帝国歴885年 5月19日

文字数 574文字

 ファッションショーの翌日、私とデザイナーのドレイルが写った新聞が一面に掲載された。内容は私のファッションを褒め称えるものだった。学校でも私は話題の中心で、ファッションについて教えてほしいというものまで現れた。

 学校外でもこの話題は今日も盛り上がっていた。新しい産業になるのではと商人達が本格的に事業に乗り出している。古着を高く売るという謎の事業が拡大中だ。

 それからというと、つぎはぎのスーツを着た男たちで街はいっぱいになった。古くないスーツでも無理やり破いているらしい。このスーツは平民の間でもとても流行っている。新しい服を買えない平民が親の着ていたスーツをリメイクして着始めたのだ。

 なぜかスーツは古ければ古いほどオシャレとされ、平民が持っているスーツを高値で売ってくれと頼み込む貴族まで現れた。また私はおしゃれの伝道師になってしまったのだ。

 特に今回はただトレンドを作っただけではない。古着という文化を作った私は平民から絶大な支持を集めることとなった。平民出身の王子という今まで足かせになっていた肩書がプラスに作用し、次期皇帝にふさわしい人物という新聞記事まで出回った。こんなに誉められてはまた命を狙われてしまう。

 私はファッション関係以外で自分を貶めることはできないかと夜な夜な計画を練っている。しかし良い案は浮かばない。八方ふさがりだ。
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