第8話
文字数 1,350文字
今日の転校生、清島さんという子、すごく可愛らしい子だった。あんな子と友達になれたら楽しいだろうな。あっ、だめだめ。友達が欲しいとか、そんなこと期待しちゃいけないんだ。清島さんだって、校門の前に停めてあった、うちの車と
「はあっ」
アヤコはため息をついた。
どういうわけか今夜は眠くならない。ちょっとトイレにでも行っておこうかな。アヤコはベッドから起きだすと、部屋のドアを開けた。廊下には窓から差し込む月明りとは別に、一筋の
「なんだろう、この光」
アヤコは窓を
「オヤジさん、予兆にしては強すぎやしませんか、これは」
「やっと現れたんだな、
蔵の中で話しているのはおじいちゃんとマサ兄い? なんでこんな夜中に起きているの? 何しているの? アヤコは湧き出る疑問のまま、開いていた蔵の戸からヒョィと頭だけ覗かせた。
その時、細い一筋の碧い光がボワッと太くなり、アヤコの額の中心を目がけ、ビュンと閃光が走った。政太朗とマサはウワッと驚き振り向く。アヤコは口を半開きにし、身体を硬直させ立ちち尽くしている。
「ア・・・アヤコぉ」
「お嬢ぉー」
二人の声が同時に発せられた瞬間、政太朗の手元の箱から、小さく丸い物体がフワ、フワと浮かびあがった。物体はアヤコの額に閃光を突き刺したまま、全体に碧い光をまとっている。政太朗が手元の物体を抑え込もうとした瞬間、物体はビュッーンと猛烈な勢いでアヤコ目掛けて飛び、アヤコの額にぶつかる寸前、その場で浮遊していた。
地面からはゴゴゴゴォッと地鳴りが響き、蔵全体が大きくガタンガタンと揺れ始めた。棚の上の物がドカッ、ガタァン、ゴトッと落ちてくる。壮絶な揺れに、政太朗もマサも側にある柱にしがみついた。政太朗もマサも碧い光を放つ物体に近づくこともできず、
「アヤコぉぉぉおおぉー」
悲痛な叫びをあげることしができない。
物体はキュウーーッと奇妙な音を立て、グルングルングルン、ゴオーッと高速に回転し始めた。と、みるみるうちに針ほどの大きさに変わったかと見えた瞬間、アヤコの額にズブッと突き刺ささる。
「痛ぁぁーーーいっ・・・あぁぁぁああ・・・」
アヤコは絶叫のあと、
柱にしがみついていた政太朗とマサはアヤコに駆け寄った。
初夏だというのに、キーンと冷たい真冬の空気が蔵の中に漂っていた。