【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】第２話 ついなちゃん忌わしの祠の封印を（前編の前編）
文字数 5,293文字
鬼っ子ハンターついなちゃん【滝夜叉姫と妖魔の内裏編】
第２話 ついなちゃん、忌わしの祠の封印を解き、
妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻（前編の前編）
〈登場人物〉
役ついな（一四歳）……本名・如月ついな。方相氏（鬼退治師）。CV：門脇舞以。
前鬼(ぜんき)……ついなちゃんのお供その①（赤いぬいぐるみ）。セリフはピコピコ音。
後鬼(ごき)……ついなちゃんのお供その②（青いぬいぐるみ）。セリフは無し。
五月（一〇歳）……祠の奥の洞窟に封印されていた少女。正体は果たして……？ CV：門脇舞以。
※「N」＝ナレーション
▶︎【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第2話（前半）ボイスドラマ
https://fantia.jp/posts/2584
▶︎解説トークコーナー「門脇舞以と大辺璃紗季のﾄﾞﾙﾙｩｯのコーナー！ 第2回（前半）」
https://fantia.jp/posts/2760
──────────────────────────────────────
ついなＮ
方相氏は熊皮を蒙り、黄金四目、玄衣朱裳（げんいしゅしょう）し、
戈を執り盾を揚げ、百隷(ひゃくれい)を帥ゐて時に儺(な)し、
以て室を索めて疫を驅るを掌る。
『周禮（しゅらい）』夏官・司馬「方相氏」の条より──
──────────────────────────────────────
ついなＮ
ウチ、方相氏の役ついな！
一四歳の鬼退治師や！
トレードマークは金色に光る四つ目のお面に、
真っ白いツインドリルの髪、通称ドゥルル！
悪い鬼や魑魅魍魎、妖怪どもの魔の手から、
世界の平和と子供たちを守るため、
今日も妖怪退治のバトロール、頑張っとるんやで!!
ついなＮ
『鬼っ子ハンターついなちゃん』！
「滝夜叉姫と妖魔の内裏(だいり)編」第２話
ついなちゃん、忌(いま)わしの祠の封印を解き、
妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻！ 前編!!
──────────────────────────────────────
【薄暗い洞窟の中・うっすらとヒカリゴケの光】
（ＳＥ：ピチョンピチョンと水滴の音が反響）
五月（さつき）
「くすくすくす…」
五月
「今宵、いよいよ時は満ちた……
嬉しやの…喜ばしやの……
これやこれ、何とて祭ろうや、
飛んで火に入る、方相氏ぢゃ──…」
五月
「くすくすくすくすくす…」
（ＳＥ：水滴の音ＦＯ）
──────────────────────────────────────
【山中（夜）】
（ＳＥ：樹々を掻き分け山中を進む音。ホーホーとフクロウの鳴き声）
ついな
「へーっ……へぇーっ…、へっくちゅっ！！！（ＳＥ：ズルズル）
誰か噂しとるんかな〜、それか、ぱんついっちょやからかな〜？
着の身着のまま、勢いでこんな山ん中まで来たからなぁ」
前鬼
「ピコピコー！」
ついな
「ん、何や前鬼？ ほんま、ええのんか、ご主人……やて？
ここは何人たりとも足を踏み入れてはならん〝入らずの森〟、
誰もみだりに侵してはならぬ〝忌わしの祠〟があって、
そんな禁断の地に足を踏み入れてるなんて、
おじーちゃんにバレたら大目玉やって…？」
前鬼
「ピコ！」
ついな
「えーねんえーねん！
どーせそんなん、おじーちゃんが口から出まかせ言うとるだけや！
ウチ知っとるんやで、かく言うおじーちゃん自身が、
ウチに内緒で、ここんところ毎晩、
その忌わしの祠に通い詰めてるんことを…!!」
前鬼
「ピコピコ〜……」
ついな
「もう連続二十日以上になるやろか、
まったく……おじーちゃんもお盛んやで…！
でも、今日という今日はウチが先回りして、
おじーちゃんがその祠で、ナニしとるんか確かめたるんや。
そんで弱み握って、おじーちゃんをギャフンと言わしたるねん！」
──────────────────────────────────────
（ＳＥ：ホーホー、ホーホー、ホーホー……。フクロウの鳴き声）
ついなＮ
──ここは、京都北部にある古刹・鞍馬寺──…
…の割とすぐ近くにあるボロっちい古寺〝如月庵(きさらぎあん)〟──……
…の裏手にある深い深い山の中。
時刻は丑三つ時の少し前、……ウチはその日、
常日頃、修行サボってることをおじーちゃんにこってり叱られて、
めっちゃクサクサしとったんや。
……ウチのおじーちゃんは如月庵の住職で、
名前は「如月 宝庵（きさらぎ ほうあん）」っちゅー生臭坊主！
怪しげな法術と変な発明が得意なマッドサイエンティストで、
常識人のウチはいっつもエライ迷惑を被っとるねん。
坊主のくせに酒は飲むは博打はするは、女好きだわ、
おまけに説教好きで、さらにケチときとる。
ウチの小遣いなんて、今どき毎月三百円や。
身内ながら、ロクなもんやないで、ほんま！
……だいたいおじーちゃんはいっつもいっつも、勉強せーだの、
早寝早起きせーだの、歯ぁ磨いたかー！、お風呂入れよー!!
