花守
文字数 923文字
けれども、
季節の移ろいを感じられるように、と参道の手入れや番を受け継いでいる
雨の多い季節に咲く紫陽花が、濡れて一層鮮やかに青色がさえる
美しく咲いた紫陽花に安堵と満足感を感じていた
「重く暗い雲がたれこめた天気が続く季節。
花は心を明るくしてくれるので、良いですね。」
と1人の女性が声をかけてきた
「貴女は…」
「あぁ、ごめんなさい。
ご挨拶もしないで話しかけてしまって…。」
二人の目と目が合った瞬間
雲の隙間から射した光が雨にキラキラと反射して
咲きこぼれる紫陽花の参道をとても美しく神々しい光景にした。
しばらく、見とれていた彼女が恥ずかしそうに
「こちらの神社の方ですか?」
と尋ねた。
「えぇ…。」
稀に
この時の様に直接会話までする事は珍しく
必要以上の接触は慎もうと心掛けていた。
「でしたら…あの…1つお願いしたいのですが…」
女性は紫陽花を指して言った
「幸運や厄除けのお守りになると聞いたので…この紫陽花をどうかわけてくださいませんか?」
「あぁ…軒先に吊るしておくと良いと言う”おまじない”ですね?
流行っているのですか?」
人間は色々な”おまじない”を考え付くな…と
「
受け取ると女性は慌てて
「も、もちろんです!ありがとうございます。」
と頭を深く下げてお礼を言うと
慌てた様子で参道を歩いて行ってしまった。