第6話

文字数 1,539文字

第五章 将来の夢はやっぱり
 
 休み時間や昼休み時間に廊下を歩くと、いつも二名一組で活動している高学年生達の安全委員会が立っていた。
 安全委員会と分かるのは、右腕に緑色のバッチを付けていて、緑色のバッチをつけた高学年生達の言うことは、絶対に聞くようにと先生から言われていたからだ。
 安全委員会の人達は「右側通行守ってー」とか「廊下は走らんといてー」と注意をするし、僕も注意をされた事がある。
 高学年生になったら、そうした安全委員会とか環境委員会とか、何かに所属しないといけないと、先生から教えてもらっていた。僕はそうした高学年生のような緑色のバッチのような、立派な大人になれるんやろか。
 
 そして僕が一番に、大人になる事に対して不安に思ったのは、僕には結婚することが出来るのか。
 いつか女の子とチューが出来るのか。そういう感じの不安やった。
 
 そして今日の三時間目は、国語の時間で作文を書く授業だった。
 黒板に先生は『しょうらいのゆめ』と白いチョークで書いた。そして先生は「作文には将来の夢を書いて、どうしてその夢を叶えたいのかについても書きなさい」と、めんどくさい事を言った。
 するとクラスの男子達は、自分の夢を先生に言ったりした。
「先生、お医者さんになりたいです」とか「先生、電車の運転手になりたいです」とか。僕も何か先生に言わないといけないと思い、先生に夢を話した。
「先生、僕はウルトラマンになりたいです」
 すると先生は「山岡君は、百回死んでもヒーローにはなれないから、あきらめ」と僕にはヒーローは無理だと言った。もっと何か本物っぽいのが必要だと思って「先生、僕は総理大臣になりたいです」と先生に言った。
 すると先生は「山岡君が総理大臣になったら、宇宙規模の問題になるから、それだけはやめとき」と、赤い声で危ないと言っていた。
 でも宇宙規模の問題って、どういうことなんやろか。
「先生、宇宙規模の問題って、UFOが地球に来て、宇宙人と戦争になるん?」
 すると先生は「山岡君、それは地球上の問題。宇宙規模の問題は、宇宙が無くなるぐらいの問題。関係のない宇宙人が、山岡君のせいで死んでしまうねんで。だから、総理大臣はやめとき」とお葬式みたいな顔で言った。
 僕のせいで宇宙人が死んでしまうのは、可哀想だと思った。そして僕は総理大臣は諦めて、女の子とチューをする将来の夢を作文に書くことにした。

  ※ しょうらいのゆめ
 僕の将来の夢は、女の子とチューをすることです。なんでかって言ったら、僕は前に歯の検査をした時に、虫歯と歯槽膿漏やと偉そうに歯医者さんに言われて、歯磨きをしなさいと保健の先生には悲しく言われて、保健の先生から家にいるお母さんにもチクられて、僕は毎日、地獄のような歯磨きをさせられています。
 女の子とチューをしたら、僕の虫歯と歯槽膿漏は治ると思います。なんでかって言ったら女の子は毎日、歯を磨いているみたいです。きっと女の子のお口は、歯磨き粉だと思います。僕と女の子がチューをしたら、もう二度と歯磨きをしなくていいと思うので、その方が楽です。僕の将来の夢は、女の子とチューをする事です。

 僕は自分の作文を見て、天才だと思った。

 そして作文を出した事を忘れていたある日に、先生から将来の夢作文が返ってきた。
 僕の作文の最後に、先生は赤色の文字で『山岡君、女の子とチューをしたら、相手の女の子に虫歯と歯槽膿漏が移るねんで。山岡君の虫歯と歯槽膿漏が治っても、またその女の子とチューしたら、また山岡君にも虫歯と歯槽膿漏が移るねんよ。だから毎日、歯は磨きよ』と僕の知らない事を書いていた。先生は何でも知っているから、凄いし天才やと思った。僕も先生のような大人になりたいと思った。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み