一 ハラスメント被害
文字数 1,428文字
このところ、企業ハラスメントの被害で、俺のカウンセリングルームを訪れる患者があとを絶たない。原因は世代間における社会通念の違いだ。特に昭和世代の一部の者たちはハラスメントを気にしていないため、平成世代はその者たちのハラスメントの矢面に立たされているのが現状だ。
「どうしました?」
俺はカウンセリングルームを訪れたクライアントに尋ねた。
「はい。上司の女が何かにつけて、私を虐めるんです。勝手に私のカバンの中をあさったり、仲間と結託して根も葉もない噂を流したり、事ある毎に難癖つけるんです」
「もしかして、その上司は昭和世代で、あなたほどではないが美人ですね?」
「えっ、どうしてわかるんですか?私、上司について何も話していませんよ」
クライアントの女は驚いている。
「女特有の容貌に対する嫉妬と、昭和世代と平成世代の社会常識の違いです」
「私の容貌に対する嫉妬は、何度も経験してるからわかります。知人は大学時代にそれをやられたから、企業でのハラスメントを嫌って、卒業と同時に結婚しました。
ハラスメントに世代間の違いがあるんですか?」
「近年、ハラスメントが大々的に取り上げられて、法律が整備されつつありますが、法律を作っている男議員が女議員にハラスメントをするなど、男女を問わず、昭和世代の横暴は至る所で確認されてますよ」
「自衛官の婦女暴行事件などもそうなんですね?」
「そうです。学校の暴行障害事件を「虐め」と言ってごまかす社会体質や、学校や企業などの組織が行なっている「教育の一環だと言って行なっているハラスメント防止教育」がありながら、ハラスメントの被害者があとを絶たないばかりか、ハラスメント防止教育を行なっている組織側が、実際のハラスメントの隠蔽を図っているのが現状です」
「私もそういう被害者なんですね」
「そうです。ハラスメントを告訴する気はありますか?」
「証拠はありますが、報復が恐ろしいので、そこまで考えていません」
「わかりました。これから、対策を講じましょう。
クライアントと私との間で交わされた会話も記録も、全て守秘義務がありますから秘密は厳守します。あなたも私がこれから話す事を秘密厳守してください。
よろしいですか?」
「はい、被害を受けなくなるのなら、秘密厳守します」
「では、秘密厳守して下さい。
ハラスメントをしていた人物とその実態を教えて下さい」
「何をするんですか?」
「ハラスメントの加害者が、公に、その者たちの上司をハラスメントをしたらどうなりますか?
さらに、地域住民に対してもハラスメントをしたら、どうなりますか?」
「それは・・・」
「これは、仮定の話です。ハラスメントをする者は、自分が被害者になった時の事をまったく考えていない。常に自分が世界の中心だと思っている者が多いんです。そういう者たちは、被害者の立場を理解すべきでしようね」
そう言うと、クライアントは俺の言わんとすることを理解した。
「実はここに、被害の内容と加害者を書いてきたんです」
クライアントは文章のコピーを俺に見せた。俺はコピーを受けとった。
「では、一週間ほどで、加害者に変化が現われると思います。
ここでの話は秘密厳守ですよ」
俺は笑顔でクライアントにそう言った。
「有り難うございました。加害者が私の見える範囲から消えますね」
「いずれそうなりますよ。では、一週間後のこの時間においで下さい」
「有り難うございます」
クライアントはカウンセリングルームを出ていった。
「どうしました?」
俺はカウンセリングルームを訪れたクライアントに尋ねた。
「はい。上司の女が何かにつけて、私を虐めるんです。勝手に私のカバンの中をあさったり、仲間と結託して根も葉もない噂を流したり、事ある毎に難癖つけるんです」
「もしかして、その上司は昭和世代で、あなたほどではないが美人ですね?」
「えっ、どうしてわかるんですか?私、上司について何も話していませんよ」
クライアントの女は驚いている。
「女特有の容貌に対する嫉妬と、昭和世代と平成世代の社会常識の違いです」
「私の容貌に対する嫉妬は、何度も経験してるからわかります。知人は大学時代にそれをやられたから、企業でのハラスメントを嫌って、卒業と同時に結婚しました。
ハラスメントに世代間の違いがあるんですか?」
「近年、ハラスメントが大々的に取り上げられて、法律が整備されつつありますが、法律を作っている男議員が女議員にハラスメントをするなど、男女を問わず、昭和世代の横暴は至る所で確認されてますよ」
「自衛官の婦女暴行事件などもそうなんですね?」
「そうです。学校の暴行障害事件を「虐め」と言ってごまかす社会体質や、学校や企業などの組織が行なっている「教育の一環だと言って行なっているハラスメント防止教育」がありながら、ハラスメントの被害者があとを絶たないばかりか、ハラスメント防止教育を行なっている組織側が、実際のハラスメントの隠蔽を図っているのが現状です」
「私もそういう被害者なんですね」
「そうです。ハラスメントを告訴する気はありますか?」
「証拠はありますが、報復が恐ろしいので、そこまで考えていません」
「わかりました。これから、対策を講じましょう。
クライアントと私との間で交わされた会話も記録も、全て守秘義務がありますから秘密は厳守します。あなたも私がこれから話す事を秘密厳守してください。
よろしいですか?」
「はい、被害を受けなくなるのなら、秘密厳守します」
「では、秘密厳守して下さい。
ハラスメントをしていた人物とその実態を教えて下さい」
「何をするんですか?」
「ハラスメントの加害者が、公に、その者たちの上司をハラスメントをしたらどうなりますか?
さらに、地域住民に対してもハラスメントをしたら、どうなりますか?」
「それは・・・」
「これは、仮定の話です。ハラスメントをする者は、自分が被害者になった時の事をまったく考えていない。常に自分が世界の中心だと思っている者が多いんです。そういう者たちは、被害者の立場を理解すべきでしようね」
そう言うと、クライアントは俺の言わんとすることを理解した。
「実はここに、被害の内容と加害者を書いてきたんです」
クライアントは文章のコピーを俺に見せた。俺はコピーを受けとった。
「では、一週間ほどで、加害者に変化が現われると思います。
ここでの話は秘密厳守ですよ」
俺は笑顔でクライアントにそう言った。
「有り難うございました。加害者が私の見える範囲から消えますね」
「いずれそうなりますよ。では、一週間後のこの時間においで下さい」
「有り難うございます」
クライアントはカウンセリングルームを出ていった。