また来週〜!!!だの、小言がいちいちうるさいねん！
せやからその時のウチは、
忌わしの祠でおじーちゃんの弱点見つけて、
見返してやろうって考えとったんや。
いま思えば……、それがすべての過ちの始まりやったんやけど……!!
（ＳＥ：ホーホー。フクロウの鳴き声。ナレーション終わり）
──────────────────────────────────────
前鬼
「ピコピコ、ピコピコ」
ついな
「何や前鬼、いつになく弱気やないか？
後鬼もなんかずっと黙りこくっとるし。
心なしか言葉もピコピコ言うとるように聞こえるでぇ？」
前鬼
「ピコピコピコピコ」
ついな
「……ん？ 言い伝えによると、その祠には、
それはそれはおっとろしい、
一〇八匹の魔物が封じられとるちゅう話やて？
せやから勝手に近づいたらアカン？
何や、そんなんただの脅し文句やで！
その証拠に……、ホレ、よぉ注意してみぃ」
ついな
「どや？ 周りに妖気や霊力の類を全く感じんやろ？
どれだけ感覚を研ぎ澄ましてみても、ここら一帯、
なぁ〜〜んも感じられへん。鬼の子一匹おらへんで！
それにな……妖怪や魔物の百匹や二百匹、
この役ついな様にかかればどぉってことない。
赤鬼の首をひねるようなもんやで♫
泥舟に乗った気持ちで安心せいや！」
前鬼
「ピコピコ!! 」
ついな
「赤子？ 大船？ まあ、何でもええわ。
…………え？ 頼りない？
どうにも心配だ、今からでも遅くないから如月庵に帰ろう？
ご主人一人じゃ心許ない……やてぇ⁉︎」
ついな
「何言うとんねん、裏切り者！ おのれらウチの式神やろ !!?
ええか、おじーちゃんには絶対黙っとき！
ウチは一人前の方相氏やで！？
仮に何かあっても大丈夫、自慢の法力パワーで吹っ飛ばしたる。
ウチはもう、子供扱いはウンザリなんや!!
……それにな、この先の祠にも、
どーせ大した秘密なんかある訳ないで！
おじーちゃんはいっつも、
『ええか、ついな、あの祠には何があっても、
絶対に近付いてはならんぞ!!』なぁ〜んて、
もっともらしいこと言うとるけど、
どーせおじーちゃん、
『はんにゃとう』だの、『すなっくのりょーしゅーしょ』だの、
『びにぼん』だのを隠しとるに決まっとんねん！」
ついな
「……ほら、この前もおじーちゃんが、仏壇の後ろに、
裸の女の人がいっぱい載っとる雑誌隠しとったの見つけたやろ？
おじーちゃんは『ば、ば、バカもん！ そ、そっ、それは、のっ、
呪われた雑誌で、お祓いするためにそこに安置しとったのぢゃ!!!』
とか言うとったけど、絶対あれ嘘やで!!
だって、めちゃめちゃ冷や汗かいとったし！」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「……お、とか何とか言うとるうちに、
噂の忌わしの祠が見えてきたでぇ〜！
祠じゅう、彼岸花がいっぱい咲いて、真っ赤になっとるな♫
まるでウチの勝利を祝福してくれとるようや…!!」
ついな
「ふっふっふっふ…、見とれよ、おじーちゃんっ！
弱み握ったらお小遣いの賃上げ要求したるでぇ……。
月三百円から月四百円…、いや一気に月五百円や！
うわ、すごい贅沢………!!
