【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】第3話 ついなちゃん忌わしの祠の封印を(後編の前編)

文字数 6,502文字

鬼っ子ハンターついなちゃん【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】

第3話 ついなちゃん、忌わしの祠の封印を解き、
    妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻(後編の前編)   

   〈登場人物〉
役ついな(一四歳)……本名・如月ついな。方相氏(鬼退治師)。CV:門脇舞以。
前鬼(ぜんき)……ついなちゃんのお供その①(赤いぬいぐるみ)。セリフはピコピコ音。
後鬼(ごき)……ついなちゃんのお供その②(青いぬいぐるみ)。セリフは無し。
五月(一〇歳)……祠の奥の洞窟に封印されていた少女。正体は果たして……? CV:門脇舞以。
ハンザキさん……洞窟に潜む妖怪。正体はオオサンショウウオ。イラスト原案・紅音屋本舗様。

※「N」=ナレーション

▶︎【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第3話(前半)ボイスドラマ
 https://fantia.jp/posts/3506
▶︎解説トークコーナー「門脇舞以と大辺璃紗季のドルルゥッのコーナー! 第3回(前半)」
 https://fantia.jp/posts/3919
 
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ついなN
相馬の古内裏に将門の姫君瀧夜叉、
妖術を以て味方を集むる。
大宅太郎光國、
妖怪を試さんと爰に来り、竟に是を亡ぼす。

歌川国芳『相馬の古内裏』詞書より──

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ついなN
ウチ、方相氏の役ついな!
一四歳の鬼退治師や!
トレードマークは金色に光る四つ目のお面に、
真っ白いツインドリルの髪、通称ドゥルル!

前回、おじーちゃんが秘密にしとった、
忌わしの祠に足を踏み入れたウチ。
祠の奥の洞窟で、真っ白い謎の女の子に会うたんや!
んー、な〜んかどっかで見たことあるよーな気がするんやけど……?
これからウチ、果たしてどうなってまうん!?

ついなN
『鬼っ子ハンターついなちゃん』、「滝夜叉姫と妖魔の内裏編」第3話
ついなちゃん、忌わしの祠の封印を解き、
妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻! 後編!!
 
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【山中・夜】
(SE:ホーホーとフクロウの鳴き声)

【薄暗い洞窟の中・うっすらとヒカリゴケの光・咲き乱れる彼岸花】
(SE:ピチョンピチョンと水滴の音が反響)

ついな
「…な、なんやて……!? おじーちゃんの囚われ人やてぇ…!?

五月(さつき)
「うふふふ──…」

ついな
「……そ、それは、一体どーゆー意味や…!??」

(SE:水滴の音)

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ついなN
祠の奥の小部屋でウチを待っとったのは、
このジメジメした洞窟には恐ろしく不釣り合いな、
一人の真っ白い女の子やった。

不健康なほどの色白で、白くて長いまっすぐな髪。
針金のように細い身体。そして、その子のか細い手足には、
赤錆びて重苦しい鉄製の手枷足枷が繋がれとる。

女の子が閉じ込められとる部屋は、間口の狭い小部屋になっとって、
入り口には座敷牢のような頑丈な格子がはめ込んである。
格子には、十重二十重とお札や鎖で封印がしてあって、
さすがのウチも、これは尋常やないっちゅうことが一目で分かった。

それに……、その囚われの女の子の声は……、
どこかで…どこかで聞き覚えが──…

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(SE:水滴の音)

五月
「ようこそ、方相氏さん……。初めてお目もじつかまつります──。
わら──私は五月。貴女のおじいさまの囚われ人。
私は……貴女に私を解放して欲しいの。この魂の牢獄から……」

ついな
「解放……やて??

五月
「左様ぢゃ──…です」

ついな
「なんやよぉ分からんけど……、
さっきアンタ、おじーちゃんに捕らえられたとかゆーとったな。
それってどういう意味なん?
それに、この物々しい封印──、こらただ事やないで…。
…あっ……、まさかもしかして──!」

五月
(…くっ……気取られたか……!?

ついな
「もしかして……、
あんたも何かの修行サボって、おじーちゃんにお仕置きされとるん!?

(SE:コケッ!)

五月
「いや……そのっ──…」

ついな
「あー、分かる分かるわぁ! おじーちゃん、何でもかんでも、
『方相氏の修行じゃあ〜』とかゆーて、
やったら大げさなトレーニングさせるもんなぁ、
あんなん誰かてサボりたくなるわぁ!」

五月
「えっ……えっ……?」

ついな
「いやいや、皆まで言わんでも分かるでぇ〜♫
あんさんの苦労は手に取るよーに分かる!!
大体うちのおじーちゃんは、
やる事なす事、古臭い上にスパルタなんや!

