新宿、路上に立つオンナ、そのワケを捜します

文字数 673文字

第三話 猛暑のなか、路上に立つ
 蒼井加奈は今日も新宿〇通りに立ち続ける。午後二時から五時間になる。陽射しがキツイ時季だから建物の庇(ひさし)の蔭に佇む。コロナはだいぶ落ち着きを見せるが、なかなか声は掛からない。


 飲み終えた清涼飲料水のボトルをビルの隙間に無造作に投げ込む。今日はこれで五本目。
 その時、二十歳前後の若者が小走りに近寄って来て、
「おネイさん、遊ばない? フェラ抜き三千円でいいかなぁ?」
 加奈は最初に現金を受け取り、近くに止めてある車の後部シートで行為をすませた。車から降りると男子は挨拶もせずに車を発進させる。
 加奈はイソジンで口をブクブクして、また元の路上に立つ。ここはタダの場所ではない。まるでネコにテリトリーがあるように(獲得)した居場所。地元の半グレにショバ代として月に一万円を払う。三十メートル間隔に他の女子が立ち並ぶ。
 立ちんぼの女子たちに会話はない。互いに商売仇。中学出立てのヒヨッコから四十絡みの熟女まで年齢層は幅広い。客はまず物色して歩く。そして好みの女子が居れば声を掛ける。店舗ではないので価格はない。その場での交渉となる。
 コロナ禍で何をやるにしてもおしなべて相場が下がった。需要と供給のバランス。隣の女子との距離も二十メートルに狭まる。三十歳の加奈(柴咲コウ似)でも月に十万円稼ぐのがやっと。
 コロナ以前は近くのオッパブに勤務していた。きちんと稼げていた。でもコロナ禍でサッパリ客が来ない。一日で五千円しか実入りが無い。そのうち店が潰れた。他の店舗と考えた時に風俗仲間から(外に立った方)が稼げると聞いた。


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