第10話 ふわふわの誘惑

文字数 529文字

オイラは最近あるものを狙っている。
それは木の棒の先に付いた白いふわふわである。
ご主人はよくその棒を自分の耳に突っ込んで何かしているが、その時にご主人の手の動きとともに揺れるあのふわふわが欲しくてたまらないのだ。
しかし何でかいつもはのんびりしているご主人も、この時ばかりはオイラがふわふわを狙っているのを察してかオイラを警戒し始める。前に一度ご主人が棒を使っている時にふわふわにちょっかいを出したら、割と本気で怒られた。
オイラは賢いのでそれ以来ふわふわにちょっかいを出すことは我慢しているのだが、それでもやはりあのふわふわの魅力には抗えない。
オイラの中でちょっかいを出したい気持ちと我慢する気持ちが、ぶつかり合っている。

おや、ふと見るとあの棒が机の上に置かれているではないか。ご主人はトイレに行ったらしい。
今ならふわふわにちょっかいを出しても怒られないだろうか。(ちょい…)
ちょっとだけ。(ちょいちょい…)
 (ちょいちょいちょい…)
「あっ、ミケ!こらっ!」
しまった!オイラとしたことがご主人の存在に気付かず夢中になってしまっていた。
ご主人の声で我に返り大慌てで隣の部屋に逃げていった。
あの白いふわふわはオイラを惹きつけてやまない恐ろしい存在だ…。気をつけねば。
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