さぁ行くで、前鬼・後鬼!! 億万長者はもう目の前や…!!!」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「ん？ 扉に封印のお札が貼ってあるって？？
何や、この古びたお札……？
悪厄…邪氣……なんとか……封…………、
読めへんな、ずいぶん古いものっぽいけど……。
でもこの字は見覚えあるで、
これは間違いなくおじーちゃんの字や！
せやったら……、えいやっと♫」 （ＳＥ：ビリビリ！）
前鬼
「ピコピコピコピコ！ 」
ついな
「かまへん、かまへん！ はい、お邪魔するで〜〜〜♫」
ギギィ〜〜（ＳＥ：祠の扉を開ける音）
前鬼
「ピコピコ、ピッコピコ！」
ついな
「ピコピコ、ピコピコうるさいわ！ 言葉しゃべったらどや！
……ちゅーか……、ほれ見てみい？
やっぱり魔物なんか一匹も出て来ぃへんやん」
ガサガサ、ガタガタ（ＳＥ：祠を捜索する音）
ついな
「どー見ても、ただの小汚ない祠やし、
御神体も見当たらへん。特に目ぼしい物も何もないな。
霊気も魔力も感じんし、何か拍子抜けや………おっ？」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「何やこの賽銭箱の下……、階段になってて通り抜けできるみたいやな。
どうやら地下に繋がっとるようやで。
ほれ、真新しい人の足跡もある。
なるほど、おじーちゃんはここに毎晩通っとったんやな……。
ちょっと面白うなってきたやん！ 」
前鬼
「ピコピコピコピコ〜〜！」
ついな
「あーもう、前鬼うっさいわっ！！ 少し黙っときっ!!!
さぁ、ダンジョン探検と洒落込むでぇ〜〜〜！！！！
ギッギッギィ〜〜、バタン！（ＳＥ：祠の扉が閉まる音）
──────────────────────────────────────
（ＳＥ：……ホーホーとフクロウの鳴き声）
ついなＮ
──思えばこの時……、ウチは全く気がついていなかったんや。
なんで、普段うるさいくらいに饒舌な前鬼が、
ピコピコとしか喋られへんかったのか。
なんで後鬼が、一言も言葉を発せられなかったのか……。
そして、お札で扉が封印されてるはずの祠の中に、
どうして真新しい人の足跡があったのか、その意味に──……。
ついなＮ
その後……、前鬼と後鬼は一言も言葉を発さなくなった。
まるで、只のぬいぐるみのように。
──そしてウチは、
その時の自分の身体の変化にまったく気がついておらんかったんや。
自慢のツインドリルの髪の毛……ドルルゥッが、
いつもよりずっとストレートになっとったことに……。
洞窟には……、真っ赤な彼岸花が点々と咲いて──……。
（ＳＥ：ホーホーホー…）
──────────────────────────────────────
（ＳＥ：ピチョン…ピチョン…と水滴音）
五月
「くすくすくす…。
かかりおった、かかりおった……。
我らが魍魎の巣に、あわれで愚かな方相氏が。
『以て室を索めて疫を驅るを掌る』……、
これぞ、鬼船(きふね)流・冥界逆方相の術ぢゃ──……
あっはっはっはっは……、
あっはっはっはっは──……!!」
（ＳＥ：水滴の音フェードアウト）
──────────────────────────────────────
ついなＮ
『鬼っ子ハンターついなちゃん』！
「滝夜叉姫と妖魔の内裏編」！
【ＣＭ枠】
ついなＮ
来る二〇一六年一〇月三〇日、ハロウィン前日に、
ウチが主宰する妖怪イベント『妖怪卸河岸７』が、
東京・浅草橋は、東京文具共和会館で開催されるで〜！
妖怪系創作なら一次創作・二次創作、どちらでも参加ＯＫ。
漫画や小説、評論の同人誌や、音楽作品、グッズ、
手作りアクセサリでも一点ものアート作品でも何でもあり、
参加ジャンルは不問や！
妖怪系オンリー展示即売会『妖怪卸河岸』、ぜひ遊びに来たってな!!
