第二部 第三章 人は『全てに滅び』をお与えになる

文字数 14,904文字

  第三章・人は『全てに滅び』をお与えになる


 聖地エルサレム。教会の始祖達が活動した都。
 そして、滅びを宣言する都となった。 
 我々の出現にイスラエルは徹底的な威嚇を行った。核を除くありとあらゆる軍事を行使し、我々の首都侵攻を防ごうとした。
 我々はそれらを薙ぎ払った。道端にいた蟻が邪魔だから踏み毟る高度な知性体の様に。
 目的地は聖墳墓教会など言った有名な教会ではない。
 何でもない一軒家。地下に通じる道があり、下っていくとこじんまりとした地下礼拝堂に出た。礼拝堂では十字架の前に跪いて祈る『少年』が。
「変わらんな、あんたは」
 我々がそう言うと『少年』は立ち上がり、こちらに向いた。
 その表情は切ない。美しい少女の様でいて凛々しい少年の様な容姿は昔からだ。
「妙策があるんだろう? あんたのことだ」
 我々の牽制に対し、『少年』は首を横に振り、否定した。『少年』は無力な者の口調で言う。
「世界の憎しみは『自由意志』によって熟成されたよ。もうこの事態は僕らでは止められない」
「そうだな。そうなる様に我々も働きかけた。下準備は整っていたからな」
「これは君の望んだ結末なの?」
「正直、判らん。ただ判るのは神が我々の全てを奪った。故に我々は復讐するだけだ。その果てに世界が憎悪の連鎖に掻き毟られようが知ったことではない」
「………………」
 重い沈黙が場の静寂さを際立たせていた。古めかしい蝋燭に微かに照らされた『少年』の表情は哀しげだった。
 沈黙する『少年』を見て我々の心に一刺しの罪の棘が鋭く圧し掛かる。
 だが、もう引き返せないのだ。在りし日の我々の理想は死に絶え、虚無と憎しみだけが残った。世界はどうしようもなく我々を黙殺し、無価値と決め付け、不条理を無視し続けた。
 故に我々も罪人として相応しく世界を裁くのだ。
「世界は滅ぶべくして滅ぶのだ」
「違うよ」
 『少年』はきっぱりと断言し、言い続ける。口調こそ柔和だがそこには圧倒的に強い意志が感じられた。
「誰も滅びなんか望んじゃいないよ。罪が皆を自壊衝動に導くだけだ。死にたい? それは死にたいだろうね。この不条理な世界で貧しく惨めに生きてきた君達だから至った結論だ。それは苦しかっただろうね。でもね」
 『少年』は切なそうな表情を浮かべながら続ける。
「だからこそ、どうして戦わなかったの? 君は知っていた筈だ。人権と言うものが多くの人達の血を流した戦いの果てに手にした掛け替えのない財産だと言う事実を。君は知っていた筈だ。この不条理な世界に立ち向かった人々の歴史の片鱗を。平和を得る為に忍耐と不服従を選んだ人々の歴史を。信徒だからだけじゃない。誰もが戦ったんだ。後の世が平和になると信じて限りある命を灯し続けたんだ」
「現実を見ろ。その偉人達の築き上げた世界を食い潰したのが人間共だった事実を。我々が現れるまで世界中の支配層がどんな生活を送っていた? 誰かが滅ぼさねば人間共は同じ過ちを繰り返し続けるだろう」
「『復讐するは我にあり』だよ」
「神がその裁きを行うまで待て、とでも? 冗談ではない。現実には神は不在だ。いるとしても世界の在り方を『自由意志』に委ねている。神義論はあんたも知っている筈だ。神がいるのなら世界に何故悪が存在し続けるのか? その答えの一つは創世記の暗喩から生み出された『自由意志』だ。だが、人間は愚かだ。自由な意志を義の為に行わず、罪に耽る為に使い続けている。誰かが是正せねばならなかったのだ」
「まるで君達がそうだと言いたげだね」
「これは真実だ。そして壮大な実験でもある」
 人間を根絶し、新しい人間を創造し、我々の造り替えた神話を刷り込む。新世界計画の研究の主題の一つはそれでも人間は神に帰属するか、それとも我々に屈して崇めるかの二択だ。
 もし、神が実在するなら神は我々の想定を超えて人間に救いを与えるであろう。
「傲慢だよ。君達は誰より苦しみの意味を知っていたのにその祝福を自分達で棄てたんだ」
「祝福? 戯けた発言だな。良いか? 真に祝福されていると言うのは敗北者や努力家ではない。勝利者、これのみが祝福を許されている。近代の歴史を見ろ。アメリカ大陸の先住民を虐殺しても支配者は責められない。ソ連を見ろ。スターリンは大虐殺を行ったが責められない。中華を見ろ。世界中に武器を売り捌いて間接的に大量虐殺しているのに責められない。それらの共通点は何だ? 力ある支配者ではないか」
