【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】第4話 方相氏はつらいよの巻(前編)

文字数 5,114文字

鬼っ子ハンターついなちゃん【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】

第4話 方相氏はつらいよの巻(前編)

   〈登場人物〉
役ついな(一四歳)……本名・如月ついな。方相氏(鬼退治師)。CV:門脇舞以。
前鬼(ぜんき)……ついなちゃんのお供その①(赤いぬいぐるみ)。セリフはピコピコ音。
後鬼(ごき)……ついなちゃんのお供その②(青いぬいぐるみ)。セリフは無し。
稲生 平太(九歳)……ゲストキャラ。広島在住の内気な少年。いじめられっ子。CV:門脇舞以。
近所のいじめっ子(十二歳)……いじめっ子その①。
ガヤ(いじめっ子)……いじめっ子その②。CV:相葉ゆきこ様(特別ゲスト)。

※「N」=ナレーション

▶︎【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第4話(前半)ボイスドラマ
 https://fantia.jp/posts/4053
▶︎解説トークコーナー「門脇舞以と大辺璃紗季のドルルゥッのコーナー! 第4回(前半)」
 https://fantia.jp/posts/4175
 
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ついなN
鬼といふは方相氏の事なり。

一条兼良『公事根源』より──

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ついなN
ウチ、方相氏の役ついな!
一四歳の鬼退治師や!
トレードマークは金色に光る四つ目のお面に、
真っ白いツインドリルの髪、通称ドゥルル!

前回、千年の眠りから目覚めた滝夜叉姫によって、
霊力の大半を奪われてしまったウチ!
滝夜叉姫を再度封印するため、姫の跡を追って関東へ向かうことに…。
果たして東の国では、どんな冒険が待っているんやろか?!

ついなN
『鬼っ子ハンターついなちゃん』、「滝夜叉姫と妖魔の内裏編」第4話
方相氏はつらいよの巻!
 
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【嵐の夜。地方都市の郊外。人気(ひとけ)のない和風の古屋敷】

(SE:ピカッ! ゴロゴロゴロ……)

ついな
「いや〜、少年! ほんま助ったわ、おおきにな♫
あのままやったらウチ、ケーサツに捕まるとこやったで!」

平太N
──と金色四目の仮面を被った、その素っ頓狂な女の子は言いました。
場所は広島県M市の外れにある古屋敷。とある嵐の夜のことです──。

ついな
「キミ…、名前は平太……やったっけ? 匿ってくれて、ありがとな!」

平太
「いやその……僕が匿ったわけじゃなくて、ついなちゃんが勝手に……」

ついな
「細かいことはえーねん!
この役ついな、一宿一飯の恩義は必ず返す義理堅〜い女やでぇ。
ほれ、この豆あげるから元気出しぃ!
悩み事があるんやったけ? このついなお姉さんに何でも相談しぃや」

平太
「えっ、あ、う、うん──……」

(SE:ゴロゴロゴロ……。神鳴りの音)

ついな
「それにしてもボロいお屋敷やなぁ、肝試しには持ってこいや!
こら確かに、妖怪の一匹や二匹は潜んでいそうやし。
でも安心せい、現代に生きる鬼退治師『方相氏』のウチにかかれば、
どんなバケモノでも怖ないで!!

平太
「本当……?」

ついな
「ふふふ、このウチにまっかせとき!」

平太
「実はここ……、近所でも評判の幽霊屋敷なんだ……」

(SE:ごとっ! ついなちゃんが物を落とす音)

ついな
「……えっ、ユ、ユーレー!?

平太
「うん。迷い込んだ人が何人も消えていなくなってるって……」

ついな
「……ユ、ユ、ユーレーかぁ〜、そうかぁ〜、
すぅ〜っと現れてすぅ〜っと消える、あのユーレーかぁ……。
あは、あは、あははははは……!」

平太
「どうしたの……??」

ついな
「……いやっ、その……実はウチ、鬼や妖怪には強くても、
人間の幽霊はちび〜ぃっとばかし苦手やねんっ……!」

平太
「え、鬼退治師なのに、幽霊……怖いの……?」

ついな
「あ、あっあっ、あほな事ゆーたらあかん!
こ、この方相氏のついなちゃん様とあろう者が、
怖いものなんてある訳ないやろ!!?
た、ただちょぉっとばかり、ユーレーは、に、苦手かな〜なんて……」

平太
「怖いんだ……?」

ついな
「う、うん……///」

平太
「…はぁ……──」  【※無言で深いため息】

ついな
「てひひ……。あっあっ、でも安心せーや!
鬼やったら一山百円で出てきても、このウチが、
片手でぱぱーっと、片っ端から鬼やらいしたるで──……!」(FO)

(SE:ゴロゴロゴロ……)
 
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平太N
──申し遅れました。僕の名前は稲生(いのう) 平太。小学校三年生・男子です。
僕がこんな嵐の夜に、何でこの胡散臭い女の子と一緒にいるのかというと、
それはほんの偶然の出会いがきっかけだった訳で……。

