exist5

文字数 1,036文字

私たちはそれぞれの進む道を選択する時期を迎えた。
彼と同じ大学に進みたいと思ってはいても学力の差は歴然で、彼の目指す大学には
行けるわけもなく、出来るだけ近くの大学を選んだ。
近いからといっても一緒に居られるわけでもない。
通学の時間さえ違うのだから、今までのように過ごす事も話す事も出来ないだろう。
それでもいいと思った。それでも私は彼の側に居たかった。

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私達は卒業しそれぞれの道を歩み始めた。
大学に行く時間も、帰る時間もそれぞれ違う。
ましてやバイトを始めればもっと時間が合わなくなってすれ違う。
想像していなかったわけじゃないけど、やっぱり私達は別れを選んだ。
そんな寂しさの中、教授に誘われるままサークルのマネージャーを引き受けた。
優しい先輩達に囲まれてそれなりには楽しかった。
でも、教授室に居ることが多くなっていった私にはサークル以外で友達を作る事が
出来なかった。
大学生になっても私は、人見知りの本領を発揮していた。
それでも先輩達は優しく、いつも声を掛けてくれた。
いつのまにか私はひとりの先輩に恋をしていた。
見た目は好みではないし、これと言って一緒にいる時間が長いわけでもない。
でも、その人の優しさに、温かさに私は惹かれていったのだ。
だからと言ってもちろん自分から告白なんてしない。
自分に自信もなければ、振られたその先を考えると怖くて言えない。
付き合う事の幸せな時間も感情も知ったけど、別れた後の辛い思いを知った私は前以上に
臆病になっていたのかもしいれない。
“このままでいい” “一緒に居られればいい”そう思っていた。
そんな時、先輩が体調を崩してしまった。
足に違和感と痛み。
教授に言われた私は先輩と一緒に病院に行く事になった。
検査しても原因は分からず「様子をみましょう」と言われただけだった。
その後も症状は良くならないまま時間だけが過ぎていった。
病院を変え、どれだけの病院へ行っただろう。
それでも原因は分からず、気が付けば先輩は歩くことが出来なくなっていた。
そんな状況の中でも彼は周りの人を気づかい笑顔で「大丈夫」といい続けた。
私はそんな彼を支えたい、側に居たい、その思いは強くなっていくばかりだった。

その日は突然やってきた。
秋の風が心地よい、そんな秋空が広がる天気の良い日だった。
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