参席目 艶笑落語 ろくろ首 【R-15】

文字数 4,361文字

 


え~、落語の方にはお子様にはちょいと聴かせにくい噺ってのもございまして、良い子にはちょいとご遠慮願っておきます。
 落語で与太郎と申しますと、これはもう馬鹿の代名詞でございます、そんな与太郎はまた感じ方も鈍いようで……。

 祝い事で一杯ご馳走になりました与太郎さん。
 良い心持ちでお稲荷さんの祠の前に差し掛かりますと……。

「ちょいと、おまいさん、そこ行くお人、ちょいと待っとくれよ」
「あ? おいらか?」
「他に誰も居やしないじゃないかね、おまいさんだよ」
 
 与太郎がひょいと提灯を上げて見ますと、これが実にいい女。
 ちょいと年増ではございますが、卵型の輪郭に切れ長の目、涙袋がぷっくりしているのがなんともあだっぽくて、少しぽってりとした唇も男の助平心に火をつけると言う……。

「おおっ? おめぇみたいないい女が、おらに何の用だ? ま、まさかキツネが化けてるんじゃあるめぇな」
「今時そんなことを信じる馬鹿がどこにいるんだい?」
「そりゃまぁ、ここにひとりいるけどよ」
「嘘だと思ったら確かめてご覧よ」
「確かめるって、どうやって?」
「ほら……」
 女がひょいと着物をめくりますと、程よく肉付きの良い、見るからに柔らかそうな、真っ白な尻が……。
「ひょ~! こりゃ良いものを見せてもらっちまったな、ああ、確かに尻尾はねぇや」
「見るだけでいいのかい?」
「そりゃぁどういうこった?」
「触りたかないかい?」
「そら、おめぇ、触って良いもんなら触りてぇやな、だけど、おらぁ、金なんぞ持ってねぇぞ」
「誰が金を取るって言ったんだい?」
「だって、おめぇ、そんな色っぽい尻に触っちまったら、それだけで終われねぇや」
「あたしだって、それで終わられちゃがっかりだよ」
「つまり……タダで乗っかちまっても良いってことか?」
「女だって無性に抱かれたい時もあるんだよ、抱いておくれよぉ」
「おめぇ、そりゃ、もう……おめぇをひと目見た時からたまんねぇ思ってるたくれぇだ、もう褌が突っ張っちまって痛くってたまんねぇよ」
「どれどれ、見せてごらんよ……まあ! おまいさん、随分と立派な持ちモノだねぇ」
「あ、おめぇ……そんな大胆な……褌の脇から引っ張り出して……後ろから抱き付かれてるんで、背中に柔らけぇもんがぴったりと……お? お? こりゃ尺八か? 『千鳥の曲』ってやつだ、 おお、こいつは堪ら……わあぁっ!」

「どうしたんだい?」
「どうしたもこうしたもねえや! 肩越しにここまで顔が届いてるじゃねぇか、ろ、ろ、ろくろっ首だぁ!」
「実はそうなんだよ、あたしは気を遣りそうになると首が伸びちまう性質(たち)でね」
性質(たち)もなにも……ば、化けもんじゃねぇか!」
「化けもんは酷いじゃないか……おまいさん、怖いかい?」
「そ、そ、そりゃ怖ぇよ!」
「そのわりには萎まないねぇ」
「そ、そりゃぁまぁ……おめぇがえらくいい女だからよ」
「後生だよ、抱いておくれよぉ、首が伸びると男はみんな逃げ出しちまうのさ、おまいさんみたいにぼーっとした男なら感じも鈍そうだから怖がらないかもしれないし、もし怖がってもあんまりモテそうにないから逃げ出さないだろうし、他所であたしの首のこと喋っても信用されそうにないなぁと思ってさ」
「妙な所を見込まれたもんだなぁ」
「どうだい? おまいさん」
「そりゃまぁ、ここまで来て生殺しは辛ぇよ」
「じゃぁ、いいんだね? 抱いておくれかい?」
「あ、まぁ、そりゃ……」

 のんきな男があったもんで、ろくろ首と一緒に祠の中へ入ってしまいます。
 いつ首が伸びるかとビクビクしながらも、女の言ったとおりモテない与太郎のことでございます、怖いのを我慢しながら女を横たえて着物をはだけますと、着物の上から見るよりもぐっと豊満な胸、ぐっとせり出しておりますが、適度に熟れていかにも柔らかそう……すっかり嬉しくなっちまいます。

「こいつはでけぇ乳だな」
「大きいのは嫌いかい?」
「大好きだ、おらぁ」
「おまいさんの体も逞しくて好きだよぉ」
「頭は弱ぇけどよ、力はあるんだ、おらぁ」
「素敵だよぉ、後生だよ、口を吸っとくれよぉ」
「おう……んんん……おわぁ! びっくりした、随分と伸びたなぁ、床の上で首がとぐろを巻いてらぁ」
「気が昂ぶると伸びるって言ったろう?」
「あ、ああ、そう言ってたな……そうだ、見なきゃいいんだ、見なきゃな……このかぶりつきたくなるような乳に顔を埋めちまえば……」
「ああ……おまいさん、良いよぉ、もっと強く吸っとくれよぉ」
「こうか?……ひゃぁ! 急に横から顔を出すなよ」
「だって、おまいさんは片っぽばかり吸うじゃないかね、こっちが寂しがっててさ」
「だからっておめぇ……おいおい、首がおいらの背中から廻ってるのかい? 背中に当たってこそばゆいや」
「なら、これでどうだい?」
「また一段と伸びたなぁ、背中の上で弓なりに……しかし、隣で女の顔が自分の乳を吸ってるってのもなぁ……そうだ、乳は二つあるからいけねぇんだ、二つあるからな、こうなったらもっとずっと下の方、臍下三寸へ……」
「ああっ、おまいさん、良いよぉ……気を遣っちまいそうだよ」
「そうけぇ? だったらお前ぇが上になってくんねぇ……これでどうだ『石清水』だぞ」

