中で最も短かくなります』
「ええっと……飛行機なんかは……」
『飛行機より船の方が適している理由が2つほど。1つは船の方が貸切が簡単』
 くそ、やっぱり、「社会復帰訓練」の受講中だけじゃなくて移動中も「正義の味方」組織の監視付きか。
『もう1つは……何か有った時、船の方が若干ですが生存率が上がります』
「な……何かって……何ですか?」
『例えば、受講メンバーの誰かを殺したがってる人が居た場合とか……』
「そいつだけ殺せば……」
形振(なりふ)り構わず、無関係な人まで巻き込んで殺す方がコストが低くて、足が付きにくいケースなどいくらでも……いえ、そうならないように機密保持には細心の注意を払っていますが……他人様(ひとさま)の命をお預りしている以上は……全てのセキュリティが破られた場合でも可能な限りの安全を確保する必要が有ります』
 しまった……。何で、俺は「正義の味方」どもを「御花畑の甘ちゃん」だと思い込んでいたんだ?
 よくよく考えれば、「悪の組織」とされる者達……旧日本政府支持者にテロ集団にヤクザに半グレに危険な新興宗教・魔法結社に腐敗した警察機構(けいさつ)に在日アメリカ()()()軍……軒並、面白いように奴らに潰されている。
 どう考えても……「正義の味方」の方が「悪の組織」より遥かに修羅場を潜り抜けてきている。
 ひょっとしたら、「正義の味方」と云う普通に考えたらマヌケな通称さえも奴らが「悪の組織」に誤った先入観を抱かせる為に広めたモノなのか?
『もう1つの理由はですね……』
「えっ?」
『我々がやっている「悪の組織からの足抜け」事業を利用して「自分の組織を抜けて、他の組織へ再就職」を試みられる方が居まして……』
 あ……。これも先に気付いとくべきだった……。
『そう云う方に限って、やり口がマヌケかつ傍迷惑なんですよ……。飛行機ごと墜落させて、その隙に逃げようとしたり……』
 俺と似たような事を考えた奴は過去に居た……いや、待て……。
「あの……船を貸し切るって事は、複数の受講者を韓国まで運ぶって事ですよね?」
『ええ』
「他の受講者で、何か剣呑(ヤバ)い真似をやらかしそうな人は……ええっと……その……?」
『御安心下さい。()()()()()()、ウチの人間で鎮圧が可能な人達ばかりです』
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