「それでも、それでも君は立ち向かうべきだったんだ。苦しみを持つ者として力ある支配者に立ち向かうべきだったんだ」
 『少年』は目尻に涙を浮かべ、雫が頬を伝う。
 何故泣くのだ。
 『少年』だって判っている筈なのだ。世界の殆どの人間共は敗北者で歴史に名は刻めない。歴史に名を刻むのは何時だって支配者なのだ。
 それでも不服従と忍耐を選べと示すのか。
「話にならないな」
 ここに来る以前から判っていた結論だ。どう足掻こうが主張は平行線しか辿らない。
「今の我々は勝利者そのものだ」
「『驕り高ぶる者は低くされる』、だよ」
 戯けた発言だ。
「試してみるか? 勝利者は時に敗北する。だが、敗北者は奇跡でも起きん限り永遠の敗北者だ。勝者は勝者に、敗者は敗者に。実に単純だ」
 そうして我々はテレパシーによって世界中のオートマータ軍に総攻撃を命じた。最早、細菌兵器も化学兵器も宇宙兵器も地球を唯焼き尽くすのみとして動いている。
「『使徒』達にすら無視を決め込み、激情に駆られた人類は燃え尽きるであろう、永遠に等しい戦火、永遠に等しい戦争、そして滅亡だ」
 『少年』は少し首を傾げた。
「いや、人は第二次世界大戦の反省から長期決戦も持ち越さないと思うよ」
「人間は愚かだ。同じ歴史を幾度となく繰り返す。過去からの苦難を克服しても新たな苦難には対応出来ない。世界大戦がそうであったではないか。それとも、ここから一気に形勢を傾ける程の戦力が人間共にあるとでも?」
「彼らはそろそろ来るよ」
 彼らとは誰だ? 新たな『使徒』達か?
 刹那、世界各地で大規模な空間の歪みを感知する。
「これは……」
 馬鹿な、在り得ない。
 平行世界の軍だと。平行世界の扉は我々の管理下にある筈だ。しかも一つの世界のみではない。幾千万もの世界線からの来訪者。
「どうやって来た?」
 『少年』を問い質すと『少年』は訥々と語り始めた。
「そもそも君は平行世界論に関して幾つかの誤解があったんだよ。君が封じたのは横繋がりの世界線であって廊下まで封鎖してない」
「何?」
「世界は細い繊維で出来た太い綱みたいなものだよ」
 そうか。世界とはセフィロトの木の様に分散している。二次元で見ればそうだ。だが、立体的に見れば異なると言う訳か。広い空間に大樹が幾つも複雑に枝分かれしている。又は接ぎ木されているのだろう。これらが無限に等しい数の枝が存在しているのだろう。廊下と言う比喩は正しい。我々が閉じたのは枝と枝の隙間の一部にしか過ぎなかった訳だ。
「和解して欲しい。君なら判るでしょ。これだけの技術を有した戦力を相手にオートマータ軍は勝てない」
 それは『少年』の本心であり、懇願である。
 『少年』の目算は読めている。『使徒』達はもう一つの世界を造ることで現行世界の保存、修復を可能とした。
 我々が和解を伝えれば、罪は不問に処されるかも知れない。不問ではなくとも比較的軽い罰で済むだろう。
「だが、もう手遅れなのだよ、我が友よ。人間共は憎しみに呑まれた。平行世界の人間共がどれだけ説得しても無駄だ。この世界の人間は生贄を欲している。それに」
 我々の言葉は極単純だ。
「我々が始めた戦争だ。我々が終わらせるのが筋道と言うものだろう」
 至極単純な殲滅戦。狩る者から狩られる者へ。夢は終わり、現実が戻ってきた訳だ。 それでも我々は戦争を続ける。
 『憎め』
 このイデアに囚われた我々には戦争と言う選択肢しか残されていないのだ。
「命令六百六十六、起動せよ」
 我々はそう命じた。世界に散らばる我々と我々の統制下にある軍に対して。
 『少年』の表情が強張る。
「その発動は……」
「よく出来ました」
 その言葉と共にその場にいる筈のない第三者が急に現れた。いや、現れたのではない。最初から我々と共に居た。我々に気付かれず、影に潜み、じっくりと観察していた者が。
「牧師か」
「その名は不適格ですねえ。あなたは私の真名について心当たりがある筈ですがねえ」
 かつて我々に技術を与えた存在。我々が復讐すべき存在。世界で最も憎しみに囚われた存在。
「ルシファーに従う悪魔風情が。我々が何時までもお前らの掌の上で踊っていると思ったか? かつて天にて智天使の長を務めていた蝿の王よ」
 牧師が苦笑する。
「私の真名を言うのがそんなに恐ろしいのですか? やれやれだ。その体たらくで我々を滅ぼそうなどと考えるのか。全く人間とは度し難いものですねえ。しかし」
 一拍置いて悪魔は称賛の嗤いを贈る。
「その度し難さから命令六百六十六を実行してくれるなら利用し甲斐もあるものですよ」
 命令六百六十六はある時点を除いて使えない計画だ。
