第3話 迷える浮かれ者

文字数 733文字

「ミドル。お前さん、修行云々の前に、それじゃ強くなれんぞ」
 冷酷な宣告。
「そんな・・・! どんなことだってやるよ、いや、やります!」
 ミドルが珍しく丁寧語を使う。

「そういうことじゃないんじゃ」
 雲水が息をちいさく吐くと、ミドルのからだのところどころに触れた。

「あっ!」
「お前さんはここが良くない」
 雲水がミドルの背中や腹、腕・脚のツボを突いていくと、わんぱく少年は力が抜けてへたりこんでしまった。

「マナエネルギーの通り道にところどころ穴があいていて、そこから気が漏れ出している。それで気の巡りが上手くいっていない」

「龍穴・・・ですか?」
 ミドルが持ち前の知識を絞り出す。
「ほお、知っておったか。気の通り道は完全な密閉が良いわけでは無い。気を取り入れる必要もあるからな」

「俺は、どうすれば・・・」
「そんな情けない声を出すな。こっちへ来るんじゃ」

 雲水の庵に入ると、階下へ降りる入り口があった。
言われるがままついて行くと、八角堂の外観とは裏腹な、メカニカルな工場がお目見えした。

「うわあ! 中にこんな空間が!」
「いまから工学的サージカルオペレーションを開始する」
「え! いやだよ、機械人間なんて!」
「心配するな。メスで切って縫おうってわけじゃないからの」
 本気でびびるミドルと、余裕綽々の雲仙人。

「ミドルよ。どんなに鍛えても、そのカラダに不具合があったら、その成果は望めないんじゃ。お前の嫌いな勉強でも同じじゃぞ。まず頭に詰まった昨日までのガラクタを処分しないと、新しいことは身につかないんじゃ」

「だけど・・・」
「わしがお前の土台を造ってやる。その後どれくらい強くなれるのかは、ミドル、お前次第じゃ」
「うん・・・雲水のじっちゃんがそこまで言うなら・・・。オペを受けるよ」








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登場人物紹介

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。


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