第十一話『ボールと悪魔と菌類と』

文字数 1,648文字

ベニベニに直撃したボールは、床にバウンドする前に

ジェノによってキャッチされた。

よって、ベニベニのアウトは免除される。

ちっ、取られたか。

アシストキャッチはセーフになるルールだったな。

ねえ、ベニベニ。

何でよりによって奴がいる方にボールを弾いたの?

んなことまで考えてる余裕あるわけねーだろ!!

その前に俺の無事の確認は!?

あと一歩で川を渡る所だったっすよ!

ていか何してくれちゃってんすかアンタ!悪魔か!!

うるせえ、出荷するぞ菌類。
ひどい。
よーし、スポーツだからって手加減はしねーぜ!

オイラの全力投球をくらえ!

ジェノは相手に向かってボールを全力で投げた。

相手チームの殆どは一目散にボールから逃げ出した。

あ、おいテメーら!

何で逃げてんだ!ちゃんと正面から受け止めろ!

無理無理!絶対無理!
あのボールは触れないって!

核兵器に相当するって!

ボールが外野に転がった!

頼むぞ!

……。
……。
え、ちょ、何してるの外野。

早くボールとってよ。

あ!

私、手を怪我してて無理みたい!

だからライナさんおねが~い。

貴方マジ後でひっぱたく。
お姉さま、ここは私にお任せを!
ローズマリーは、

外野の後方へ転がったボールを持ち上げ、ネオンに渡した。



ローズマリィィイイイイー!!

もう、本当に貴方はもう、ぁぁぁああああ!

コンチクショウ!

ネオンは泣きながら敵に向かってボールを投げた。
へ、なんだそのヘナチョコボールは。


バーバンは、余裕の表情でボールを受けとめる。

うわっ、何の躊躇もなしに受け止めた!?

私でも避けるのに。すごい。

いや、お前は受け止めてやれよ……。
さて、反撃といこうじゃねえか!

オラッ、くらいやがれ!

マリアは、自分が狙われている事を確認すると

ベニベニを前方に押し出して盾にした。

ぎょえっ!
任せろ!
ジェノ、アシストキャッチでベニベニを援護。

そのまま敵へボールを投げつける。

へっ!

中々の威力だが、狙いがあまいぜ!

それをバーバンが受け止め、投げ返す。
プロテクション。
またあああああああああ!
マリアがベニベニを盾にする。

ボールはベニベニに直撃。

ベニベニをアウトにゃさせないぜ!

そして……くらいやがれ!

ジェノが弾かれたボールをキャッチして投げ返す。
踏み込みが足りぬわ。
それをダークネスが受け止める。

さあ、いくぞ。


 アビス・ボール

闇輿飛球!!

そして再びダークネスによるアビス・ボールが発動。
げ、やばい。

プロテクション。

待って!

皆、ちょっと待って!!

マリアは、前と同じ方法でベニベニを蹴り飛ばすことで、

アビス・ボールを相殺する。そしてボールが弾かれ―

まったく、ベニベニの根性には感服するぜ!

援護はオイラに任せな!お前をアウトにゃさせねーぜ!

ジェノのアシストキャッチが炸裂する。
違うのぉおおおおお!

全然違うのぉおおおおおおおおお!

僕、根性なんて全然ないのぉおおおお!

そして、ジェノが投げ返したボールは、

ダークネスがしっかりと受け止める。

双方、決まり手のない状態になっていた。


さすが決勝戦ですぅ。

白熱した試合展開になってきましたね!

審判さぁぁぁああああん!待って!ちょっと待って!

僕アウトでいいから!アウトでいいから外野に行かせてぇ!


ダメです。

ボールがこぼれる前に、ジェノちゃんがしっかりと掴んでいるので

アウトにはなりませんよぉ~。


じゃあせめて僕の隣にいる悪魔を退場させてぇ!

この悪魔、僕を何回も蹴ってるのぉおおお!

立派なファールです!反則行為ですぅううう!

うるせえ、栽培するぞ菌類。

えーっと……。

『味方同士の接触の場合、故意か否か判断できないため、

 原則として退場などは取らない事とする』

……と、ルールブックには書かれているので退場はなしですぅ。

あの、どう見ても故意に蹴ってると思うのですが……。
おい、試合再開していいか?


らめぇぇえええ!ダメなのぉおおおお!

このままじゃ僕、ナメコになっちゃうのぉおおおお!

うるせえ、攻撃がくるから。

はよ盾になれ菌類。おらっ。

お前、ちゃんと血が通ってる……?
……あれ?

あたし、ひょっとして空気……?

白熱したバトルはまだ続く。
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登場人物紹介

ミリリ・アルベール


15歳。

中ニ病ぎみな女の子。

よくわからない事を呟いてカッコつけているが、

事あるごとに素の口調に戻ってしまう。

また、友達と一緒の時も素の口調であることが多く

中ニ病に入門したてと言ったところ。

胸が小さく、そこを突っ込まれると怒る。

幼い頃、猫の集団に襲われたことがあり、猫は大の苦手。

見かけるとトラウマが蘇ってヘタレる。

ジェノ・サインダー

『我が操るは、混沌から現れた強大な悪夢』

ミリリの相棒である魔物。

形容しがたい形と色と感触をしている。

強大な悪夢、というのはあながち間違いではない。

すし屋の大将で、歴戦の戦士という

よくわからない経歴を持っている。

ネオン・ライナーン


15歳。お金持ちのお嬢様。

事あるごとにミリリに嫌味を言ってくるミリリのライバル的存在。

……と本人は思っているがミリリには影が薄いと思われており、

その存在を中々覚えてもらえない。


自分の相棒は世界一の魔物と思い込んでおり、

色々な生徒に自分の相棒を自慢して周っている。

生徒達からは『何言ってんだこいつ』という目で見られているが、

本人はそのことに気づいていない、ある意味幸せな子。

金持ちの癖に頭が悪い。

ローズマリー


ネオンの使い魔。♀。

顔に合わない口調で喋る壺。

壺なので割れると絶命するが、

破片を集めると生き返ることができる。

ライナ・バーバレン


ミリリの友達。

中学生の時から一緒で仲が良い。

男のようなガサツな言葉遣いをして、

下品な言葉も平気で口にする残念な女の子。

めんどくさいことが大嫌いで、

自分の使い魔の名前すらも適当につけてしまった。

やることなすこと大体適当。

マンマルー


ライナの使い魔。

ライナに絶対的な忠誠を誓っている。

基本的に温厚な性格だが、ライナを侮辱する者や

攻撃する者には口調が荒くなり容赦がなくなる。

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