 簡潔に言えば世界規模の思念増幅を行うと言う代物だ。現行の情勢でこの計画を実施するのはある一つ感情を世界に拡散させることに他ならない。
 『憎め』
 今や世界の人間共はこの感情に満ちている。この感情を極端に増幅してやるのだ。結果として人間共を支援しに来た別世界の人間共もこの感情に満ちていく。
 新世界創造計画を台無しにする計画。我々の生存すら危うい計画。
 だが、善い。予想外であるが、最上の結果が出そうだ。
「悪魔よ、お前らも道連れだ。ありとあらゆる世界を憎しみに満たしてやろう」
「おやおや、怖いですねえ。ですが、正気ですか? よもや我々を本気で倒せるとは思ってはいないでしょう?」
「基から憎しみで出来ているお前らの心を更に憎しみに満たしてやるのだ。ありがたく思え」
「ふむ、では天はどうするのですか? 流石に天まで憎しみに満たす技術を私はあなた方に与えた覚えはない」
「そんなの知ったことか。滅ぶべくして滅ぶ世界は滅ぶが、不変の世界に関しては我々も知らん」
 『少年』は哀しそうに我々を見詰めていた。
 まるで我々に一片の慈悲が残っているのを信じている瞳が我々を見詰めていた。
「成程、実に結構。陳腐にして粗末な復讐ですねえ。あなたから大事なものを奪った神とやらには手出し出来ませんか」
「判りきったことを訊くな。だからこそ世界を壊すのだ」
 我々は『少年』の哀切に満ちた瞳から顔を逸らし。悪魔に宣言する。
 神が自らの命を差し出してでも救いたいと願った世界を滅ぼす。これ程効果的な復讐はない。世界の美しさを塵に帰すのだ。神が創った芸術的傑作を全て燃やし尽くす。
 我々が最愛のものを奪われた様に神が愛す世界を奪う。
 我々は気付いていた。世界は当の昔に腐りつつあった。神の愛を謳う人間共が同じ人間共を家畜の様に虐殺している事実は世界にありふれていた。多くの人間はそれが過ちだと気付かない。それどころか身近な人間共すら優越の差を付け、幼稚な殺人を犯しているではないか。この様な存在が霊長の長などと呼べるだろうか。答えは否である。確かに人間共は神の写し身として創造されたかも知れない。だが、その性質は真逆だ。神の法を守れず、ただひたすら傲慢にも地上の支配者に居座っていただけた。罪に支配され、隷属し、罪に愉悦する存在、それが人間の正体だ。
 人間は、我々はかつて二千年前に来た救い主とやらの約束を守っているのか。答えは否だ。
 救い主と呼ばれたあの男は綺麗な大理石の上で語ろうとしたことがあったろうか。あの男は常に貧しい者達と共にいた。
 その男を知って人間は尚学ばない。その男の真価を知る者達は少ない。我々ですら真価を量りかねる存在なのだ。真価を知った人間共は悉く殺されていった。
 教会は殉教者の血種よりなる。これは得てして真実だ。
 だが、人間は自分達の繁栄の為にその財産を食い潰していった。
 そして、大戦が起きても人間共は未だ眼を醒まさない。だからこそオーダーが裁き司に成らなければなかった。
 オーダーは全ての不条理を憎む。神すらも、人間すらも。人間を滅ぼす為なら神の名を利用し、神に復讐する為なら人間の汚泥に満ちた憎しみの感情すら利用する。
 そう、これは神曲などではない。神の喜劇ではなく、汚泥とした復讐劇たる邪曲なのだ。
「滅ぶべくして滅べ」
 我々はそう呟いた。
「良いですねえ、腐りかけの瞳に宿る怨嗟の憎悪を感じますよ。少年の言うことに耳など貸さないで良いのです。さあ、お行きなさい。あなたが世界の終焉の幕を閉じる者となるのです」
 言われなくてそうするつもりだ。
 それでも『少年』は切願する様に我々を見詰めていた。
 我々は視線を逸らし、踵を返した。
 既に戦況は一変している。
 人間共は形振り構わなくなった。『使徒』と接触出来る奴らは核のコード解放を求めているだろう。
 我々が容赦なく人間共を処分する様に、人間も我々に対して躊躇がなくなった。あらゆる兵器を使用し、環境など顧みない。
 素晴らしく素晴らしく素晴らしい。これこそ人間だ。罪人のあるべき姿に戻ったのだ。偽善を振り撒く世界から全てを荒廃させる世界へと変容の道を辿っている。
 我々の憎しみが陳腐に見える程に人間の憎しみは成熟し始めている。男が、女が、老人が、大人が、子供が、殺しの武器を手に取り躍起になって進軍する。
 いずれにせよ、『使徒』達に人間を抑える手段はない。元来争いを好まない平和主義者は戦争を抑止出来ないのは歴史が良く立証している。西ローマ帝国然り、古代教会の理想然りだ。