つい先週も、方相氏養成ギプスとかいう変なもの発明しよって、
それ付けて、鉄下駄履いてうさぎ跳び、寺の石段十往復〜!とか、
ですソースの血の池地獄でクロール25メートル二十往復〜!!とか、
100キロの重しとストロー一本渡されて琵琶湖で潜水三十分〜!!!とか、
無茶苦茶やらされたで!」

五月
「じ、じどー虐待?!

ついな
「この前なんて、♫くぅ〜まにま〜たがりお馬の稽古……と称して、
体長5mの羆(グリズリー)とステゴロタイマン・ガチンコ勝負させられたで!
普通の子やったら死ぬわ!!!」

五月
「大人でも死ぬと思うぞよっ…!?

ついな
「せやろ! ……なのにおじーちゃんときたら、
ウチには葛城山の一言主神(ひとことぬしのかみ)の加護があるから、
ちょっとやそっとの攻撃(物理)は、ほとんど効かん〜ぬかすんや!」

五月
「そーなのか……侮れぬ……」

ついな
「でもせやからゆーたかて、ものには限度っちゅーもんがあるやろ!?

五月
「であろうのう」

ついな
「大人しいれでーのウチもしまいにゃキレてな、
おじーちゃんが昼寝しとる間に方相氏養成ギプスくくり付けて、
簀巻きにして重しと一緒に大阪湾へ──…」

五月
「わーーっ!?!」

ついな
「さすがのおじーちゃんも、腰いわしてたわ」

五月
「タフぢゃな!」

ついな
「まー、そんなこんなで、
おじーちゃんがスパルタなんは、ウチもよー分かっとるねん!
きっとアンタも、猛獣とタイマンとかさせられとったんやろ?
ライオン? トラ?? ワニ???」

五月
「してないから!!」

ついな
「じゃあ、象か!
象と分かり合う(ヤる)時は、まず相手の鼻に鼻ひしぎ逆十字をかけてな……」

五月
「象から離れて!!?」

ついな
「せや、ヒットアンドアウェイ!」

五月
「そーぢゃない!」

ついな
「あ〜、アンタの苦労、ウチには見えるで、
象やライオンと戦った後、みんなの間に友情が芽生えて、
手に手を取ってサバンナの夕日に叫んだんやろ、
おじーちゃんのばっきゃろ〜〜…!」

五月
「おバカはおのれぢゃっっ!!

ついな
「グリズリーのくま太郎、元気しとるかなぁ?」

五月
「えー加減にしなさい!」

ついな
「……って、まぁ、冗談はともかくとして、や。
ウチ、ほんまにアンタの気持ち分かるねん。
ウチの遠い従姉の姉ちゃんも、
いっつもキツイ修行させられとるらしいし、これは役(えんの)一族の宿命やな」

五月
「役一族の……?」

ついな
「せや! こー見えて、ウチはバカやないで!
事情はよぉ知らんけど、アンタは他人やない気がすんねん!」

ついな
「五月はん、昔ウチとどっかで会ったことあらへん?
声も何か聞き覚えあるし……!」

五月
「うふふ……、声……声──…。そうですね、
わら……私と貴女は確かに他人ではありませんね……、くすくす…」

ついな
「やっぱせやろ! おじーちゃんの関係者やったら、
こんなとこに閉じ込められとるんも、納得できるわ!
この前ウチもお仕置きで物置に閉じ込められたし」

五月
「……いやそれと一緒にされても……」

ついな
「物置ごと法力で吹っ飛ばしたけどな!」

五月
「お仕置き増えるよ!?

ついな
「ま、そんな訳や。おじーちゃんが無実の女の子をいじめとるんを、
このウチが見過ごせるはずがない。今、この牢屋も吹っ飛ばしたるな!
こんなこともあろうかと、おじーちゃんお手製のダイナマイトを、
一本くすねておいたんや! いっくで〜っ…!!

五月
「あ、お待ちを……っ!」

(SE:火花の音、盛大な爆発音→瓦礫と煙)

ついな
「げほっ、げほっ……どや?! ──って、あれ?!
傷一つ付いてない……??」

五月
「…この牢獄は、貴女のお爺様によって、
厳重な結界が幾重にも張り巡らされているのです……。
普通のやり方では、封印を解くことはかないませぬ──…」

ついな
「くっ、おじーちゃんも重度の変態さんやなぁ…!
ウチ、どーしたらええ?」

五月
「…実はこの牢獄の封印を解くには、ある『鍵』が必要なのです」

ついな
「鍵? 何や、そんなんあるなら話早いやん♫ どこにあるん?」

五月
「その鍵は……この洞窟のさらに奥にある小さな祠に安置されています」

ついな
「なるほど、よっしゃ、ならウチがそれ取って来たる!」

五月
「あ、でも……」

ついな
「でも何や?」

五月
「実はその祠は……恐ろしい妖怪によって護られているのです」

ついな
「妖怪やて!?

