『カラテカ』、なぜか推理する方向に追い詰められる。

文字数 696文字

『王様』は、私の方に視線を移した。
 よく見ると『聖女様』も。そして、『ゲーマー』までもが。なぜ、私なの?

「ビルの壁を登ったとか? 突起があれば登れないこともない……かな?」

「ビルには窓はあったけれど、あの人の大きな体を支えるような突起はなかった」『ゲーマー』はすぐに否定した。「それに、私は、あのとき、空の方もちゃんと見たよ。誰もいなかった」

「……忍者みたいに黒っぽい服だったら、夜に紛れたんじゃないのかな?」

「窓から光はいくつか漏れていたから、そこまで真っ暗じゃなかった」

「じゃあ、穴を掘った。空き地に穴を掘って隠れた」

「空き地には、何かが激しく動いた跡はないって云ったよ……。それに、穴を掘るのには逃げるのに時間がかかる」

「忍者なら、一瞬の内に穴を掘って逃げられるよ!」

 冷たい視線を感じる。なんで、私が追い詰められているの?

「そ、そうだ。ビルとビルの間に隠れることができるはず。複数のビルに囲まれていたんだから、隙間だっていっぱいあるもの」

「ビルとビルの間の隙間はほとんどないって云ったはずだよ」『ゲーマー』は冷静に反論してきた。「数少ない隙間も、とても狭かったのも云った……。空き地の周りのビルだってそうだし、来る小道でも同じだった」

「す、隙間女というもの存在するらしいよ」

「忍者の次は都市伝説? ……これだから、フィクションと現実を区別できない人間は困るわね」

『王様』は、辛辣な言葉を投げつけてきた。え、区別できていないのはそっちじゃないの?

「人の話にケチばかりつけて、あなたはどう思うの?」

「簡単に考えれば良いのよ」
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登場人物紹介

『王様

自分が世界最強の格闘技をやりたいためだけに

『物理セキュリティマネジメント研究会』を立ち上げた。

ちなみに一切、格闘技の経験はない。

格闘技知識は主に劇画や書籍。

空想的強くなりたいガール。

『カラテカ』

高校入学前に空手をやっていたけれどいろいろあってやめた。

自由な放課後女子高生ライフ!

と、思っていたら、格闘技経験がバレて王様に『セマネ研』に入れられた。

本編の語り部。

ちなみに何時も判定狙いなので試合展開は地味。

現実的強くなりたかったガール。

『ゲーマー』

王様の隣の席にすわっていたのが災いして『セマネ研』に入れられた。

基本、無口でゲームばかりしている。

実は数々のオンラインゲームで殺戮を繰り返し

『オーガ』と呼ばれている『達人』ゲーマー。

仮想的強いガール。

『聖女様』

王様が『人が足りない』と泣く振りをして連れてきた美しく淑やかな学園の人気者。

場に似つかわしくないようだけれどよく見ると毎週購入している雑誌は

男同士が熱く体をぶつけ合う(非BL)ものばかり…。

とある深夜番組はリアルタイム視聴を欠かせない。

最近昭和の強豪が鬼籍に入ることも多くちょっとメランコリー気味な

幻想的強さ大好きガール。

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