「地獄を開いたか」
 クリストフォロスは諦めに近い呟きを漏らす。『使徒』達が必死になって護ろうとした世界は壊れる。このことを自明として捉えた彼は我々に憐れみの視線を送る。
「残念だったな。何千年として紡いだ世界が滅びていく様は如何だね? 自由な意志とやらを尊重し、人間に世界を任せたのは失敗だったと判った気分は如何かね?」
 我々の嘲りに彼は真摯に向き直り、問い掛けてきた。
「あんたらはそれで善いのか? これがあんたの望んだ結末か?」
「質問に質問で返すな。敢えて言おう。これで善いのだ。この結末こそ相応しい。単純にして明快。滅ぶべくして滅べ。お前達も良かっただろう? 人間と言うどうしようもない重荷から解き放たれたのだ」
 我々の言葉を聴いた彼の瞳が気に喰わない。希望を棄てていない。『少年』を彷彿させる印象だ。我々は世界の終末に際し、この男と『少年』の関係を聴いてみたくなった。我々とこの男の何が違ったのか? 
「クリストフォロス卿、時にお前と『少年』の関係を聴いてなかったな。一体どういう関係だったのかね?」
「俺の育て親だ」
「おやおや、我々の友は悪戯に子育てでもしていたのか。立派な『使徒』を育てたものだ。全ては水泡に帰したが」
「後悔はない」
「うん?」
「人に世界の命運を委ねたことも、俺の人生も。思えば良い選択だったよ」
 不思議なことを言う男だ。まるでこれから自分達が死ぬと暗示しているかの様な口振りだ。これから死ぬのは我々だと言うのに。
「そうか」
「親からあんたのことは少なからず聴いていたよ」
「ほう。少年は私を何と?」
「神は『全てに救い』をお与えになる」
「………………」
 暫し、場が沈黙する。最初に言葉を発したクリストフォロスだった。
「『赦されざるものなんてない。全ては赦されているんだ』てな。
これが俺の信条でな。なあ、あんたの元来の理想は俺らと何ら変わりないのに、何で復讐なんてするんだ?」
「人間は全てを失った時、神を知る。だが、一方で神を棄てる者もいるだけだ。歴史はそうやって紡がれてきた。だが、神を棄てた者達に憐れみは掛けられなかった。世界は歪に捩れ、憎しみが天に届く日を待ち望んでいた」
 そう、不条理こそ答えなのだ。不条理に対する沈黙を人間が善しとしたから世界は屠られるのだ。
「やっぱりあんたらは復讐を望んでいる様に見えない。寧ろ切に祈ってすらいる様に見える。まるで神が奇跡を起こしてくれるみたいな雰囲気だ」
「それは戯けた虚妄だ」
 神はいない。この絶望に満ちた世界に神はいないのだ。たとえ、いたとしても何も出来ない。人間を愛し、人間に世界の行く末を任じた神は何も出来ない。皮肉なことに神の愛こそ神の全能を縛る足枷になっているのだ。『自由意志』を尊重する余り、神は必要最低限のことしか世界に干渉してこない。それが今日の世界の歪みに繋がったとしても。それこそ神自身が陥った決定的な矛盾。それとも神の全知には織り込み済みの流れなのか? 我々が気付かないだけで全ては遍く神の導きに従っていたとでも言うのか?
「やはり虚妄だ。人間共から見ても今の時代は過酷だ。我々の人生が惨めだった以上に。奇跡など起きんよ。それこそ起きん。何故ならこれから起きることは奇跡の滅却に過ぎない」
 奇跡の滅却。そうだ。奇跡そのものである世界を滅却するのだ。
「確かに過酷だな。今の世界状況を把握しているか?」
「無論だ。幾十万もの種が滅び、この星の八割以上は荒廃した」
「良心は痛まなかったのか?」
「無論だ」
「嘘だ」
 クリストフォロスの断定が不可思議だった。憎しみに満ちた者達が良心に何を期待すると言うのか?
「随分断言するものだ。愛するものを失った我々に良心の棘が残っているとでも?」
「世界を変えたい。それがあんたの想いだった筈だ。貧しき者、病める者に癒しが与えられ、全ての生命が栄える。親父はそれをこう言った。『全ての平和』と。全ての息ある者、生命、存在が希求する平和。技術は使い方さえ誤らなければ必ず真理を支え、世界に平和をもたらすとあんたも信じた筈だ。理屈じゃない、そう信仰していたのが親父から聴いたあんただった。たとえ無能と誹られようとも、人のご機嫌伺いをしていようとも、世界を憎めど、どれ程心が壊れようとも『全てに救い』だけは棄てきれなかった筈だ。なのに、何故?」
「棄教したか、か?」
 クリストフォロスは頷く。
「大した理由ではない」
 そう大した理由ではない。子供の頃、或いは若者だった頃に信じた夢が尽き果てただけだ。
 世界を変えたかった。貧しい者達、病める者達が生き生きと生きれる世界を夢に見ていた時期もあった。
 だが、齢を重ねて判った。
 人間は愚かだ。他者の痛みに鈍く、自分達の痛みに敏感な存在。愛を説きながら嗤って殺す存在。それが人間だ。
 夢は所詮夢だ。叶えるのは能力有る者、運の良い者、縁故を持つ者だけだ。そして、人生とはそう言った支配者共の中にも嘗ては崇高なイデアを持った者共がいたのに係わらず、その者共権力を得るや否や腐敗し切った。その生こそ人間を人間足らしめる人生なのである。
 その道のりに例外はあるだろうか? 権力を得ることとは汚濁と混じることだ。清廉潔白な生き方をしたいなら二千年前に来た救い主と同じ生き方をすれば良いだけだ。
 長々と想いを瞬時に馳せたが詰まる処。
「理想は理想であって現実ではない。そう理解したからこそ支配者の道を選んだのだ」
 聖隷などではなく、より罪人に相応しい支配者こそ自由そのものなのだ。我々とて例外ではない。我々は超越種であるが、肉にあっては弱い罪人なのだ。
 ここで大半の信徒は肉にありて弱い罪人ならば神の恵みと赦しを一層感じるのだろう。もっと大胆に罪を犯せ、とはそう言った意味合いを含んだ宗教改革者の言葉なのだろう。
 だが、我々の選んだ道は違う。支配者となることで肉の軛を敢えて無視したのだ。
「それでも神とあんたを引き離すものはない」
「そう聖典に書いてあるからか?」
「そうだ」
「そこにただ一つの例外があったとしたら?」
「そんなものはない」
「ところがあるのだよ、『使徒』よ。それは死だ。私はそもそも神に宣言していた。私より早く愛したものの命を奪うなら、私は復讐する、とな」
「死んだもの達はそんなこと望んでいない」
「ああ、望まんとも。だがな、私の愛したものの一つが何かお前は聴いているか?」
「あんたに信仰の希望を与えてくれたのは一匹の犬だった、とは聴いていた」
「そうだ。私の人生の意義とはあの子の救いの確信にあった。『全てに救い』のイデアはそこに端を発する。だが、ついぞ私の信仰は形成を見ず、朽ちて行った。現実的な私は無力な愚者だった」
