第一話『茶色い何かが飛び出した!』

文字数 1,682文字

ここは魔物使いを育成するカラフル女子高校。

この日は、一年生が入学してから丁度一ヶ月の時が過ぎており、

使い魔となる魔物を召喚する儀式を行う日だった。

はい、それでは次はミリリさんの番ですよー。
フッフッフッ……ついにこの刻が来たか。

我がサーヴァントとなる魔物が現れるこの刻が……。

彼女はミリリ・アルベール。15歳。

中ニ病が若干発症しているごく普通の女の子。

小さな頃から魔物使いに憧れていた彼女は、この日を指折り数えて待ちわびていた。

さあ、我が元に現れるのだ!

強大にして悪夢!闇を司る混沌の覇王よ!

今、邪悪なるオーラを纏いてこの地上に光臨せよ!

ミリリが召喚の儀式を始めるや否や、

彼女の傍に光の柱が延びる。

目の前に落雷が発生したかの如く、まばゆい光が一面に広がり、その魔物は現れた。

あースッキリしたぜ!

さーて、手を洗うか……ありゃ?

その魔物は茶色の戦士。

とぐろを巻いた一等身の体は独特の風格を醸し出していた。

……おう?
何だこりゃ?

一体ここはどこだ?

確かさっきまでオイラは便所にいたはずだが……。

どうやらこの子がミリリさんの相棒になる魔物のようですねぇ。


え?
はい、それではどんどん行きましょう~。

次は……。

あの、ちょっと待ってください。
あら、どうかしましたか~?
いや、あの、どうしたもこうしたも……。

先生の目は正常でしょうか?

眼鏡のおかげで視力は2.0あります。
脳みそは正常でしょうか?
IQは260あります。

What is this?

ミリリは茶色い物体を指差す。
es tu amigo

(あなたの友達です)

アレが?私の?相棒で?友達?
ミリリは再び茶色い物体を指さす。
おいおい、お嬢ちゃん。

オイラを指差してアレたぁ、随分と失礼じゃねえか。

はい~。その子が貴方の相棒となる魔物ですよぉ~。

その証である刻印もきちんと背中についていますからねぇ~。

えぇ……。
はい、では次の……。
先生、タンマ!

もう一度待ったのチャンスを!


本当?マジ?絶対?確実?事実?現実?

そうですよぉ~?

ミリリさん、体調でも悪いのですか?

腹でも下したのか?

それならさっさと便所に行ったほうがいいぜ!

トイレが使用中だったら大ピンチだからな!

うんちです。

あららぁ~、本当にお腹を下したのですか?

それは大変です!すぐにお手洗いに行ってください!

いや、そうじゃなくて……。

Esto es caca.

ミリリは三度茶色い物体を指差す。
ダメですよミリリさん。

そんな下品な言葉を何度も使ってはいけませんよ~?

私だって使いたくねーよ……。

どう見てもこいつがうんこだからうんこだって言ってんだよ……。

もう~!ミリリさん!
そこのねーちゃんの言うとおりだぜ!

女の子はもっと綺麗な言葉をつかわねーとな!

キミは鏡のない世界から来たフレンズかな?

後で見せてあげるから、それで自分の姿を確認してね。お願い。

とにかく、これから自分の相棒となる子に

下品な言葉を投げつけてはいけませんよ!

では、次……。

いや、待って!

何回目かわからないけど待って!

先生、これを相棒にした私の学園生活を少し想像してみてください!

       ?
ハテナじゃねーよ!

うんこを相棒にした学園生活ってありえないでしょ!

しかも私、女の子ですよ!?

何があったか知らねーが、授業の妨害はよくないぜお嬢ちゃん。

貴方はちょっと引っ込んでて!うんこだけに!

あら、お上手……おっと。

もう!相棒にそんなことを言ったら『めっ!』です!

はい、言った!

今言った!

お上手って言った!

うんこだってわかってんじゃねーか先生!!

何のことだかわかりません。
とにかくやり直しさせてください。

わんもあぷりーず。

だめです。

あああああああああああ!!

ふああああああああああああああ!!

あああああああああんあああああああああ!!

なんか良くわからねーが、

オイラはお嬢ちゃんの使い魔になったみてーだな。

ま、そう気を落すな。人生、山あり谷ありなんだぜ!

あたしの学園生活がぁぁぁああああ!!
こうしてミリリは自分の相棒となる魔物を召喚した。

ミリリの目から大量の涙が溢れ出ており、

それは、クラス全員の召喚の時が終わるまで続いたのであった。


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登場人物紹介

ミリリ・アルベール


15歳。

中ニ病ぎみな女の子。

よくわからない事を呟いてカッコつけているが、

事あるごとに素の口調に戻ってしまう。

また、友達と一緒の時も素の口調であることが多く

中ニ病に入門したてと言ったところ。

胸が小さく、そこを突っ込まれると怒る。

幼い頃、猫の集団に襲われたことがあり、猫は大の苦手。

見かけるとトラウマが蘇ってヘタレる。

ジェノ・サインダー

『我が操るは、混沌から現れた強大な悪夢』

ミリリの相棒である魔物。

形容しがたい形と色と感触をしている。

強大な悪夢、というのはあながち間違いではない。

すし屋の大将で、歴戦の戦士という

よくわからない経歴を持っている。

ネオン・ライナーン


15歳。お金持ちのお嬢様。

事あるごとにミリリに嫌味を言ってくるミリリのライバル的存在。

……と本人は思っているがミリリには影が薄いと思われており、

その存在を中々覚えてもらえない。


自分の相棒は世界一の魔物と思い込んでおり、

色々な生徒に自分の相棒を自慢して周っている。

生徒達からは『何言ってんだこいつ』という目で見られているが、

本人はそのことに気づいていない、ある意味幸せな子。

金持ちの癖に頭が悪い。

ローズマリー


ネオンの使い魔。♀。

顔に合わない口調で喋る壺。

壺なので割れると絶命するが、

破片を集めると生き返ることができる。

ライナ・バーバレン


ミリリの友達。

中学生の時から一緒で仲が良い。

男のようなガサツな言葉遣いをして、

下品な言葉も平気で口にする残念な女の子。

めんどくさいことが大嫌いで、

自分の使い魔の名前すらも適当につけてしまった。

やることなすこと大体適当。

マンマルー


ライナの使い魔。

ライナに絶対的な忠誠を誓っている。

基本的に温厚な性格だが、ライナを侮辱する者や

攻撃する者には口調が荒くなり容赦がなくなる。

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