ただいま参加サークルさま絶賛募集中♫
また一般来場者の方にはウチの特別グッズをプレゼントしちゃうで！
詳しくは『妖怪卸河岸』で検索、検索ゥッ❤
それじゃー、後半もぜったい聞いてな♡
（前半終了）
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※CMパートの内容は、ボイスドラマ公開当時のものです。
※この脚本を用いた、門脇舞以さんらプロの声優の方々によるボイスドラマも配信しております。
ぜひご視聴なさってみてください！ https://fantia.jp/fanclubs/326
第２話 ついなちゃん、忌わしの祠の封印を解き、
妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻（前編の前編）
〈登場人物〉
役ついな（一四歳）……本名・如月ついな。方相氏（鬼退治師）。CV：門脇舞以。
前鬼(ぜんき)……ついなちゃんのお供その①（赤いぬいぐるみ）。セリフはピコピコ音。
後鬼(ごき)……ついなちゃんのお供その②（青いぬいぐるみ）。セリフは無し。
五月（一〇歳）……祠の奥の洞窟に封印されていた少女。正体は果たして……？ CV：門脇舞以。
※「N」＝ナレーション
▶︎【鬼っ子ハンターついなちゃん】ボイスドラマ 第2話（前半）ボイスドラマ
https://fantia.jp/posts/2584
▶︎解説トークコーナー「門脇舞以と大辺璃紗季のﾄﾞﾙﾙｩｯのコーナー！ 第2回（前半）」
https://fantia.jp/posts/2760
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ついなＮ
方相氏は熊皮を蒙り、黄金四目、玄衣朱裳（げんいしゅしょう）し、
戈を執り盾を揚げ、百隷(ひゃくれい)を帥ゐて時に儺(な)し、
以て室を索めて疫を驅るを掌る。
『周禮（しゅらい）』夏官・司馬「方相氏」の条より──
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ついなＮ
ウチ、方相氏の役ついな！
一四歳の鬼退治師や！
トレードマークは金色に光る四つ目のお面に、
真っ白いツインドリルの髪、通称ドゥルル！
悪い鬼や魑魅魍魎、妖怪どもの魔の手から、
世界の平和と子供たちを守るため、
今日も妖怪退治のバトロール、頑張っとるんやで!!
ついなＮ
『鬼っ子ハンターついなちゃん』！
「滝夜叉姫と妖魔の内裏(だいり)編」第２話
ついなちゃん、忌(いま)わしの祠の封印を解き、
妖魔の姫、千年の眠りより復活するの巻！ 前編!!
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【薄暗い洞窟の中・うっすらとヒカリゴケの光】
（ＳＥ：ピチョンピチョンと水滴の音が反響）
五月（さつき）
「くすくすくす…」
五月
「今宵、いよいよ時は満ちた……
嬉しやの…喜ばしやの……
これやこれ、何とて祭ろうや、
飛んで火に入る、方相氏ぢゃ──…」
五月
「くすくすくすくすくす…」
（ＳＥ：水滴の音ＦＯ）
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【山中（夜）】
（ＳＥ：樹々を掻き分け山中を進む音。ホーホーとフクロウの鳴き声）
ついな
「へーっ……へぇーっ…、へっくちゅっ！！！（ＳＥ：ズルズル）
誰か噂しとるんかな〜、それか、ぱんついっちょやからかな〜？
着の身着のまま、勢いでこんな山ん中まで来たからなぁ」
前鬼
「ピコピコー！」
ついな
「ん、何や前鬼？ ほんま、ええのんか、ご主人……やて？
ここは何人たりとも足を踏み入れてはならん〝入らずの森〟、
誰もみだりに侵してはならぬ〝忌わしの祠〟があって、
そんな禁断の地に足を踏み入れてるなんて、
おじーちゃんにバレたら大目玉やって…？」
前鬼
「ピコ！」
ついな
「えーねんえーねん！
どーせそんなん、おじーちゃんが口から出まかせ言うとるだけや！
ウチ知っとるんやで、かく言うおじーちゃん自身が、
ウチに内緒で、ここんところ毎晩、
その忌わしの祠に通い詰めてるんことを…!!」
前鬼
「ピコピコ〜……」
ついな
「もう連続二十日以上になるやろか、
まったく……おじーちゃんもお盛んやで…！
でも、今日という今日はウチが先回りして、
おじーちゃんがその祠で、ナニしとるんか確かめたるんや。
そんで弱み握って、おじーちゃんをギャフンと言わしたるねん！」
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（ＳＥ：ホーホー、ホーホー、ホーホー……。フクロウの鳴き声）
ついなＮ
──ここは、京都北部にある古刹・鞍馬寺──…
…の割とすぐ近くにあるボロっちい古寺〝如月庵(きさらぎあん)〟──……
…の裏手にある深い深い山の中。
時刻は丑三つ時の少し前、……ウチはその日、
常日頃、修行サボってることをおじーちゃんにこってり叱られて、
めっちゃクサクサしとったんや。
……ウチのおじーちゃんは如月庵の住職で、
名前は「如月 宝庵（きさらぎ ほうあん）」っちゅー生臭坊主！
怪しげな法術と変な発明が得意なマッドサイエンティストで、
常識人のウチはいっつもエライ迷惑を被っとるねん。
坊主のくせに酒は飲むは博打はするは、女好きだわ、
おまけに説教好きで、さらにケチときとる。
ウチの小遣いなんて、今どき毎月三百円や。
身内ながら、ロクなもんやないで、ほんま！
……だいたいおじーちゃんはいっつもいっつも、勉強せーだの、
早寝早起きせーだの、歯ぁ磨いたかー！、お風呂入れよー!!