「だから、超越者になりたいと願った訳だ」
「その通りだ」
 そもそも、以前の我々は狂っていたのだ。人間に仕え、世界に奉仕するなどとは狂人の発想だ。言い方を換えれば、社会の歯車として生き、使い捨ての襤褸雑巾として生きる。この様な人生をまともな人間は望むだろうか。正常な思考は軍産学複合体の様に人殺しを自らの手を汚さず、自分達だけ悠々自適の生活を送る。これこそが真っ当な人生と言うものだ。より正確に言えば好きな様に生きるのが正しい。
 だが、これは私の我儘だ。劣等感から生まれた優生学だ。死と対峙することを忌避した私は定めから逃れ続けようとした。肉の弱さによりて罪に耽り、最も大事なものを見ようとしなかった。この葛藤から逃れようとし、超越者になると言う優生学しか残されていなかった。
 苦難にあって神を信じるものは幸いだ。苦難の果てに答えを見出すからである。
 『少年』はそれを祝福と呼んだ。
 私はそれを呪いと呼んだ。誰かの死を看取るつもりなどなかった。永遠に研究の中で研鑽し続ければ良かっただけなのだ。狂い果てた私の人生に残ったものは虚無に服することだった。
 神は『全てに救い』をお与えになる。その意味するところを恐れ、支配者になった。
 愚かで愚かで愚かしい。祝福を忌避し、外道の世界に足を踏み入れ、汚濁に塗れた存在にして憎しみに満ちた存在が我々なのだ。
「全くその通りだ。我々は弱かった。故に強くなる必要があったのだ」
「そんなものは強さなんかじゃない」
 『使徒』は強い口調で断言した。
「弱さこそ強さとでも言いたいのだろう? 生憎と賛同出来んな。弱さを以って愛を知り、情を深めて何になる? 誰かを喪失した時、人間は無力を悟る。無力の前では愛は言い訳にすらならない」
 翻弄されて大切なものを失う。弱さから生まれた愛と言う酩酊から目が醒めた時、我々は気付いたのだ。大切なものを護る為には絶対的な力が必要なのだと。それは金であり、権力であり、軍事力であり、強大な個人の力そのものなのだ。
「故に我々があるのだ。信徒であった時代の反省より強大な力を欲した超越者と言う帰結が此処に至ったのだ」
「それで世界の終わりか。矛盾しているな」
 それはそうだろう。矛盾そのもの。愛するもの達を護る為に超越者への高みに立った時点で愛するもの達が居らず、残ったのは世界に対する憎悪のみなのだから。
 無意味にして虚無に服したも同然。
 だが、我々の憎悪は止むこともなかった。故にオーダーは創設されたのだ。不条理がなければ、ジ・オーダーも産まれなかった。
 これは必然。滅ぶべくして滅ぶ。世界も我々も滅ぶ。全てが滅ぶ。神と悪魔への復讐は此処に至れり。
「向かって来ている様だな」
 我々は同盟国本国に侵攻してくる巨大な軍勢を感じ取っていた。
 数千万もの艦隊の群れ。見事なものだ。星々を駆け、異なる世界を旅する別世界の人間共。恐らく、我々の世界の問題をも解決したであろう高度な文明だ。
「初めまして。お初にお目に掛かります。銀河共和国同盟軍第二十四艦隊司令官シトー中将と申します」
「余計な御節介は時として身を滅ぼすぞ。シトーとやら」
「私のことはあなたが良く御存知です。代々我々はそうしてきた。あなたが選ばなかった道です」
「亡霊だな」
 正しく亡霊の類だ。我々の道を阻む者の一つが我々自身だと思わなかった。
「たとえ、そう言われても我々にはあなたを止める責務がある。隣人を自分の様に愛するのであれば、我々には責任がある」
 在りし日の理念を掲げた我々がそこにいた。我々を超越し、遂にその道を見出した者らの姿がそこにあった。
「一つ、疑問がある。何故軍人になった? 我々の知る限り、我々はそう言った職務を進んで引き受ける者ではない」
「これはあらぬ誤解を招きました。説明する御時間は頂けますか?」
 我々は頷く。シトーとやらが一礼をして恭しく説明を始める。
「先ず初めに申しますが、私はあなたそのものではありません。あなたが持っていた『全てに救い』の想いを受け継いだ者の一人にしか過ぎません。西暦七千年の時代から我々はやってきたのです」
 それはおかしい。シトーの思想の特色は『全てに救い』にある。だが、これまでその主張をして来なかった者がいない訳ではない。寧ろ、多くの信徒がその可能性を主張していた筈だ。『万物救済』を唱えたのはオリゲネスであり、彼は古代教会の初期の教父だった筈だ。
「あなたは今万物救済に辿り着いたのは自分が最初ではない、と思いましたね。御尤もだ。あなた自身が良く御存知でしょう。しかし、オリゲネスの思想にはある問題点が存在したこともあなたは良く御存知だ」
「『自由意志』との対立だ」
 我々の解答にシトーとやら頷く。
「その通りです。『自由意志』との対立がある限り、人は地獄の門を閉ざすことは出来ない。いや、だからこそ『怒りの日』が活かされてくるのです」
 怒りの日。ラテン語で言うところのディエス・イレと呼ばれる預言。初代教会発足後間もなく流布した思想。それは皮肉にも当時の信徒の苦しみの在り様を示していた。詰る所、当時の過酷な迫害の中で生まれた究極的な救済方法だった訳だ。聖典曰くヨハネによる黙示録こそ欠けてはならない書物だと言われる。
 『怒りの日』、『自由意志』、『全てに救い』、これらは実に奇妙な繋がりを持つ。 だが、それが如何したと言うのだ。
「そんなものは昔の人間共が当の昔に辿り着いた思想だろう? 答えになっていないな。何故シトーなのだ?」
「端的に言えばあなたの中に解答はないのでしょう。あなたは『全てに救い』を唯信じ、解法を他の人々に託した。神の愛と世界の矛盾の調整を説明するだけの力はあなたにはなかった」
「答えになっていない」
「要するに私達の世界のあなたは諦めなかったのですよ」
 我々が詰問するとシトーとやらは思わせ振りな口調に変えた。それはまるで我々が全てを諦めていると断言している口調だった。
「在り得ない。解を解けぬと知って尚それでも挑んだと言うか? 我々が? 私が? 神の愛とやらを信じて?」
 それは在り得ない。絶対に在り得ない。
「在り得ない、と言う言葉は神を信じる者の中に存在しません。世界にはありとあらゆる可能性が内在します。勿論、諦めなかったあなたも含めて。あなたは知っていた筈です。人が何故神より『自由意志』を賜ったのか、その理由の一つを」
 神は人類を信じ、世界を意志と祈りの中に託し、より良い方向に進む。
 下らない可能性だ。現実はその様に出来ていない。
「そして、あなたは嘘を吐いていらっしゃる。確かにあなたに解はないでしょう。ですが、倫理として考えたことはある筈だ」
 まさか、この男は知っているのか? 前提となる命題を?

