第X8話 偽作は奇をてらう

文字数 637文字

「へー、へー、ほうー」
 ミドルがめずらしく小難しい本を読んでいる。

「熱心じゃないの」
 元来、好奇心は旺盛なミドル。

「ヒッショーって物語よりそういう理屈を書いた本が好きみたいだね」
 逆にキョーコはストーリーに浸りたい派だ。

「くまいちゃん、ミドルは漫画好きだからそういうわけでもないんだ」
 背は高くないが、あだ名がくまいちゃんで定着した。

「旧著作権法だから該当しないんだろうけど、生成AI画像って偽作にあたるんじゃないか?」
 偽作には複数意味がある。

「あー、厄介な話題をぶっこんできたわね」
 一筋縄ではいかない。

「個人的に楽しむ分ならアレだけど、金を取るって話になれば権利がぶつかるだろうな」 
 ススムの好きな漫画家には、大金を稼いでいてほしいと思っている。

「話が逸れるんだけど、偽作ってゴーストライターの意味で使うと間違いなのかな?」
 著名人の名を借りて出版される例は多い。

「くまいちゃんも切り込むねえ」
 明らかに出版スピードが異常な有名人がいたりするが、本人が書いたかどうかは、内容の薄さでなんとなく分かってしまう。

「まあ、作品の出来がいいんなら著名人が作ったかどうかは問わないけど、作った人とか外縁(そとべり)のものに気を取られると、作品そのものを楽しめないんじゃないかしら」
 贔屓の作者だからどの作品でも好きになるというほうが稀である。

「雲水師匠だったら戦意喪失だけど、マスクを被ってて知らずに対戦したら、ワンチャンあるか!」
 内弟子三人が手刀を左右に振った。

 (この馬鹿弟子が!)





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登場人物紹介

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。


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