『ゲーマー』、もう一人が出てこない場所へ足を踏み入れる。
文字数 1,433文字
小道の幅は狭い。あの大きな二人が並んで歩くのは無理だろう。
小道の両隣にはビルの壁しか見えなかった。地図や航空写真から見えない抜け道なんてなかったさ。たしかにビルとビルの間には隙間はあった。
本当に隙間としか思えないほどの空間しかなかったよ。私なら体を横にしてがんばればなんとか通れるかもしれない。でも、あの男たちでは、どちらでも無理だ。折りたたみ傘のような体だったら別だけれども。ただ、まっすぐに空き地までの道が続くだけだ。
小道は手入れがあまりされていないらしく雑草が茂っている。道のど真ん中からコンクリートを突き抜けて生えている雑草すらある。日も当たらそうな場所なのに。自然の生命力には驚くばかりだったよ。もっとも、強い生命力よりも強いあの男たちに踏みにじられていた。丈の長い雑草はみんな、空き地に向かって倒れていた。雑草が折れた部分から出ている汁が乾いてないから、二人の男によって踏まれたのは間違いない。
私は、さらに踏み潰すこともなんだか可哀想なので、倒れている雑草を避けて歩いていて行ったよ。それはそれで、今度は道の端の方の雑草を踏み潰してしまったりもしたんだけども。自分によって四方に広がって押しつぶされた雑草にたまたま花のつぼみがあるとちょっと気持ちは良くないと思いつつ、小道を歩いたよ。
空き地に近づくにつれて、臭いが強くなってきた。空き地の方からも臭いはたしかにある。でも、一番きつい臭いがするのはビルとビルの隙間からだった。隙間を見ると、地面にはゴミが溜まっていたよ。生ゴミもある。ビルの住人たちは狭すぎるが故に窓を開けていないのかな? 気づかないのが不思議なくらいだ。
私は鼻をつまみながら、空き地に到着した。
思っていたとおり、四方をビルに囲まれた空間だった。今来た小道しか出入りできる場所はない。後は本当に空が広がっているだけだよ。
空き地自体には、何もなかった。もちろん、ゴミは転がっていたよ。大きなものでもコンビニの袋に入ったゴミが転がっていたくらい。後は、むき出しの茶色の地面が見えるだけ。雑草も生えているけれど、それはビルの壁側にあるだけだった。
私は拍子抜けをした。二人が喧嘩をしたのだ。それなのに、地面には激しく動いた跡も見えない。流血によって地面が染まっているのかとすら思っていたのに。小道に消える前の二人は、そこまで徹底的にやるほどの勢いだった。
地面には、血どころか汗すら染みこんでいなさそうだったよ。じゃあ、あのとき聞こえた音はなんの音だったのだろうか? 気のせい? そんなことはないはずだけれども……。
不思議に思いながらも、悩んでも仕方がない。結局、思ったような戦いが起きなかっただけなのだ。現実は一番面白くないことが真実なのだろう。私は、帰ろうと小道に足を踏みいれた。
そのときに、異常なことに気づいてしまった。急いで、振り向く。再び空き地を見る。
出入りできるのは、小道だけ。他にはない。
地面には何もない。隠せる場所はない。
二人の男がこの密閉された空き地に入ってきた。
出てきたのは一人。傷のない男。なら、空き地にはもう一人がいるはず。気絶しているかもしれないけれど、もう一人の男――額に傷のある男がいるはず。それが当たり前のはずだよ。にもかかわらず、誰もいない。何もない。
――いったい、額に傷のある男はどこに消えたのだろうか?
小道の両隣にはビルの壁しか見えなかった。地図や航空写真から見えない抜け道なんてなかったさ。たしかにビルとビルの間には隙間はあった。
本当に隙間としか思えないほどの空間しかなかったよ。私なら体を横にしてがんばればなんとか通れるかもしれない。でも、あの男たちでは、どちらでも無理だ。折りたたみ傘のような体だったら別だけれども。ただ、まっすぐに空き地までの道が続くだけだ。
小道は手入れがあまりされていないらしく雑草が茂っている。道のど真ん中からコンクリートを突き抜けて生えている雑草すらある。日も当たらそうな場所なのに。自然の生命力には驚くばかりだったよ。もっとも、強い生命力よりも強いあの男たちに踏みにじられていた。丈の長い雑草はみんな、空き地に向かって倒れていた。雑草が折れた部分から出ている汁が乾いてないから、二人の男によって踏まれたのは間違いない。
私は、さらに踏み潰すこともなんだか可哀想なので、倒れている雑草を避けて歩いていて行ったよ。それはそれで、今度は道の端の方の雑草を踏み潰してしまったりもしたんだけども。自分によって四方に広がって押しつぶされた雑草にたまたま花のつぼみがあるとちょっと気持ちは良くないと思いつつ、小道を歩いたよ。
空き地に近づくにつれて、臭いが強くなってきた。空き地の方からも臭いはたしかにある。でも、一番きつい臭いがするのはビルとビルの隙間からだった。隙間を見ると、地面にはゴミが溜まっていたよ。生ゴミもある。ビルの住人たちは狭すぎるが故に窓を開けていないのかな? 気づかないのが不思議なくらいだ。
私は鼻をつまみながら、空き地に到着した。
思っていたとおり、四方をビルに囲まれた空間だった。今来た小道しか出入りできる場所はない。後は本当に空が広がっているだけだよ。
空き地自体には、何もなかった。もちろん、ゴミは転がっていたよ。大きなものでもコンビニの袋に入ったゴミが転がっていたくらい。後は、むき出しの茶色の地面が見えるだけ。雑草も生えているけれど、それはビルの壁側にあるだけだった。
私は拍子抜けをした。二人が喧嘩をしたのだ。それなのに、地面には激しく動いた跡も見えない。流血によって地面が染まっているのかとすら思っていたのに。小道に消える前の二人は、そこまで徹底的にやるほどの勢いだった。
地面には、血どころか汗すら染みこんでいなさそうだったよ。じゃあ、あのとき聞こえた音はなんの音だったのだろうか? 気のせい? そんなことはないはずだけれども……。
不思議に思いながらも、悩んでも仕方がない。結局、思ったような戦いが起きなかっただけなのだ。現実は一番面白くないことが真実なのだろう。私は、帰ろうと小道に足を踏みいれた。
そのときに、異常なことに気づいてしまった。急いで、振り向く。再び空き地を見る。
出入りできるのは、小道だけ。他にはない。
地面には何もない。隠せる場所はない。
二人の男がこの密閉された空き地に入ってきた。
出てきたのは一人。傷のない男。なら、空き地にはもう一人がいるはず。気絶しているかもしれないけれど、もう一人の男――額に傷のある男がいるはず。それが当たり前のはずだよ。にもかかわらず、誰もいない。何もない。
――いったい、額に傷のある男はどこに消えたのだろうか?