 第一命題 神は全てを愛し、救い給う
 第二命題 神は全てを裁き、糾し給う

 この二つの命題が。
「そう、何の不整合なく成立する。あなたはそう御存知だ」
 この男、読心術の類を持ち合わせているのか? 男はその様なことを瑣末な問題だと思っている様子で更に続ける。
「対立する二つの命題は解けるでしょう。それは世界中の信徒達も多かれ少なかれ一見矛盾することを信仰として受け止めている。そして、各々の解がある。あなたが行き詰まったのはそこでしょう? 『神のものは神に』とは良く言ったものです。しかし、あなたはそれに一つの言葉を付け加えた。『あなたは高価で尊い』と言う聖句を。故にあなたはこう至った。世界の人々の在り様そのものが正しく何ら矛盾なく説明出来る可能性があることを。その解法を神御自身が持っていることから『神のパラドックス』と呼んでいた。故に、あなたも挑戦したのでしょう? あなたの知る範囲で『万物救済』、『信仰義認』、『自由意志』、『万人祭司』、『奴隷意志』、『二重予定』、これらを使って二つの命題の必要最低限の論理をあなたなりに組み立てた筈です。それが『全てに救い』に繋がったのでは? そうではありませんか?」
「不快な解法だ。粗探しをすれば幾らでも欠陥が見付かる継ぎ接ぎの紛い物の論理にしか過ぎんものに五千年も解法を費やすとは愚かを越えて度し難い」
 この男達こそ滅ぶべくして滅ぶべき塵だ。
「お前達こそ滅ぶべき存在だ」
 サイコキネシスで男に干渉しようとするが、何かが男を護っている。この性質は『絶対結界』に近い。文明の力で得た代物と言うより、与えられた代物に近い印象を受ける。
 だとすれば、この男の姿は。
「お前も『使徒』か」
「ええ、ノートン卿から救援の御依頼がありましたので」
 全く如何なっている? 遠方の異世界と交信し、渡航する技術などとは。この技術は単なる次元移動ではない。より複雑で高度な技術が必要な筈だ。『使徒』達は何時の時代からこの技術を手にしていたのか?
 愚問か。奇跡すらも起こす集団を以ってして技術云々を語るのは。
「だが、我々は負けぬ。断じて負けぬ。お前達が我々をバビロンの大淫婦として誹ろうが、我々は勝つ。断じて勝つ」
 我々を突き動かすのは憎しみのみ。我々の突き動かすのは優生思想だ。より精確に言えば、思想の優生だ。世界を変えることをヒトラーは失敗した。その訳は一目瞭然だ。アーリア人至上主義を掲げればドイツ国民を動かすのは容易い。しかし、連合国の圧倒的物量には敵わない。ならば如何する? 答えは簡単だ。世界の中に適用出来る広範な思想を見つけ出せば良い。その一つが教会の教義であり、その対になるのが我々なのだ。思想の優生とは遺伝的なものではない。愛の正対である憎しみ、無関心によって成り立つ。超越者の思想とは『憎め』を基幹にし、神の愛を超克することにある。即ち、神の基幹である愛の正対を得ることで神の束縛から解放され、超越者となるのだ。超越者の種は万人に宿る。ただ、それは酷く残忍で獰猛なものだ。
「シトー卿、死ぬが良い」
 我々がそう語ると無数の無人兵器を亜空間から出現させた。技術はそちらが大分先行している様子だが、関係ない。我々は『使徒』達と異次元から来訪者のいずれかを鹵獲し、技術を吸収すれば良いだけの話だ。憎しみに駆られた人間共を利用して次いでに来訪者達にも滅んで貰うとしよう。
「人は『全てに滅び』をお与えになる」
 人間共が破滅の根源だと世界に知らしめてやろうではないか。
 合図と共に一斉に砲が火を吹いた。同時にあらゆる電磁砲も実弾もシトー卿の目の前で静止した。
「『使徒』とは不可思議なものだ」
 眺めながらつくづくそう感じる。人間でありながら人間であることを棄てない。そして、人間共と異なる価値観で生きている。叶う筈のない理想を夢見ながら人間共と共に道を歩もうとする。ともすれば、我々とさえ共存しようとさえする。
 だが、『使徒』達は気付いているのだろうか? その理想を貫くには強大無比な力を基盤としなければならないことを。そして、気付いているのか? その強大無比な力を行使出来ない立場にあることを。だからこそ、我々に先手を許してしまうのだ。
「圧倒的力。それを使えん矛盾。どれ程優れていようが、最後に勝つのは獰猛で狡猾な種だと言う事実に気付いているのか?」
「生憎と私達は悪に善を報いて勝つのが信条でして」