五月
「はい……。その妖怪の名は『ハンザキ』。
耳まで裂けた口を持つ巨大で恐しい怪物です」

ついな
「ふふ、まっかしとき!! 妖怪退治はうちの専売特許やで♫
どんな恐しい怪物も、ウチにかかれば赤鬼の首を捻るよーなもんや!」

五月
「あな頼もしや……」

ついな
「じゃ、さくっとその妖怪退治して、鍵取ってくるから、
ちょっとばかり待っとってな!!

五月
「うふふ…、頼りにしてましてよ……(くすくすくす──…)」

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(SE:水滴の音)

ついなN
こうしてウチは、謎の少女五月を助けるため、
封印の鍵を護るという妖怪「ハンザキ」を倒すことになったんや。
気合いを入れ直し、ウチは洞窟の更に奥へと進んでいった。

(SE:水滴音。ばしゃばしゃと地下水を掻き分け洞窟を進む音)
 
ついなN
奥に進むにつれて洞窟は、だんだんと道幅が広く、
天井が高くなっていき、それと反比例するように足元はぬかるみ、
ひざ辺りまで地下水が溜まってきた。

ついな
「うう、気色わるぅ……」

(SE:ばしゃばしゃと洞窟を進む音)

ついなN
そして、洞窟の最深部の大広間に、その祠はあった。
大広間はちょっとした地底湖のようにになっていて、
中央に小さな小島がある。その小島に、
お地蔵さん位のサイズの古ぼけた祠が鎮座ましましておったんや。

ついな
「あれやな……!」

(SE:ざぶざぶ)

ついなN
ウチはざぶざぶと地底湖に入っていった。
水は太ももくらいまでの深さ。これならいけそうや。
そして小島に上陸し、祠に手をかけようとしたその時やった……。

(SE:べちゃっ…)

ついな
「──な、何や、これ……!?
祠が……、めっちゃヌメヌメしとる──…??」

ついなN
その祠は、見るからに気持ち悪い粘着質なねばねばに覆われいて、
触るとべったりと糸を引いた。な、何やこれ、変な臭いするぅ……、
………と、その時やった──…!

ついな
「ひゃんっ!?!///」

(SE:水音。ざばざばー)

ついなN
不意にウチのお尻を、何やらモゾモゾしたものが撫で回していったんや!

ついな
「な、何者や?!

ついなN
振り返るとそこには誰もおらんかった。
……いや、違う、何かおる!

(SE:ざばざばーざばざばー)

ついなN
この小島の周りを、まるで獲物を狙うサメみたいに、
巨大な何かが水面下に姿を隠して、ぐるぐるぐるぐると回っとる…!

ついな
「オノレが妖怪ハンザキやな?!
出て来い……、ウチが相手したるで!!

(SE:ざばざばーざばざばー)

ついな
「来ないなら、こっちから行ったる……!」

(SE:しゅるしゅるしゅるっ! ひしっ!)

【水中から細長い触手のような物が飛び出て、ついなちゃんの足首を掴む】

ついな
「な、何や………っ!?! うわっ……!!!」

(SE:ずるずるズル、ざっぱん!→ぶくぶくぶくぶく……)

【水中に引きずり込まれるついなちゃん。しばらくの間の後…】

(SE:ざぱーーー!!

【巨大なオオサンショウウオの妖怪が姿を現す。
 ついなちゃんは妖怪の舌に足首を絡め取られて、逆さ吊りに!】

ついな
「……ぷはーっ!!
ぬぬぬっ! こらー、放せやぁ~!!」

ついなN
水の中から突如姿を現したのは、巨大で黒々ぬめぬめした、
身の丈10尺を超えるお化けサンショウウオやった!
ウチは妖怪の舌に足首を絡め取られて、逆さ吊りにされてもーた!

