第十話『アビス・ボール』

文字数 1,695文字

球技大会、ドッジボール部門。

ついに決勝戦が開始された。

やっとまともな試合ができる……。
ボールの支配権は我らが取ったぞ!

最初の狙いはただ一人!

ミリリはライナに狙いをつけてボールを投げた。
うわ、あぶね!

おい、ミリリ!なんで俺を狙うんだよ!

適当にボールにぶつかって外野で横になってそうだし……。
いくら俺でもそこまでしねーよ。

一回戦目で顰蹙を受けたし。

つまり一回はやってるんじゃないですの。

オラッシャァー!!

外れたボールは外野にいたネオンの手に渡り、

ネオンはそのままボールをライナに向けて投げつける。

あいた!

あー、っべーわ。これアウトだわー。

今のは避けられねーわ。

お前今、わざとぶつからなかった?
ははは、そんなまさか。

それじゃ、マンマルー、後は頼んだぜ。

ああ、我が主が外野に行ってしまいました……。
やった。まずは一人!
その後、もう一人にボールをぶつけた後、

ボールの支配権が交代する。

攻守変更となりミリリ達はボールを投げられる側となる。

あ"あ"あ"あ"あ"お"お"う"お"う"お"う"……!
ついにダークネスにボールが渡っちまったようだな。

言っておくがこいつの必殺シュートは殺人級の威力だ。

死ぬんじゃねーぞ。

足が生まれたての小鹿だ……。
よわそう。
あ"あ"あ"あ"あ"お"お"う"お"う"……。


 アビス・ボール

闇輿飛球!!

!?
ダークネスは必殺技の名前を叫びながら

ミリリの横にいた青髪のチームメイトに

闇のオーラが漂うボールを投げつけた。

ぽぎゃあああああ~!!
青髪のチームメイトはきりもみ回転しながら

コート外まで吹っ飛ばされ、そのまま床に突っ伏した。

死ぬがよい。
強いじゃねーか!

なんだこいつ!?

ハーッハッハ!

これがダークネスの必殺技、アビス・ボールだ。

体内の暗黒闘気をボールに込めて敵に投げつけ、

場外まで吹っ飛ばすことができる。


えぇ……。

ていうか場外まで吹き飛ばす必要性なくない?

あ?

必殺シュートつったら、相手を吹っ飛ばすもんだろ?

サッカーのアニメや漫画だってやってるじゃねーか。

次はお前だ……!
ダークネスは手を震わせながら。ネオンを指した。
……えっ?

えっ。えっ。私?

私は外野ですけど……。


何言ってんだ。

元外はチームの内野が一人アウトになったら、

入れ替わりで内野に入るルールだろ。

あ……。

今までずっと不戦勝だったから忘れてましたわ……。

あれ?私、死んだ?

ご冥福をお祈りします。

ていうかあいつ、喋れるじゃねーか。

さあ、いくぞ……。


アビス・ボール

闇輿飛球!!

ひぃぃいい~!

せめて左手あたりに当ってぇ~!

お姉さま、危ない!
ロ、ローズマリー!?
その瞬間―

ローズマリーが盾になるようにネオンの前に立ちふさがった。

そして……。

べちあっ!
ぶべらっ!
ローズマリーと共にネオンは場外まで吹っ飛ばされた。

そりゃ体の小さい奴が盾になったところで、

ああなるのがオチだよね……。

二人吹っ飛んだか……。

審判、この場合ってどうなるんだ?

えーっと……。

はい、ダブルアウト方式をとっているので

二人ともアウトになりますぅ。

つっかえねぇ……。
ひっでえ言い草だな……。

事実だけど。

あっばばばばばば……。
ウフフ……川ガ見エル……ワ……。

次はそこの茶髪だ……!

ゲッ。

ベニベニ、盾になって。

はぁ!?

ちょ、姉さん!そりゃないっすよ!

さっきの見てなかったんすか!?

死ぬって!二人とも死ぬって!

うるせえ。

晩飯抜きにするぞ。

オニかこいつは……。
死ぬが良い。



アビス・ボール

闇輿飛球!!

プロテクション。
ダークネスがアビス・ボールを放つと同時に

マリアは自分の相棒を思いっきり前方に蹴り飛ばした。

ぎょええええええぇぇぇ~!
ベニベニと呼ばれたマリアの相棒にアビスボールが直撃。

しかしベニベニは前方に吹っ飛ばされていため、威力が相殺。

結果、ベニベニは場外まで吹っ飛ばされず

内野ギリギリのラインで止まる。

そしてボールは勢いを保ったまま、上空へ弾かれた。

まずい、ボールが弾かれた!

やった!

これでボールを拾えれば今度はこっちのボールになる!

ボールを拾おうと、ミリリが手を伸ばしたその瞬間―
へっ、待たせたな!

ボールはオイラがいただいたぜ!

ついにジェノの手にボールが渡った。
……oh。
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登場人物紹介

ミリリ・アルベール


15歳。

中ニ病ぎみな女の子。

よくわからない事を呟いてカッコつけているが、

事あるごとに素の口調に戻ってしまう。

また、友達と一緒の時も素の口調であることが多く

中ニ病に入門したてと言ったところ。

胸が小さく、そこを突っ込まれると怒る。

幼い頃、猫の集団に襲われたことがあり、猫は大の苦手。

見かけるとトラウマが蘇ってヘタレる。

ジェノ・サインダー

『我が操るは、混沌から現れた強大な悪夢』

ミリリの相棒である魔物。

形容しがたい形と色と感触をしている。

強大な悪夢、というのはあながち間違いではない。

すし屋の大将で、歴戦の戦士という

よくわからない経歴を持っている。

ネオン・ライナーン


15歳。お金持ちのお嬢様。

事あるごとにミリリに嫌味を言ってくるミリリのライバル的存在。

……と本人は思っているがミリリには影が薄いと思われており、

その存在を中々覚えてもらえない。


自分の相棒は世界一の魔物と思い込んでおり、

色々な生徒に自分の相棒を自慢して周っている。

生徒達からは『何言ってんだこいつ』という目で見られているが、

本人はそのことに気づいていない、ある意味幸せな子。

金持ちの癖に頭が悪い。

ローズマリー


ネオンの使い魔。♀。

顔に合わない口調で喋る壺。

壺なので割れると絶命するが、

破片を集めると生き返ることができる。

ライナ・バーバレン


ミリリの友達。

中学生の時から一緒で仲が良い。

男のようなガサツな言葉遣いをして、

下品な言葉も平気で口にする残念な女の子。

めんどくさいことが大嫌いで、

自分の使い魔の名前すらも適当につけてしまった。

やることなすこと大体適当。

マンマルー


ライナの使い魔。

ライナに絶対的な忠誠を誓っている。

基本的に温厚な性格だが、ライナを侮辱する者や

攻撃する者には口調が荒くなり容赦がなくなる。

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