第8話

文字数 1,430文字

 第七章 奇声虫の怒り
 
 僕は時々、奇声を発する。両腕を上げて両腕を波のように揺らして、小走りしながら赤黒い奇声を発する。
 そういう僕を見て島津はいつも「先生、山岡君が奇声を発しています!」と、チクったりする。
 でも島津は先生に「島津さん、いちいち報告せんでもよろしい」と怒られたりしている。
 島津は、二学期から転校してきた女子で、僕がみんなから仲間はずれにされている事を知らないと思う。いつも島津は、チクリばかりをする。
 
 島津は、すぐにアホだという事がクラスにバレていた。いつも宿題を忘れ、先生の黒板をノートに書いたりしない。授業中に先生に当てられても「分かりません」としか言わない。テストはいつもゼロ点。僕よりアホだし、そういうアホな女子なのに、僕に対してムカつくほど、嫌がらせばかりをしてくる。
 
 僕と島津は、よく言い合いになっていた。
「おまえ、いつもチクんなや!」
「チクってませーん! 事実を言っているだけや!」
 そういう僕と島津を見たクラスの子達は「おまえら、いつもアホ同士で熱いのー。フーフー」とからかわれたりする。
 僕は全力で「熱ないわボケ。こいつが勝手にチクったりして腹がたっているだけや」と否定をするけれど、聞いてもらえない。島津みたいなアホと恋人のように思われたら、本当にムカつく。でも不思議なのは、島津はいつも否定しないで、そういう同級生達を無視して、大人ぶってエエかっこしいをする。
 
 ずっと毎日、島津からの嫌がらせを受けていると、赤黒い奇声だけではイライラしてばかりで、僕の頭は急性中耳炎になっていた。
 頭の中の急性中耳炎を治すために、僕は運動場の砂の上に寝転がって、赤黒い奇声を発しながら、赤黒く全身をバタバタさせたりしていた。それである程度のイライラは治ったりしていた。
 
 だけど、そうした僕の頭の中にある急性中耳炎の治療を行っている最中に、たまたま運動場に来ていた先生に、島津はまたチクリだした。
「先生、山岡君が地球と喧嘩しています!」
 すると先生は「山岡君、どうして地球と喧嘩するん? 宇宙でも壊したいんか?」と僕を悪者みたいに言った。
「ちゃうねん。島津がいつもチクるから、頭の中が急性中耳炎になって、それの治療をしているだけやのに、また島津がチクるねん! アホがチクるねん!」
 僕は島津が、どれだけ悪いのかということを言い、僕はどれだけムカついているのかを先生に言い続けた。
 それを聞いた先生は「もう島津さんも山岡君のことは、ほっといてあげりよ。頭の中が急性中耳炎になってるねんて」と僕の味方をしてくれた。
「でも先生、ウチは山岡君がいつも意味不明な事ばかりしている事実を言っているだけです。チクってません」
 島津の発言を聞いて先生は「島津さんは、どうして山岡君の事が気になるん? ひょっとしてあれなんか? 山岡君の事が好きなんか?」
「先生、違います。山岡君がウチのことを好きなんやと思います。山岡君はいつも意味不明なことばかりして、ウチの気を引こうとしてはります」
 もう僕は激怒した。
「おい島津、おまえ絶対にしばき倒すからな。覚えとけよ!」
 すると先生は「山岡君。しばき倒すということは、しばいた上に、まだ倒さなあかんねんで。そんなに体力があるんやったら、運動場を十周してきなさい。十周するまで教室に入らんでよろしい」と言って、結局僕は悪者になった。
 僕は怒り狂いたかった。いつか島津には、ギャフンと言わせてやる。絶対に。

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