四 ハラスメント再調査

文字数 978文字

 一週間後。クライアントがカウンセリングルームを訪ねてきた。
「お座りください」
 俺はクライアントをソファーに座らせた。クライアントの表情は暗い。
「どうしました?」
「はい。先日、社内の出来事を説明しましたが、その後、社内で変化がありました。
 ハラスメントの加害者の発覚と、会社がそれらの加害者を告訴した事で、会社のハラスメント被害は公になりました。上層部は、会社の社会的信用を回復するため、ハラスメント被害の再調査をはじめました、加害者を処分する気らしいです・・・」
 クライアントは説明した。

 前回のカウンセリングの際、クライアントは社内のハラスメントに関する出来事をこのカウンセリングルームで説明している。それに寄れば、
『課長を除く上層部の調べで、女係長の社員に対するハラスメントが発覚し、当人は平社員に降格されて左遷され、工場勤務になったが、ここでも上司を徹底的に罵倒した。この女は自宅でも周囲の住民を罵倒し、警察沙汰になり、地域条例違反で告訴された。
 上層部は、元女係長が罵倒した課長のこれまでの業務実績を調査し当人を追及した。その結果、課長の職務不履行と虚偽の報告が発覚し、元女係長とは別件で社員をハラスメントしていた事と、元女係長の取巻きたちが特定の新人を狙ってハラスメントしていた事も発覚した。課長が嘘八百を報告して社内のハラスメントを見て見ぬ振りをしていたのである。上層部は課長を平に降格して工場勤務にし、ハラスメントの被害者に代わって、ハラスメントを行なった者たちを告訴した』
 であった。

 だが、上層部は、元女係長と元課長と元女係長の取巻きでハラスメントをしていた社員の告訴や、元女係長と元課長の左遷だけでは、元女係長の取巻きでハラスメントをしていた社員の社内処分が徹底していない、と判断した。しかし平社員は降格しようがない。減俸して辞職されるのでは社会的制裁にはならない。
 上層部は、会社の社会的信用を回復するため、ハラスメントを行なっていた社員全員を懲戒解雇するため、部長職以上の管理職が再調査を行なっていた。


「これを聞いてください・・・」
 クライアントはボイスレコーダーを取り出してテーブルに置き、録音を再生した。
 ハラスメント調査だと言ってクライアントと話す、事業部長の声がカウンセリングルームに響いた。俺は事業部長の発言に驚愕した。
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