光を待つ
文字数 230文字
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氷の様な月が空に張っている。
寒々とした駅前で一時間以上待っていた。
ー―もう来ないのかもしれない。
私は眼鏡を外した。
強い乱視なので、街灯が打ち上げられた花火のように広がる。
駅の輪郭は闇に溶けて、光のかたまりが煌々と宙に浮かぶ。
身体中の不安が白い吐息になって、腹立ちと一緒に消えていく。
轟音が鳴り響いて、流れて来た光のかたまりがひとつになる。
あの光の中にいなければ、次の光を待つのだ。
目を見開いて前を向け。
光が来るぞ。
光が、来るぞ。
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