極私的お正月の過ごし方  

文字数 299文字


 父が組み合わせた竹ひごに紙を張って凧を作っている。
 ぼくはその隣で、細長く切った新聞紙を糊で貼り合わせていた。
 出来上がった凧は、大きくてぼくが両手を広げてやっと届くほどだった。

 その夜、ぼくは枕元に立て掛けた凧が気になって、初めて眠れない夜を経験した。

 翌朝、凧を大切に抱えて父と小学校のグランドへと急いだ。
 父は伸ばした両腕で凧を高く持ち上げて大声で「走れ!」と叫んだ。

 凧糸を握ったぼくは、まっしぐらに駆けた。
 凧は蒼い空に長い足をたなびかせて上昇していった。

 あれはぼくだ。
 ぼくの周りに空気が充満していた時代(とき)。

 凍てつく冬の日は部屋にこもって、子どもの頃を想い出し心を暖める。

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