帝国歴885年 3月31日

文字数 629文字

 私とセバスは不良化計画と呼ぶことにした。最初に仕掛けるのは帝都高等学校の入学式だ。入学式では名門貴族から特待生の平民まで様々な身分の同級生とその保護者が集まる。これは大勢に不良化をアピールするチャンスだ。

 私は手始めに不良化計画のその1を実行することにした。不良にみられるためにはまず誠実そうで物腰の柔らかいこの見た目を何とかしなくては。とにかく他人に反発した痛々しい容姿を目指す。

 この学校には指定制服がある。推測だが平民出身のものや、他国から来たものでもすぐに馴染めるように学園側の配慮だろう。決められた着こなしのルールというものはないが、皆この制服と校章に誇りをもっているから礼服のように扱う。以前学校にネクタイをしていない生徒がやって来たとき、いつの間にかどこかに連れていかれて帰ってこなかった。暗黙の了解で校風が守られているのだ。

 私が目をつけたのはまさにこの制服の着こなしについてだ。皇太子である私が制服を今までにないような着こなしをして来たらどうなるのか。教師も面と向かっては注意できないだろうから悪い噂は郊外にも広がり続けるだろう。歴史ある学校の名を汚す不良皇太子。これこそ私が求めている呼び名だ。

 制服のネクタイを緩く結び、派手なベルトでスラックスを腰で履いた。上着のボタンはすべてあけ放ち、髪の毛はオールバックだ。これは悪い意味で絶対に目立つ。同級生の私の第一印象は過去最悪を記録するだろう。明日の入学式で私の未来は大きく変わるはずだ。
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