影踏み  

文字数 226文字


 三奈との散歩は、途中でいつも影踏みが始まる。
 ぼくの真後ろに隠れて、いきなり横をすり抜けて踏む。
 一緒に暮らし始めた時からの儀式のようなものだ。

 思いっきり踏まれて痛みを感じた。
「もう止めようよ」
 ぼくの言葉に三奈は俯いたまま黙った。
 今朝、別れ話をしたばかりだった。
 三奈は何も無かったかの様に演じようとしている。

 その場を動こうとしない。
 ぼくは立ち止まったまま空を見上げた。
 鳥が雲の間を渡っている。

 気が付くと、三奈の影はすでに離れていた。

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