また来週〜!!!だの、小言がいちいちうるさいねん！
せやからその時のウチは、
忌わしの祠でおじーちゃんの弱点見つけて、
見返してやろうって考えとったんや。
いま思えば……、それがすべての過ちの始まりやったんやけど……!!
（ＳＥ：ホーホー。フクロウの鳴き声。ナレーション終わり）
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前鬼
「ピコピコ、ピコピコ」
ついな
「何や前鬼、いつになく弱気やないか？
後鬼もなんかずっと黙りこくっとるし。
心なしか言葉もピコピコ言うとるように聞こえるでぇ？」
前鬼
「ピコピコピコピコ」
ついな
「……ん？ 言い伝えによると、その祠には、
それはそれはおっとろしい、
一〇八匹の魔物が封じられとるちゅう話やて？
せやから勝手に近づいたらアカン？
何や、そんなんただの脅し文句やで！
その証拠に……、ホレ、よぉ注意してみぃ」
ついな
「どや？ 周りに妖気や霊力の類を全く感じんやろ？
どれだけ感覚を研ぎ澄ましてみても、ここら一帯、
なぁ〜〜んも感じられへん。鬼の子一匹おらへんで！
それにな……妖怪や魔物の百匹や二百匹、
この役ついな様にかかればどぉってことない。
赤鬼の首をひねるようなもんやで♫
泥舟に乗った気持ちで安心せいや！」
前鬼
「ピコピコ!! 」
ついな
「赤子？ 大船？ まあ、何でもええわ。
…………え？ 頼りない？
どうにも心配だ、今からでも遅くないから如月庵に帰ろう？
ご主人一人じゃ心許ない……やてぇ⁉︎」
ついな
「何言うとんねん、裏切り者！ おのれらウチの式神やろ !!?
ええか、おじーちゃんには絶対黙っとき！
ウチは一人前の方相氏やで！？
仮に何かあっても大丈夫、自慢の法力パワーで吹っ飛ばしたる。
ウチはもう、子供扱いはウンザリなんや!!
……それにな、この先の祠にも、
どーせ大した秘密なんかある訳ないで！
おじーちゃんはいっつも、
『ええか、ついな、あの祠には何があっても、
絶対に近付いてはならんぞ!!』なぁ〜んて、
もっともらしいこと言うとるけど、
どーせおじーちゃん、
『はんにゃとう』だの、『すなっくのりょーしゅーしょ』だの、
『びにぼん』だのを隠しとるに決まっとんねん！」
ついな
「……ほら、この前もおじーちゃんが、仏壇の後ろに、
裸の女の人がいっぱい載っとる雑誌隠しとったの見つけたやろ？
おじーちゃんは『ば、ば、バカもん！ そ、そっ、それは、のっ、
呪われた雑誌で、お祓いするためにそこに安置しとったのぢゃ!!!』
とか言うとったけど、絶対あれ嘘やで!!