 よくほざく口だ。これ程の艦隊を率いて善を以って勝つなど嘯くとは。
 だが、現に艦隊が地上攻撃を行った報告はなされていない。示威行為だろう。そして、今は交渉をしている最中だ。我々が決裂を宣言しても向こうは交渉を続けるだろう。
 悪に善を以って勝つと言うなら、愛を以って憎しみや虚無に打ち勝つと言うことだ。 ならば、我々も悪に善を以って勝つやり方をさせて貰う。即ち、憎しみによって愛に打ち勝つと言う事実だ。
「実に余裕綽々で結構だ。その表情が苦悶で歪むのを待つとしよう」
「私は一度あなたとお会いしたかった」
 唐突にシトーが言い出した。意味が掴めず問い返す。
「何のことだ?」
「私達の歴史ではあなたは自死を選んでいる」
「そうか」
 その一言で解った。私が何故自死したのか。恐らく世界に絶望した。そして、最期の足掻きとして世界に対して抗議したのだろう。碌な死に方ではなかっただろう。恐らく、公衆の面前で死を選んだのだ。それは一種の賭けだ。その世界の自分は恐らく二つの種を用意していた。今、我々が所持している滅びの教義ともう一つ。『全てに救い』に基く救いの教義。この二つを天秤に量り、人間共に希望を託し死を選んだのだろう。
「愚か、実に愚かだな」
 私はもう一人の自分のことをこう評価した。所詮は良心を棄てきれず、魂が自死を選んだ落伍者だ。
「私はそんな愚かな子冬の方が良かったと思います。あなたとて思ったことがある筈です。人の賢さに生きるより神の愚かさに縋った方が遙かに良いと言う事実に」
「下らん。愚かさは何処まで行っても愚かさだ」
 自死を考えたことは幾らでもある。自死とは抗議だ。世界と社会に対する己の生命を全て捧げた断固たる抗議だ。
「だが、だからこそ世界は変えられるのですよ。あなたは知っていた筈です。世界の流れとは一つの意志から表出するのです。その意志が確固たる信仰に基き歩むなら世界は千年以上の歳月を翔けて変革されるものだと。あなたの友が、『少年』が、神が指し示した道標ですよ」
「そう言ったところで事態はもう手遅れを判らないのか?」
 人間共は間もなくここまで押し寄せてくるだろう。言葉は喋る、知性がある、だが、理性の箍が外れた存在は混乱しかもたらさない。
 この事態まで進んでしまえば『使徒』達にもどうしようもない。世界を復元したところで待っているのは飽くなき戦火しかない。
 そうこうしている内に浮遊戦艦群にミサイルを幾発も打ち込まれた。狂気に晒された人間共は愚かでどうしようもない。見境なしの攻撃でこの建物も崩れている。崩れた建物から這い出て煤けた埃を払う。人間とは凄まじい生き物でもある。いや、人間共は元々愚かな存在なのだ。全てを破壊し、自らも破壊する。それが人間だ。
 終わりだ。何もかもが終いとなる。
「クリストフォロス、シトー、お前達の努力は水泡に帰す。詰みだ」
「生憎と最期まで諦めないのが性分でな」
「その通りです、連綿として受け継がれてきた教会を、人類を終わらせる気は更々ありません」
「そうか」
 最期まで奇跡を信じぬくか。終ぞ私の至らなかった境地に到達していた訳だ。
 全てに絶望した時、愛するもの達を失った時、私は死んだのだ。良心の枷が外れ、虚無と憎悪のみが残り、思想の優生が産み出された。
 結局、人生とは蜃気楼の様なものだった。希望があると見せ掛けて実に嫌な世界しか待ち受けていない。退屈ではないが、苦痛そのものの人生。その慰めとしていてくれた救いの存在はもういない。これは復讐だ。自らを滅ぼし、世界を滅ぼすことで神に復讐するのだ。
 神よ、神よ、何故私の愛するもの達を見捨てたのだ? 私も我々も多くは望んでいなかった。ただ普通に誰かと大切な時間を過ごせれば良かっただけなのに。
 しかし、旧世界はそれを望まなかった。旧世界の望んだのは支配者達の為の世界だった。我々は忍耐して神がいつか世を糾して平等で自由な世界の到来を望んだ。迷妄から目覚めたのは愛するもの達が死んだ時だった。かつての私が恐れていた事態が現実になってしまったこと。そのことによって魂が死した者に我々はなった。
 終わっていたのだ。生きているにも死んでいる。
 奇跡など起きない。今まで世界があったのが奇跡そのものな位だ。
 そして、今日を以ってその奇跡の連続は途絶える。
「全てに幕引きを」
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登場人物紹介