ついな
「いやー、ユーレーも怖いけど、ケーサツの連中もなかなか厄介でな!
行く先々でビル破壊するからって、ウチを全国指名手配しおってな!
でもウチは、人に頼まれて妖怪退治して廻っとるだけなんやで!?
相手がデカブツやったら、ビルの一つや二つ、吹っ飛ぶ事もあるやん。
なあ、そう思わん──?」

平太N
……大ボラばかり吹いてるついなちゃんは無視して、話を進めます。
僕とついなちゃんが出会ったのはつい昨日の夕方のこと。
学校帰りの僕たちの前に、お腹を空かせたついなちゃんが、
風のようにふらっと現れたのが、全ての始まりでした──。

(SE:ザーーーーッ……。雨の音)
 
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(SE:ウ〜〜ウ〜〜。パトカーの音)

ついな
「ふ〜、なんとか撒いたか…?
なんでウチがケーサツに追われなアカンねん……」 【※アドリブで愚痴】

前鬼
「ピコピコ!」

ついな
「ま、何はともあれ、滝夜叉姫の跡を追って東へ東へ、
こうしてはるばる神奈川県までやって来たで!」

前鬼
「ピコ!」

ついな
「金太郎を祀った金時神社にお参りして、江ノ島の銭洗弁天にも行って。
銭洗弁天は海に真っ赤な鳥居が浮いてて、めっちゃ綺麗やったな!
…何でか、江ノ島やなくて厳島って書いてあったのが気になるけど!
あと金時神社に、金太郎やなくて桃太郎の像が飾ってあって、
吉備津神社って書いてあったのは何でやろ……!?

前鬼
「ピコピコピコ……」 【※ツッコミ】

ついな
「ま、とりあえずおじーちゃんにお土産の紅葉まんじゅう買うてくで!」

いじめっ子
「やーい、やーい!」

ガヤ
「やーい、やーい!」

ついな
「……おっ、何や…?」

平太
「妖怪は本当にいるったら、いるんだ…!
うちのご先祖さまが見たことがあるって…お父さんが言ってたもん…!」

ついな
「何や、何やぁ? よぉ分からんけど子供が一人虐められとるようやな」

いじめっ子
「平太の嘘つき〜!!」 

ガヤ
「嘘つき〜!!」 

平太
「嘘なんかじゃないやい…! 確かにお父さんが言ってたんだ。
お父さんは僕が小さい頃死んじゃったけど絶対嘘なんかつくもんか!!

ついな
「ほほぉ、何やら聞き捨てならん話やなあ」

平太
「お父さんはあの街の外れのお屋敷にお化けが出るって言ったんだ…!
だから妖怪は絶対いるんだ、僕もお父さんも嘘なんかつかない…」

ついな
「面白そうな話やな、はいはーい、邪魔するで〜」

平太
「え、お、おねーちゃん誰!?

ついな
「ウチは通りすがりの方相氏ついなちゃんや」

平太
「……方相氏!?

ついな
「せやせや、妖怪退治の専門家やで。ここはその専門家の顔に免じて、
一つその屋敷で『肝試し』してくるっちゅうことでどうや?」

平太
「肝試し…?」

ついな
「せや! 要はお化けがおるかどうか、ハッキリさせたらええんやろ?
明日ウチとその子が、そのお化け屋敷とやらに行って、
妖怪のいる証拠を取ってくるから、それでどやろ?」

平太
「えっ、えっ……」

ついな
「『職業柄』、こういう話は捨て置けんでなぁ。
もし証拠を持って帰ってこれたら、そしたら喧嘩両成敗で、
この話はそこでしまいや! ……もし持って帰ってこれなかったら、
そしたら、ウチもその子と一緒に謝ったるから!!

平太
「えっ…えっ、えっ…!?

いじめっ子
「何だこのブス! ひっこめ〜!」

ガヤ
「ひっこめ〜!」

ついな
「……ブス…?? よぉ聞こえへんかったわ……、
一回だけなら広い心で許したるから、この話、納得せぇや!」

いじめっ子
「うっさい、ブス! ペチャパイ!」

ついな
「…ぺ、ペチャパイやとぉ……!!?  (SE:ピキッ……)
子どもやからって言うてはならん事をっ……!
…方相閃・斬(ざーん)!!!」

(SE:ごおおっ、どかーん!!! キラーン。星になった音)

ついな
「たーまーやー」

平太
「あわわわわ……」

ついな
「ふんっ、セクハラ小僧どもには良い薬や!」

平太
「な、何てことするんだよ、明日…仕返しされる……!」

ついな
「大丈夫や、明日までに『証拠品』取ってくればええんやから!」

平太
「でも……」

ついな
「最初にあいつらに言い返したんは、少年、キミ自身やろ?」

平太
「え、う、うん……」

ついな
「お父はんの言うこと信じとるんやったら、嘘はつかれへんもんな!
勇気出して、あいつら見返してやったらええんや♫」

平太
「そ、そうだけど……」

(SE:ウ〜〜ウ〜〜。パトカーの音)