だって、めちゃめちゃ冷や汗かいとったし！」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「……お、とか何とか言うとるうちに、
噂の忌わしの祠が見えてきたでぇ〜！
祠じゅう、彼岸花がいっぱい咲いて、真っ赤になっとるな♫
まるでウチの勝利を祝福してくれとるようや…!!」
ついな
「ふっふっふっふ…、見とれよ、おじーちゃんっ！
弱み握ったらお小遣いの賃上げ要求したるでぇ……。
月三百円から月四百円…、いや一気に月五百円や！
うわ、すごい贅沢………!!
さぁ行くで、前鬼・後鬼!! 億万長者はもう目の前や…!!!」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「ん？ 扉に封印のお札が貼ってあるって？？
何や、この古びたお札……？
悪厄…邪氣……なんとか……封…………、
読めへんな、ずいぶん古いものっぽいけど……。
でもこの字は見覚えあるで、
これは間違いなくおじーちゃんの字や！
せやったら……、えいやっと♫」 （ＳＥ：ビリビリ！）
前鬼
「ピコピコピコピコ！ 」
ついな
「かまへん、かまへん！ はい、お邪魔するで〜〜〜♫」
ギギィ〜〜（ＳＥ：祠の扉を開ける音）
前鬼
「ピコピコ、ピッコピコ！」
ついな
「ピコピコ、ピコピコうるさいわ！ 言葉しゃべったらどや！
……ちゅーか……、ほれ見てみい？
やっぱり魔物なんか一匹も出て来ぃへんやん」
ガサガサ、ガタガタ（ＳＥ：祠を捜索する音）
ついな
「どー見ても、ただの小汚ない祠やし、
御神体も見当たらへん。特に目ぼしい物も何もないな。
霊気も魔力も感じんし、何か拍子抜けや………おっ？」
前鬼
「ピコピコ！」
ついな
「何やこの賽銭箱の下……、階段になってて通り抜けできるみたいやな。
どうやら地下に繋がっとるようやで。
ほれ、真新しい人の足跡もある。
なるほど、おじーちゃんはここに毎晩通っとったんやな……。
ちょっと面白うなってきたやん！ 」
前鬼
「ピコピコピコピコ〜〜！」
ついな
「あーもう、前鬼うっさいわっ！！ 少し黙っときっ!!!
さぁ、ダンジョン探検と洒落込むでぇ〜〜〜！！！！
ギッギッギィ〜〜、バタン！（ＳＥ：祠の扉が閉まる音）
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（ＳＥ：……ホーホーとフクロウの鳴き声）
ついなＮ
──思えばこの時……、ウチは全く気がついていなかったんや。
なんで、普段うるさいくらいに饒舌な前鬼が、
ピコピコとしか喋られへんかったのか。
なんで後鬼が、一言も言葉を発せられなかったのか……。
そして、お札で扉が封印されてるはずの祠の中に、
どうして真新しい人の足跡があったのか、その意味に──……。
ついなＮ
その後……、前鬼と後鬼は一言も言葉を発さなくなった。
まるで、只のぬいぐるみのように。
──そしてウチは、
その時の自分の身体の変化にまったく気がついておらんかったんや。
自慢のツインドリルの髪の毛……ドルルゥッが、
いつもよりずっとストレートになっとったことに……。
洞窟には……、真っ赤な彼岸花が点々と咲いて──……。
（ＳＥ：ホーホーホー…）
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（ＳＥ：ピチョン…ピチョン…と水滴音）
五月
「くすくすくす…。
かかりおった、かかりおった……。
我らが魍魎の巣に、あわれで愚かな方相氏が。
『以て室を索めて疫を驅るを掌る』……、
これぞ、鬼船(きふね)流・冥界逆方相の術ぢゃ──……
あっはっはっはっは……、
あっはっはっはっは──……!!」
（ＳＥ：水滴の音フェードアウト）
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ついなＮ
『鬼っ子ハンターついなちゃん』！
「滝夜叉姫と妖魔の内裏編」！
【ＣＭ枠】
ついなＮ
来る二〇一六年一〇月三〇日、ハロウィン前日に、
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ただいま参加サークルさま絶賛募集中♫
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それじゃー、後半もぜったい聞いてな♡
（前半終了）
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※CMパートの内容は、ボイスドラマ公開当時のものです。
※この脚本を用いた、門脇舞以さんらプロの声優の方々によるボイスドラマも配信しております。
ぜひご視聴なさってみてください！ https://fantia.jp/fanclubs/326