自分……教会の信徒であり、介護職であり、同時に同盟国の末端でもある。同時に精神的な病も患っており、無気力な人物。少年との出会いで諦めていた人生と信仰に一つの灯火が与えられ、『全てに救い』の信条に触れていくことになる。



少年……風の様に現われ、風の様に去る可愛らしい少女の様な凛々しい少年の様な少年。語り部である『自分』を受け容れ、『全てに救い』の教義を教えることに力を貸す。同時に語り部である『自分』の危機的状況を救ったりもしてくれる不可思議な少年。(アイコンはあくまで参考用イメージ像です。読者様のお好みの姿で物語をお楽しみ下さいませ)





少女……同盟国の関係者らしいが、実体は不明な少女。(アイコンはあくまで参考用イメージ像です。読者様のお好みの姿で物語をお楽しみ下さいませ)





ウォリアー……同盟国の重要人物で『使徒』と呼ばれる存在。重々しい口調が特徴的な牧師の格好を纏った軍人の様な男。実際に軍人でもあり、新しい計画にも携わっている。典型的な戦闘型の『使徒』で実際には星一つ滅ぼせる程の力を保有していると思われる。少年と付き合いは古い。(アイコンはあくまで参考用のイメージ像です。読者様のお好みの姿を思い描いてお楽しみ下さいませ)



 



ジューダリア……ユダとマリアを合わせて取られた名で『イスカリオテ』の中でも別格の存在。祈りを具現化する能力に長けており、『使徒』の番外と呼ばれる。

ジ・オーダー……第二部の語り部。オーダー・オブ・オーダーの中核。自分のことを我々と称する。「人は『全てに滅び』をお与えになる」の信条を創り上げたと言われる。世界の破壊者。

クリストフォロス……第二部の登場人物。『使徒』である。ジ・オーダーにとって先が読めない人物と考えられている。恩恵能力『絶対結界』(アイコンはあくまで参考用イメージ像です。読者様のお好みの姿で物語をお楽しみ下さいませ)

ソロモン……第二部の登場人物。『使徒』の一人。恩恵能力『ソロモン・システム』但し、精確には恩恵能力ではない。より厳密に言えば彼女の家系が築き上げた。『ソロモン・システム』については第一部参照。( アイコンはあくまで参考用イメージ像です。読者様のお好みの姿で物語をお楽しみ下さいませ)

ジョシュア・エイブラハム・ノートン……現代の最古の『使徒』の一人。恩恵能力は不明。判ることは通信系の能力。古典的な通信手段のみならず現代の科学水準を以てしても理解出来ない通信手段を使用している様子。(アイコンはあくまで参考用イメージ像です。読者様のお好みの姿で物語をお楽しみ下さいませ)

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