五 その後

文字数 588文字

 俺と古田和志は、警察署の刑事課で事情聴取を受けた。古田和志の録画と、これまでの状況を全て話すと、今回の件を担当する刑事が言った。
「正当防衛です。被疑者はこれまで、暴行障害の前科がありますね。
 告訴しますか?」
 叔父に前科があると聞いても、俺も古田和志も驚かなかった。やはりな、と思っていた。

「はい。俺の家族はこれまで何度も強要と恫喝を受けてました。
 今後、人を雇って放火や暴行などをしないよう、法的拘束力のある確約書を書かせて下さい」
「わかりました。告訴の手続きは・・・。
 それにしても、また横村美枝の被害者ですよ。あの者の話に乗せられて、バカをする者が多くてたまらんですよ」
 刑事のボヤキに、俺と古田和志は顔を見合わせた。そして、なぜ、今回の事件の担当が刑事なのか、俺の疑問が解けた。

 叔父は離れた位置で他の刑事の尋問を受けていたが、この刑事のボヤキが聞こえたらしく、驚いてこの刑事を見ていた。


 その後。
 叔父は余罪が見つかり、五年の実刑を食らったまま、まだ出所していない。
 横村美枝は、男とともに地元を離れた、と風の便りに聞いたが、詳細は定かではない。
 知人を通じて、叔父の女房が家を売って離婚したと知らせてきた。
 叔父が女房と折りあいが悪いのは、以前から聞いていた。叔父に子どもはいない。横村美枝を女房にしていれば、もっとましな結果になっていたように思う。

(一章 了)
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