ついな
「あほー!! えっち、すけべ、カエルの幼虫! このヘンタイ妖怪~!!!」

(SE:ぐおお~!とハンザキさんの唸るような声)

(SE:びりびりびり!と衣を引き裂く音)

ついな
「わっ、やめーや、ちょっ……、……うにゃんっ!?
にゅ、にゅっ、にゅるにゅるするぅ~~っっ……⁇」

(SE:どろどろにゅるにゅるめちょめちょ……)

ついなN
矛も盾も、方相氏のお面も持たず、キャミとぱんつ一枚のウチ、
巨大な妖怪に逆さ吊りにされて、いきなり絶対絶命の大ピンチ……?!
……ちょ、ちょっと待ってぇな、
ウチ、触手プレイとかの趣味は無いんやでぇ~~っ?!

(SE:ざっぶーーーんっ!!! ぶくぶくぶくぶく………)

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ついなN
……と、前半はここまでや!
サンショウウオ妖怪ハンザキの伸びる舌に絡め取られ、
どろりんした謎の溶解液でにゅるにゅるのウチ。
な、何かキモくて全身から力が抜けてくんやけど………っ!?
これからウチがどーなっちゃうんか、後半でぜひ確認してみてな!

(SE:水滴の音。ぴちょんぴちょんぴちょん………)

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ついなN 『鬼っ子ハンターついなちゃん』!
「滝夜叉姫と妖魔の内裏(だいり)編」!

【CM枠】

ついなN
来る二〇一六年一〇月三〇日、ハロウィン前日に、
ウチが主宰する妖怪イベント『妖怪卸河岸7』が、
東京・浅草橋は、東京文具共和会館で開催されるで〜!
妖怪系創作なら一次創作・二次創作、どちらでも参加OK。

漫画や小説、評論の同人誌や、音楽作品、グッズ、
手作りアクセサリでも一点ものアート作品でも何でもあり、
参加ジャンルは不問や!

妖怪系オンリー展示即売会『妖怪卸河岸』、ぜひ遊びに来たってな!!
ただいま参加サークルさま絶賛募集中♫
また一般来場者の方にはウチの特別グッズをプレゼントしちゃうで!
詳しくは『妖怪卸河岸』で検索、検索ゥッ♥


それじゃー、後半もぜったい聞いてな♡

(前半終了)

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※CMパートの内容は、ボイスドラマ公開当時のものです。
※この脚本を用いた、門脇舞以さんらプロの声優の方々によるボイスドラマも配信しております。
 ぜひご視聴なさってみてください! https://fantia.jp/fanclubs/326

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登場人物紹介

ついなちゃん 

役ついなこと、ついなちゃん(本名:如月ついな)は、現代に生きる鬼退治師「方相氏」(ほうそうし)の末裔の女の子。

「方相氏」とは、古代節分の儀式「追儺式」(ついなしき)に登場する、鬼を退治する鬼神。ついなちゃんは方相氏の証である黄金四つ目のお面を被り、矛と盾を手に、お供の前鬼・後鬼を引き連れて、日夜わるい妖怪退治に奔走しています☆

どんなに挫けそうになっても負けじと頑張る、14歳の女の子ついなちゃんをぜひ応援してあげてね!

前鬼(ぜんき)・後鬼(ごき)

今から1300年前、修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)に仕えたという夫婦の鬼赤い方が前鬼で旦那青い方が後鬼で奥さん)。

ついなちゃんのお伴の鬼で、初代前鬼・後鬼の魂がぬいぐるみに取り憑いたもの。

日々ついなちゃんにセクハラをしつつ、何かとサポートしています。

修験道大本山・吉祥草寺公認の前鬼・後鬼です♫

ディクソン

ついなちゃんが被っているお面(方相面)。黄金四つ目で正当なる方相氏の証。

昔は、ついなちゃんのおじーちゃん(先代の方相氏)が被っていました。

ついなちゃんの守り神的な存在で、ついなちゃんが方相氏の技を使う際、いつも霊力的に補佐しています。無口だけど、気のいいナイスガイ!

滝夜叉姫

千年の眠りから甦った鬼姫。かつて朝廷に反逆し討伐された平将門の第三女であり、自らも名にし負う大怨霊。七十年ほど前、将門復活に合わせ、自らも復活しようとしたところを、ついなちゃんの祖父・如月宝庵により京都・丑寅の某所に封印されましたが、現代に至り、ついなちゃんによって解放されてしまいます。

ついなちゃんの霊力の大半と「声」を奪い、「妖魔の内裏」建造を目論む、『滝夜叉姫と妖魔の内裏』編の強力な大ボス……なのですが、実はファザコンおバカ幼女でもあったり。

ハンザキ

滝夜叉姫配下オオサンショウウオの妖怪。ぬめぬめした巨大な体躯と伸びる舌が武器。

身体を半分に裂かれても生きているという強靭な生命力が名前の由来。

意外と苦労人という噂も……!?

イラスト&キャラクター原案・紅音屋本舗様。

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