第二話『チェンジできないでござるの巻』

文字数 1,823文字

指折り数えて楽しみにしていた魔物の召喚。

しかし、ミリリの元に舞い降りた魔物は謎の茶色い物体。

あまりに辛い現実に、ミリリは泣き喚いてしまう。

あう~あう~。

夢でしょこれ……覚めて……早く覚めてぇ~……。

何かしらねーが悲しいことがあったんだなぁ……。

よーし、オイラがいっちょ、ナデナデしてやろう。

あぅぅ~。

絶対にお断りしますぅ……えっぐ……。

乳飲み子のように泣き喚くミリリ。

そんなミリリの元に、高笑いしながら近づく者が一人現れた。

オ~ッホッホッホ!無様な姿ですわねぇ。

残念ながら、これは揺るぎない現実ですわ!

えっぐ……。

どちらさまですか……?

どちらさ……。えっ……?

ちょ、私の事、覚えてないんですの!?

初対面です……ぐすっ……ぐすっ……。
おまっ……!初対面じゃねーですよ!?

私ですわ、わ・た・く・し!!


全く存じ上げません……えぐっ……。

どこの……どなたですか……ひっくっ……。

なんだねーちゃん、オレオレ詐欺か?

アンタみたいな子が犯罪に手を染めるもんじゃねーぜ。

そこのうんこは黙っててくださいまし!!

私です!ネオン・ライナーン!この学校で一番のお金持ち!!

そう……すごいですね……ぐすっ……。

それで、貴方は誰ですか……?

だからネオン・ライナーンっつってるでしょうが!!

貴方のクラスメイト!隣の席の生徒!

ああ、いましたね。

そんな人……。あぅぅ~……うぇぇ……。

影が薄い庶民みたいな言い方すんなや!

お前の記憶力は昆虫並みか!

ていうか、いつまで泣いているんですの!

このスットコドッコイ!アンポンタン!

だってぇ~……うんちなんだもん……。

うぇぇ……あたしの使い魔、うんちなんだもん……えぐっ……。

ええ、知ってますわ。

哀れですわねぇ。お粗末ですわねぇ。

ざまぁみさらせ。

聞いた話によると、使い魔というのは、

その人間の品格に適合した者が召喚されるとか。

つまり、あなたの品格は汚物ということですわね。

オイオイオイ!

さっきから黙ってきいてりゃ、随分な言葉じゃねえか!

事実だから仕方ありませんことよ。オーッホッホッホ!

それに比べて、私の相棒、ローズマリーは、

まさにこの私に相応しい華麗な魔物ですわ!

うぅ……いいなぁ……。

ねえ、あたしの魔物とトレードしない?

絶対にお断りします。

というか、私じゃなくても誰も交換しないと思われます。

ですよね~……あぅ~……。

いいなぁ……いいなぁ……。

オ~ッホッホッホ!

ああ、なんて清清しい気分なんでしょう。

ざまぁみさらせ。

さて、貴方には特別に私の魔物をご覧に入れましょう。

さあ、おいでなさい、ローズマリー。

お呼びですか?お姉さま。


……。
オーッホッホッホ!

あまりの美しさに声もでないようですわね!

あなたの目は正常ですか?
絶好調ですわ。
脳改造されたことありますか?
ありませんわ。
ミリリはローズマリーを指して、次のように述べた。
这是一个骨灰盒。

(これは壺です)

見ればわかります。
美しさ、どこ……?
どこって……。

貴方の目こそ正常ですの?

それはもう、全体からオーラが漂ってますわよ!

わっかんねー。

全っ然っわっかんねー……。

うん、まあ、すごいっすね。はい。

ちょ、何ですかその言い方!
全く、失礼しちゃうわね!ねえ、お姉さま。

ま、庶民には私の美しさなどわからないのでしょうね。

わかりたくもないです。

ていうか、メスかよお前……。

メスじゃありませんわ!

女の子ですわ!!見てわからないんですの!?

わかんねーよ……。

わかりたくもねーよ……。

キーッ!

全く、品性のない輩はこれだから!

ローズマリーの魅力が分からないなんて、

所詮は庶民ですわね!

わざわざ相手にしてやったというのに、

損した気分ですわ!ふん!!

ネオンは不機嫌そうにミリリ達の前から去って言った。

金持ちの美的センスって不可解だなぁ……。

あ……なんかあの子の使い魔見たら少し元気が出た。
良かったじゃねーか!

やっぱり持つべきは友達だよな!

友達じゃないけどね。

はぁ……とりあえずよろしくね。本当は便所で流したいけど。

おう!

俺は昔、すし屋を営んでて大将ってよばれてたんだ!

ま、好きに呼んでくれや!

そうだ!交友の印として、今夜寿司を握ってやるよ!

いや、すし屋ってお前……。

お前の世界、絶対保健所とか衛生証明書とかねーだろ……。


あと寿司は握らなくていい。

なんだ、遠慮してんのか?

大丈夫だ!材料さえあれば、ちゃちゃっと作れるからよ!

いえ、拒絶してるんです。

絶対にやめてください。


こうしてミリリと相棒の学園生活が始まったのである。


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登場人物紹介

ミリリ・アルベール


15歳。

中ニ病ぎみな女の子。

よくわからない事を呟いてカッコつけているが、

事あるごとに素の口調に戻ってしまう。

また、友達と一緒の時も素の口調であることが多く

中ニ病に入門したてと言ったところ。

胸が小さく、そこを突っ込まれると怒る。

幼い頃、猫の集団に襲われたことがあり、猫は大の苦手。

見かけるとトラウマが蘇ってヘタレる。

ジェノ・サインダー

『我が操るは、混沌から現れた強大な悪夢』

ミリリの相棒である魔物。

形容しがたい形と色と感触をしている。

強大な悪夢、というのはあながち間違いではない。

すし屋の大将で、歴戦の戦士という

よくわからない経歴を持っている。

ネオン・ライナーン


15歳。お金持ちのお嬢様。

事あるごとにミリリに嫌味を言ってくるミリリのライバル的存在。

……と本人は思っているがミリリには影が薄いと思われており、

その存在を中々覚えてもらえない。


自分の相棒は世界一の魔物と思い込んでおり、

色々な生徒に自分の相棒を自慢して周っている。

生徒達からは『何言ってんだこいつ』という目で見られているが、

本人はそのことに気づいていない、ある意味幸せな子。

金持ちの癖に頭が悪い。

ローズマリー


ネオンの使い魔。♀。

顔に合わない口調で喋る壺。

壺なので割れると絶命するが、

破片を集めると生き返ることができる。

ライナ・バーバレン


ミリリの友達。

中学生の時から一緒で仲が良い。

男のようなガサツな言葉遣いをして、

下品な言葉も平気で口にする残念な女の子。

めんどくさいことが大嫌いで、

自分の使い魔の名前すらも適当につけてしまった。

やることなすこと大体適当。

マンマルー


ライナの使い魔。

ライナに絶対的な忠誠を誓っている。

基本的に温厚な性格だが、ライナを侮辱する者や

攻撃する者には口調が荒くなり容赦がなくなる。

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