第X7話 一覧創成

文字数 874文字

「ミドル。夏休みの宿題、ちゃんとやってる?」
 級長を任されているウィル。

「学校の外でも言われるのはたまらんね」
 机でじっとしていられないミドル。

「雲水流は『良く遊び良く学ぶ』だぞ、ミドル」
 文武両道を地で行くススム。

「中学の勉強なんてそんな思い詰める内容じゃないじゃん」
 肉体の鍛錬と頭脳の発達とは、関連性がある。

「たくさんありすぎてさ。どこから手を付けたらいいか分かんないんだよね」
 ときに哲学的な台詞を言うのび太は、なぜ成績が悪いのか謎である。

「そういう時は一覧表を使うといいわ」
 夏休みの43日間が一望できる表を、渡されているハズである。

「そうだな。ああいうのを見ると時間を立体的に把握しやすくなるんだ」
 ペース配分を掴める、ということである。

「夏休みだけじゃないよ。年間カレンダーに書き込めば、目標も達成しやすくなるかもね」
 こうしたコトはミドルが聞き役になる。

「なるほどなあ。中学三年間をひとつの表にすれば、受験勉強にも使えそうだな」
 受験などする気の無い男が、妙な発想を述べた。

「この辺りがデジタルには無い強みなんだよな」
 スマホサイズで見れるデータは、1ページに表示される分量に限りがある。紙を拡げて一覧できる情報量とは大きな開きがある。もちろん、ページを繰れば次々とデータが出て来るのであるが、ひと目で見られるということが重要なのだ。

「ページが切り替わると、そこで思考が寸断される感じなのよね」
 巻物を開けば、途絶えること無く世界史年表を一望出来る。

「一覧表か。人生80年ならたった三万日ってとこだな。そういう表を作るのもいいかも知んない」
「計画通りに行かないのが人生だぞ」
 神が計画した宇宙史は、どれくらいの日数を費やすのであろうか。

「そんな大それたとこまで行かなくても、身の回りのありとあらゆるモノをリスト化するのは有益だわ。いまなら修正するのも容易だし」
 ウィルの自由研究は、間違いなく物理学賞を授与されるであろう。

「わたしはもっと打撃力を付けたいかな。ヒッショー、メニューを考えてくれない?」
「それはリストがものを言うなあ」




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登場人物紹介

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。


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