『カラテカ』、何が起こったのかわからず慌てふためく。

文字数 760文字

『額に傷のある男』は、人間が取れるとは思えない形に関節が折られて――いや、正確には『折りたたまれて』――狭い狭い隙間に押し込められていた。

『ゲーマー』の聞いた音は、『髭の男』が強力な力で『額に傷のある男』の骨を折り、無理やりに折りたたんでいた音だったのだ。

 一方でもう一つの疑問が残る。そんな時間がどこにあったのだろうか? 音が聞こえたのは一〇分程度。歩道であれだけ暴れていた『額に傷のある男』だ。そんな男を押さえ込むだけでも時間がかかる。ましてや、抵抗する男の腕や足をすべてを折ろうとすることは一〇分程度では絶対無理だ。

 いや、そんな疑問なんてどうでもよい。先に警察に連絡しないと。でも、どうやって説明する? 頭の中で様々な思いが駆け巡る。

 けれど、一瞬で思いは霧消させられた。

 私の腕を掴む強い力。感じた瞬間には、一方向に体全体を投げつけられた。両足が地面から離れなかったのは不思議なくらいだった。いや、その場合は、腕だけが、体からもぎ取られただろうか。私の体は、強制的に空き地へ向かわせられた。
 
 力に逆らい、足でふんばろうとした。だが、この強烈な力に逆らえば、むしろ、私の膝やアキレス腱の方が耐えられない。いなすしかない。いなせる? これは、力に支配されて、自由を奪われているだけではないか。意志を奪われた私の足。空き地の中央をすりぬけて、ビルの壁に向かう。そこまで来ても止められない。壁が目の前に迫った。

 ――瞬間、私は体を反転させた。力に逆らえないまでも、自分の背を壁に押しつける。それでも、体中に衝撃が走った。痛みより先に、呼吸が止まる。

 何が起こったのか。虚ろになった目で前を見る。

 そこには大きな男が立っていた。髭を生やした大きな男。『ゲーマー』の見た髭の大男?

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登場人物紹介

『王様

自分が世界最強の格闘技をやりたいためだけに

『物理セキュリティマネジメント研究会』を立ち上げた。

ちなみに一切、格闘技の経験はない。

格闘技知識は主に劇画や書籍。

空想的強くなりたいガール。

『カラテカ』

高校入学前に空手をやっていたけれどいろいろあってやめた。

自由な放課後女子高生ライフ!

と、思っていたら、格闘技経験がバレて王様に『セマネ研』に入れられた。

本編の語り部。

ちなみに何時も判定狙いなので試合展開は地味。

現実的強くなりたかったガール。

『ゲーマー』

王様の隣の席にすわっていたのが災いして『セマネ研』に入れられた。

基本、無口でゲームばかりしている。

実は数々のオンラインゲームで殺戮を繰り返し

『オーガ』と呼ばれている『達人』ゲーマー。

仮想的強いガール。

『聖女様』

王様が『人が足りない』と泣く振りをして連れてきた美しく淑やかな学園の人気者。

場に似つかわしくないようだけれどよく見ると毎週購入している雑誌は

男同士が熱く体をぶつけ合う(非BL)ものばかり…。

とある深夜番組はリアルタイム視聴を欠かせない。

最近昭和の強豪が鬼籍に入ることも多くちょっとメランコリー気味な

幻想的強さ大好きガール。

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