「あああっ、もっと首が伸びちまうよ」
「首が……上は見ねぇ方が良いんだよな、上は……ひゃぁ! いきなり後ろから玉を舐めんなよ!」
「嫌かい?」
「いやまぁ、これはこれで悪かねぇけどよ……しかし、便利な首だなぁ」
「ねぇ、あたしゃもう我慢が出来ないよ、挿れとくれよぉ」
「お、おう、おいらだって早く挿れたくてウズウズしてたんだ……これでどうだっ」
「あああっ、おおきいっ、おまいさん、いいよぉ、口も吸っておくれよぉ」
「『志がらみ』だな? いいぜ、おらも吸い付きたくてたまんねぇんだ」

「ん……ああ、おまいさんの、大きくって、張り裂けちまいそうだよぉっ、大きいだけじゃなくって、硬くって熱くって、まるで焼けた金棒みたいだよぉ」
「そ、そうか? おめぇの中も熱くってすげぇな」
「ろくろ首は血の巡りが良いんだよ」
「そりゃまた、どうして?」
「そうでないと頭まで血が廻らないんだよ、ああ、おまいさん、もっと激しく動いとくれよ」
「なるほどなぁ……こ、これでいいのか?」
「ああああああっ、凄いよ、おまいさん、立派に張ったカリが引っかかって、ああああっ、子袋まで掻き出されちまいそうだよぉぉぉぉ」
「そりゃもう、目一杯おっ勃っちまってるからな」
「ひぃぃぃっ、おまいさん、どうにかなっちまいそうだよ」
「おめぇのここも具合が良いな、おいらも気を遣っちまいそうだ」
「もっと深くまで突いて貰いたいよ、『達磨返し』にしとくれよ」
「おお、いいぜ、そのほうがおいらも……痛ててっ! 玉を噛むなよ」
「そんなに強く噛みゃしないよ、おまいさんの玉がぶらぶらして良く見えないんだよ」
「見えねぇって、繋がってるところがか?」
「そうだよ、うわぁ凄いねぇ、おまいさんが腰を引くと、あたしのあそこが吸い付いて行くるみたいだよぉ」
「おらもそれは感じてるけどよ、口で言われると余計に……うおっ、足を絡められたことはあるけど、首を絡められたのは初めてだ……でも、脚と腕と首を絡められちゃ動こうにも動けねぇや」
「そりゃそうだねぇ、今度はあたしが上になりたいよ」
「『時雨茶臼』だな?……ああ、乳がユサユサと揺れて、いい景色だ」

「ああっ、おまいさんので串刺しにされてるみたいだよ」
「仰け反った姿が色っぽ……仰け反りすぎだぁ、首が輪っかになってらぁ」
「あああああっ、凄いよ、突き上げられると、おまいさんのが口から出てきそうだよ」
「いくらなんでも、おいらのはそんなに長かねぇや……乳を吸いてぇな」
「『抱き地蔵』だね?……ああ、いいよぉ、もっと強く吸っとくれよぉ」

「わっ、おらの頭を引き寄せてるのは腕じゃなくて首だな?」
「気味が悪いかい?」
「いや、段々慣れて来た」
「おまいさん、あたし、今度は後ろ向きになりたいよ」
「任せとけ、力はあるって言っただろ? これでどうだ?」
「あああ、お姫様抱っこされて……『御所車』だね、素敵だよぉ、ああっ、挿れたまま上下に揺さぶるなんて!」

「ぎりぎりまで持ち上げて……どすん、とな」
「はうっ! お腹を突き破られそうだよ!」
「すまねぇ、痛かったか?」
「そうでないよぉ、良いんだよぉ、わぁ、あんたのが全部見えて来て……はうっ!」
「なんだ? また股ぐらまで首を伸ばして見てるのか?」
「だって、おまいさん、こりゃ凄い見ものだよぉ、はうっ!」
「そろそろ、望みどおり後ろ向きにするからな」
「ああっ、『乱れ牡丹』だね! あたし、これが好きなんだよぉ!」

「また持ち上げて落っことすか?」
「そうしておくれよぉ! はうっ!……はうっ!……はうっ!……」
「また伸ばし過ぎだぁ! あっ、おいっ、大丈夫か? 頭が天井をぶちぬいたぞ」
「はぁぁぁ……大丈夫……ああ、気を遣り過ぎたよぉ、さすがに痛かったねぇ」
「命がけだなぁ」
「それくらい良かったってことさ……ねぇ、おまいさん、明日も今時分にここへ来ておくれでないかい?」
「ああ、いいとも、おいらも久しぶりに良い思いをさせてもらったからよ」
「嬉しいねぇ……首を長くして待ってるよ」
「はなっから伸ばしてどうすんだ?」
「あはは、それもそうだねぇ」
「でもよ、おいらも首を長くしてここへ来るよ」
「あれ? あんたもろくろ首なのかい?」
「いやぁ、おいらが伸ばすのは亀の首だ」

 お粗末さまでした。
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