第10話 カムロドゥヌム

文字数 780文字

 ウィルに呼びかけられたススムは、逃げるようにして戦陣の中央から退いた。

「はやくはやく!」
 ウィルがせき立てる。

 ウィルが椰子の木を触っていると、胸の高さの位置にコンソールがあらわれた。
コマンドを手早く入力すると、さっきまで砂浜だった場所が轟音を立てて崩れ落ちた。そして、その位置エネルギーを利用するかのごとく、土塁がうずたかく築かれた。

「すげー! いったいどんな原理なんだ!」
ススムはさっきから驚いてばかりだ。

 敵兵の6人はあえなく堀の下に沈み、土塁の内側にウィルとススム、そして戦闘真っ最中のミドルとバルマンが残された。

「邪魔者は消えたね」
「ああ、心おきなく戦えるな」

「ミドル!」
 加勢しようと一歩踏み出したススムを、ウィルが引き留める。
「まあ、見守ろうじゃないの」

 バルマンが先にけしかけた。連撃というものは、一撃あたりのパワーが落ちるのかと言えば確かにそれは否定できない。だがそれが10発・20発も続いてどれもクリーンヒットするのなら、くらった方はひとたまりもないだろう。スピードに自信があるバルマンは連続技の名手であった。

 左ジャブ→右ジャブは寸前でかわせたが、間合いを嫌ったミドルが下がったところに左ローキックが炸裂した。

「効っく~!」
 ミドルは右足が大きく腫れ上がった。

「はは、それでは高く跳ぶことは出来ないな!」
 バルマンの言うとおりであった。

 戦況が、雲行きが、あやしくなってきた。

「はあはあ」
 ミドルは肩で息をする。

 おぼろげな意識の中、さきほどと同じようにコイルガンの砂鉄が浮遊する。
「馬鹿のひとつ覚えだな。こいつのスピードでは俺を捉えることはできんよ」

 突然、稲光がしたかと思うと、七つの鉄塊が一つにまとまり、黄金光を発してバルマンに襲いかかった。

「Sparks are flying !」

ミドルの必殺技、破軍拳が生まれた瞬間であった。





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登場人物紹介

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。


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