むかしばなし その3

文字数 641文字

「たしかにワシは世界最強であるぞ」

 そう云うと、王様は、男を自分の兵隊としました。

 なるほど、王様の軍隊はとても強いものでした。どんな敵もなぎ倒します。負けることはありませんでした。他の国々の人々は王様の軍隊を見るだけで、戦うことすらせずに、貢ぎ物を持ってくることさえありました。王様のどんな無理難題も、人々は従います。誰もが王様にひれ伏しました。

「ああ、やっと、私は世界最強の人を見つけたのだな」

 男は誰よりも強い王様を見て思ったのです。

 ところがです。王様の軍隊の進軍が止まりました。どんな強敵も止めることができなかったのにです。

「どうしたことでしょうか?」

 男は王様に尋ねました。

「軍隊に疫病が流行ってしまったようだ」王様は震えながら、苦渋の顔をします。「ここは、いったん撤退するしかあるまい」

「撤退? 負けたということでしょうか?」

「そういうことではない。今は時期が悪いだけだ。ワシが人の世で恐れる者は何もない」

「あなたは、誰よりも強いのではなかったのですか? 何を恐れると云うのですか?」

「悪魔だ。疫病や災厄を撒き散らす悪魔。あの魔の山にいる、アイツだけはワシにはどうにもできない。人ではない悪魔だけはワシも恐れる」

 その言葉を聞くと男は、一人震える王様に背を向けました。

「残念です。あなたは世界最強ではなかったのですね。私はその悪魔のところに行きます」

 そう云うと、男は、悪魔のいる魔の山に向かっていきました。
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登場人物紹介

『王様

自分が世界最強の格闘技をやりたいためだけに

『物理セキュリティマネジメント研究会』を立ち上げた。

ちなみに一切、格闘技の経験はない。

格闘技知識は主に劇画や書籍。

空想的強くなりたいガール。

『カラテカ』

高校入学前に空手をやっていたけれどいろいろあってやめた。

自由な放課後女子高生ライフ!

と、思っていたら、格闘技経験がバレて王様に『セマネ研』に入れられた。

本編の語り部。

ちなみに何時も判定狙いなので試合展開は地味。

現実的強くなりたかったガール。

『ゲーマー』

王様の隣の席にすわっていたのが災いして『セマネ研』に入れられた。

基本、無口でゲームばかりしている。

実は数々のオンラインゲームで殺戮を繰り返し

『オーガ』と呼ばれている『達人』ゲーマー。

仮想的強いガール。

『聖女様』

王様が『人が足りない』と泣く振りをして連れてきた美しく淑やかな学園の人気者。

場に似つかわしくないようだけれどよく見ると毎週購入している雑誌は

男同士が熱く体をぶつけ合う(非BL)ものばかり…。

とある深夜番組はリアルタイム視聴を欠かせない。

最近昭和の強豪が鬼籍に入ることも多くちょっとメランコリー気味な

幻想的強さ大好きガール。

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