第五話『おんぶとナンパと嫌な話』

文字数 1,644文字

今日は自分の相棒となる使い魔とピクニックに出かける日。

ミリリはライナ、ネオンと共にグループを作り

班行動で小さな林道を散歩していた。

あー、歩くのだりぃ~。

なあミリリ、おんぶしてくれない?抱っこでも可。

やだ。疲れるし。

私だって本当はドラゴンとかに乗って、

グワッーって感じで進みたいぐらいだよ。


おう、じゃあオイラがおんぶしてやるぜ!

こう見えても、力はある方だから女の子一人くらい、

おんぶして歩いても大丈夫だぜ!

良かったな、ライナ。

どうやら我のサーヴァントがお主を気に入ったようだ。

遠慮なくおんぶしてもらうといい。

ははは、こやつ。
あら、疲れたのなら、

自分の使い魔を足にすればよろしいのではなくて?

そこのうん……いえ、茶色い何かはともかく、

丸っこい方なら貴方も平気でしょうに。

あーダメダメ。

こいつ、俺より非力だからおんぶさせたら

そのまま一緒に転がっちまうよ。

すみません……。
あらあら、所詮は庶民の使い魔ですわね。

それに比べて、私の相棒は力も強くて

私の足にも用心棒にもなりますことよ。


はい、お姉さま。

ご要望とあらば、喜んでお運び致しますわ。

え、嘘でしょ……?
本当ですわ!

何なら証拠をお見せしましょうか?

いやいや、その前に……。

この壺どうやって移動しているの?

勿論、頭から入れた空気を下から噴出して

浮力を得ているのですわ。ホバー移動の原理ですのよ。

ドムかよ……。
あの~……『ほばーいどう』って何でありますか?
え、何って……。

だからこう、空気をバーってして

ブワーって移動している感じかと……。

わかんねーよ……。
話に夢中になっていたミリリたち。

ふと気がつくと、他のグループから遅れ、

ミリリたちは孤立してしまっていた。

あ……。

気づいたら皆いなくなってる!

マジかよ……。

これじゃどっちに行けばいいのかわからねーな。

ああ、もう!

下らない話をしているからこんな事になるのですわ!

全く、これだから庶民は!

キョロキョロと辺りを見回す3人。

そんな3人の下に、近づいてくる2つの影があった。

へいへーい。

どうしたのお嬢さん達

迷子かな?

良かったら俺達と一緒に行かないかい?

案内してあげるよ。

あら、本当ですの?

庶民にしては気が利くではありませんか。

バカかお前。

いや、本当にバカかお前。

ベッタベタのナンパじゃねーか。

バカかお前。

お、良く見たらその制服、カラフル女子高校のものじゃん!

ヒュー♪

やっぱり女子高生かよ。

俺達ついてるぅ~。


あの、『なんぱ』とは何のことでありますか?
まー、簡単に言えば俺達を手篭めにしようと

企んでいるって事だ。

なるほど、つまりライナ様に

危害を加えようとしてるわけですね。

わかりました、奴等を八つ裂きにしてやります。

(何この子、怖い)
おうおう、テメーら!

ナンパならよそでやりな!

……ねえ兄貴。

俺の目と耳、正常ですかね?

気が合うな……俺もそう思っていたところだ。

今なんかうんこが動いて喋ったような……。

安心しろ、お前らの目は正常だ。
しつこくナンパするってんなら、

いっちょ、オイラが相手になってやるぜ!

もう面倒だから殺っちゃいましょうジェノ様。

悪の芽は早い内に焼き払っておきましょう。

……オ。
オバケー!!
ジェノの姿に驚いた男たちは、

慌てて林の中へと消えていった。

ふっふっふ。

さすが我がサーヴァント。

邪悪なる者達をその眼力だけで追い払うとはな!

まかせておけって。

こんくらい、朝飯前ってもんよ!

眼力関係ねーだろ。

お前の相棒って本当にある意味最強だな。

ち、逃げやがった。

今度会った時はバラバラに刻んでくれよう。

私にはそのちっこい方がよっぽど邪悪に思えますわ。

っていうか怖……。

……あれ?

そういえばお前の相棒は?


え、ローズマリーならここに……。

あれ、いない。

あの壺のお嬢ちゃんなら、疲れてるみたいだったから、

オイラがおんぶしてやってるぜ!

ウフフ……心地ヨイ背中ダワ……。
うぉおおおお~~~い!!!

ローズマリィィイイイイー!!!

囚人のトイレみたいになってら……。
ああ、ついに犠牲者が……。
ローズマリー、ジェノの瘴気に染まる。
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登場人物紹介

ミリリ・アルベール


15歳。

中ニ病ぎみな女の子。

よくわからない事を呟いてカッコつけているが、

事あるごとに素の口調に戻ってしまう。

また、友達と一緒の時も素の口調であることが多く

中ニ病に入門したてと言ったところ。

胸が小さく、そこを突っ込まれると怒る。

幼い頃、猫の集団に襲われたことがあり、猫は大の苦手。

見かけるとトラウマが蘇ってヘタレる。

ジェノ・サインダー

『我が操るは、混沌から現れた強大な悪夢』

ミリリの相棒である魔物。

形容しがたい形と色と感触をしている。

強大な悪夢、というのはあながち間違いではない。

すし屋の大将で、歴戦の戦士という

よくわからない経歴を持っている。

ネオン・ライナーン


15歳。お金持ちのお嬢様。

事あるごとにミリリに嫌味を言ってくるミリリのライバル的存在。

……と本人は思っているがミリリには影が薄いと思われており、

その存在を中々覚えてもらえない。


自分の相棒は世界一の魔物と思い込んでおり、

色々な生徒に自分の相棒を自慢して周っている。

生徒達からは『何言ってんだこいつ』という目で見られているが、

本人はそのことに気づいていない、ある意味幸せな子。

金持ちの癖に頭が悪い。

ローズマリー


ネオンの使い魔。♀。

顔に合わない口調で喋る壺。

壺なので割れると絶命するが、

破片を集めると生き返ることができる。

ライナ・バーバレン


ミリリの友達。

中学生の時から一緒で仲が良い。

男のようなガサツな言葉遣いをして、

下品な言葉も平気で口にする残念な女の子。

めんどくさいことが大嫌いで、

自分の使い魔の名前すらも適当につけてしまった。

やることなすこと大体適当。

マンマルー


ライナの使い魔。

ライナに絶対的な忠誠を誓っている。

基本的に温厚な性格だが、ライナを侮辱する者や

攻撃する者には口調が荒くなり容赦がなくなる。

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