ついな
「はっ、ヤバイっ!! 今の騒ぎでケーサツに嗅ぎつけられたようや…!
さっきの話のお化け屋敷ってどこや? 教えてな!
今晩、ウチ、そこで待っとるからっ!!!」

平太
「う、うん……」

(SE:ウ〜〜ウ〜〜。パトカーの音)

ついな
「約束やで〜〜!」
 
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(SE:ザーーーーッ……。雨の音)

平太N
…こうして僕とついなちゃんは出会って、この町外れのお化け屋敷で、
肝試ししなくちゃいけなくなった訳で──……。でも……それが、
まさかあんな大変なことになるなんて、思ってもいなかった訳で──。
 
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(SE:ピッッシャーン! ゴロゴロゴロゴロ……!)

(SE:ぶもおおぉ〜〜〜〜〜! 謎の妖怪の吠える声)

ついな
「平太……、ウチはもうダメや……。後はキミに任せたで……!
さっき渡した豆を……、豆をコイツに……投げつけるんや……」

平太
「……つ、ついなちゃんっ、ついなちゃんっっ──……!」

ついな
「頑張ってな……、平太ならきっとできるで……」

(SE:ぶもおおおぉ〜〜〜〜〜!)

平太
「ついなちゃーーんっっ──……!!

(SE:ピッッシャーン! ゴロゴロゴロゴロ……!!


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【アイキャッチ】

ついなN
『鬼っ子ハンターついなちゃん』! 「滝夜叉姫と妖魔の内裏編」!

【CM枠】

ついなN
ウチの親戚の小角奈(おづな)ちゃんが看板娘してるお店、酪農カフェ酪(らく)は、
役行者(えんのぎょうじゃ)のお膝元、葛城山の麓にある古民家カフェ。
酪農の村の山際にあるんや。

牛乳を使うた忍海(おしみ)酪農つけ麺や、炒(いた)カレーっていう、
ちょっと変わった名前の名物メニューがあるんやで!!

中でも一番凄いのは「葛城最強プリン」!!
メッチャ硬くてメッチャ美味しい最強のプリンなんや!!!!
みんなも近くに行ったら、酪農カフェ酪に寄ったってな♪


それじゃー、後半もぜったい聞いてな♡

(前半終了)

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※CMパートの内容は、ボイスドラマ公開当時のものです。
※この脚本を用いた、門脇舞以さんらプロの声優の方々によるボイスドラマも配信しております。
 ぜひご視聴なさってみてください! https://fantia.jp/fanclubs/326
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登場人物紹介

ついなちゃん 

役ついなこと、ついなちゃん(本名:如月ついな)は、現代に生きる鬼退治師「方相氏」(ほうそうし)の末裔の女の子。

「方相氏」とは、古代節分の儀式「追儺式」(ついなしき)に登場する、鬼を退治する鬼神。ついなちゃんは方相氏の証である黄金四つ目のお面を被り、矛と盾を手に、お供の前鬼・後鬼を引き連れて、日夜わるい妖怪退治に奔走しています☆

どんなに挫けそうになっても負けじと頑張る、14歳の女の子ついなちゃんをぜひ応援してあげてね!

前鬼(ぜんき)・後鬼(ごき)

今から1300年前、修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)に仕えたという夫婦の鬼赤い方が前鬼で旦那青い方が後鬼で奥さん)。

ついなちゃんのお伴の鬼で、初代前鬼・後鬼の魂がぬいぐるみに取り憑いたもの。

日々ついなちゃんにセクハラをしつつ、何かとサポートしています。

修験道大本山・吉祥草寺公認の前鬼・後鬼です♫

ディクソン

ついなちゃんが被っているお面(方相面)。黄金四つ目で正当なる方相氏の証。

昔は、ついなちゃんのおじーちゃん(先代の方相氏)が被っていました。

ついなちゃんの守り神的な存在で、ついなちゃんが方相氏の技を使う際、いつも霊力的に補佐しています。無口だけど、気のいいナイスガイ!

滝夜叉姫

千年の眠りから甦った鬼姫。かつて朝廷に反逆し討伐された平将門の第三女であり、自らも名にし負う大怨霊。七十年ほど前、将門復活に合わせ、自らも復活しようとしたところを、ついなちゃんの祖父・如月宝庵により京都・丑寅の某所に封印されましたが、現代に至り、ついなちゃんによって解放されてしまいます。

ついなちゃんの霊力の大半と「声」を奪い、「妖魔の内裏」建造を目論む、『滝夜叉姫と妖魔の内裏』編の強力な大ボス……なのですが、実はファザコンおバカ幼女でもあったり。

ハンザキ

滝夜叉姫配下オオサンショウウオの妖怪。ぬめぬめした巨大な体躯と伸びる舌が武器。

身体を半分に裂かれても生きているという強靭な生命力が名前の由来。

意外と苦労人という噂も……!?

イラスト&キャラクター原案・紅音屋本舗様。

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