exist6

文字数 1,067文字

「今日ご家族は来られてますか?ご家族と一緒に先生のお話を聞いて下さい」
検査結果を聞くために病院には来たけど、家族が来ないと伝えられないと言われ
先輩と私は待合室で家族が来るのを待った。
“家族でないと話せない結果って何”“深刻な状態って事”
どうしても明るい気持ちにはなれなかった。
さすがに先輩も落ち着かない様子だった。
先輩のお父さんとお母さん。2人揃って先輩一緒に先生の居る部屋に通された。
私はひとり待つしかなかった。

結果は予想どおり、いや、予想を遥かに超えていた。
人は悲しすぎると、辛すぎると、驚き過ぎると涙が出ない事を私は初めて知った。
先輩は余命3ヶ月と言われた。
“こんなにも元気なのに…”“どうして”
先輩はその日のうちに入院する事になった。
次の日から治療は始まりその後も続けられた。先輩の笑顔は見られなくなった。
私は側に居ることしか出来なかった。
そんな私に先輩は「大丈夫か?ありがとう」と言い残し旅立った。
先輩との最期の別れの日、涙で何も見えないくらい泣いた。
“こんな思いをするくらいならもう恋なんてしない”
いつまでも私の涙は止まらなかった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

正直、辛い思い出が多いですね。
暗くて、険しい道を選んでいるわけではないのです。
でも、これまで歩いて来た道や見てきた景色から多くの思いを心に刻む事が出来たのだと
思っています。
弱さや強さ、人に対する思いや生きると言う事。
だからこそ私は今ある景色にたどり着く事が出来たのです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

それから暫くして私はサークルを辞めた。
講義にもちゃんと出るようになり、講義の合間には食堂にも顔を出すようになっていた。
そこで私は大切な仲間たちに出会った。彼らは私を新しい景色へと導いてくれた。
今を生きるという事、今できる事は今やるという事。
大切な事を私に教えてくれた。
この出会いが私をまた一歩先へ進むきっかけを、勇気をくれた。

「姉やん今日も行こか」
「いつものコースでOK?」
私達は飽きもせず毎日のようにボーリングをしてから居酒屋でご飯という時間を過ごした。
たまにメンバーは増える事はあったけど、いつも居るのは私を含めて5人。
私以外みんな男の子。
なんとも言えないバランスのようでいて本人達はいたって普通だった。
「なんで姉やん男やないんやろな」なんて言われるくらい一緒にいる事が普通だった。
私達は時間の許す限り一緒に今という時間を楽しんだ。

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