第5話 オイラとリモートワーク

文字数 618文字

何やら最近ご主人が画面の中にいるニンゲンと会話しているのをよく見るようになった。ご主人によると”リモートワーク”というらしい。
いまいちそれが何かはわからないが、リモートワークとやらのおかげでいつもは出掛けている時間もご主人が家にいるようになり、ご主人と一緒に過ごす時間が増えた。
しかしあの画面の中にいる人は誰なのだろうか。確認するべく、ご主人の所まで行き画面の周りを探索してみたが全くわからない。
ご主人はオイラが机の上に乗ると慌ててオイラを床に下ろしたが、それでもめげずに登ろうと頑張った。その度に、ご主人は画面の中の人に謝っていたが画面の中の人は笑っていた。
そんな日々を過ごしていると、ある日ご主人の机の上にオイラが入れそうなちょうどいい大きさの箱が置いてあるのを発見した。
いそいそとその箱に潜り込んで寝ていると、ご主人がやってきていつものように画面の人と話し始めた。また床に下ろされてしまうと様子を窺っていると、何やら違う様子。
今日は机の上に乗っているのに、いつもみたいに床に下ろされずそのまま箱の中で寝かしてくれた。なるほど、この箱に入っていればご主人のそばに居てもいいのか。理解した。
箱の中で丸くなりながらご主人の姿を観察していると、普段オイラと遊んでいる時のニコニコした顔ではなく真面目な顔をしていると気づいた。いつもご主人が外に出かけている時はこんな顔をしてるのだろうか。
長く一緒に暮らしているが初めて見るご主人の姿だった。
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