第3話

文字数 906文字

第二章 お尻を出した子一等賞のように
 
 みんなは僕の秘密を知らないと思う。僕は牛乳の飲み口にある、青紫色のビニールが大好きなことを。
 その青紫色のビニールには、赤色の細長いビニールでクルクルと巻いてあって、その赤色の細長いビニールを丁寧にはずすと、青紫色の綺麗なビニールが手に入る。僕はそれを家に持ち帰って、集めて、一人で眺めるのが大好きだ。
 
 僕は青紫色がとても大好きだ。どこか僕のことを凄く褒めてくれる国には、青紫色のような海があると思った。そして青紫色をいつまでも見ていると、沢山の女の子が僕を褒めてくれて、たくさんチューをしてもらえると思った。

今日の給食にも、いつもと同じように牛乳があった。
 僕の秘密を知らないクラスの男子達の間では、牛乳の早飲み競争が流行っていた。いつも決まって、真下君と岡田君が牛乳早飲み競争の対決をする。
 僕が不思議に思ったのは、その牛乳早飲み競争が早いとは思わなかった。だって、僕が牛乳を飲む方が絶対に早いと思うから。
 
 そして僕は考えた。
 牛乳の早飲み競争で、その二人に勝ったら、僕の仲間はずれは無くなると思った。

 そして僕は、牛乳の早飲み競争が開始される「牛乳早飲み競争に参加したい人、手を挙げて」という男子の声に反応して、「ハイ! ハイハイ!」と手を挙げた。
 だけれど、その男子は「山岡なんてよしてへんから、あっち行って」と言われてしまったけど、みんないつも無視するんやから、僕も無視して、その早飲み競争に勝手に参加した。
「よーい、ドン!」という声の後に、僕は排水溝に落ちる水のように、牛乳を飲み込んだ。
 きっとほんの数秒で飲み込めたと思う。そしていつもの真下君と岡田君が、牛乳を半分ぐらいのところまでしか飲んでいなかったので、僕は勝ったと思い大喜びで、給食を食べている先生の教卓へと走った。
「先生! 牛乳早飲み競争で一位やったで!」と、お尻を出した子一等賞のような喜びを先生に言った。
 すると先生は「山岡君、牛乳を早く飲んだところで、世の中は変わらへんよ」と、残念そうな顔をして僕に言った。
 先生は世の中の厳しさまで、僕に教えてくれた。やっぱり先生は優しいと思った。

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