縁
文字数 1,683文字
寿命が縮まることを恐れた人間が
身を清める日から なぜか 眠らないで過ごせば良いと解釈し
縁日が出て老若男女がただのお祭り騒ぎをする日になってしまっている。
人間は変わっていく…
人間は自分たちの都合が良いように時代によって解釈を変えていく
とても曖昧ない生き物だ。
それなのに、神様や御先には変わらない事を望む。
神様と人間が交わした約束は
時代が変わっても、
形が変わっても成し遂げられる。
だから神様は簡単には約束は交わさない。
念いが変わる人間との約束は
縁を与える事で便宜を図り
人間自身の絆の強さを見守る。
そこに在ったはずの景色を
思い出している様に言った。
「ある日、ぱったりと彼女は姿を見せなくなったのよね…。
姿がずっと変わらない
しかたないよね…。」
「彼女は来なくなったんじゃないよ、
逢いたくても
しかたないよ。
紫陽花は終わった花が自然に散る事がないので、花を取り去る作業が必要だった。
次の年もきれいに花を咲かせるため
“きれいだな”と思うところに花の位置が来るように剪定していくのが大切だった。
「紫陽花もそろそろ終わりの季節か…」
色褪せてきている紫陽花が混ざっているのを見つけて
そっと触れ剪定鋏をあてた。
風が花を揺らして手に
涙の様に雨粒が伝わる…
その瞬間、
何かを感じた
社の前まで行くと崩れるように跪いた。
そして、息が切れて言葉が上手くでないまま
何度も何度も繰り返し願いを口にした。
「オン コロコロ… シャモンダ ソワカ…
多くは望みません。
彼女の為ではなく…私自身の欲のため…ですが…どうか…どうか…」
何故なら
【多くは望みません…
どうか、ここに来れば必ず…逢えますように。】
それは『花守りの約束』として記され巻物は大切に保管された。
時を超えても
それからというもの
その約束の時が得るのは、
不思議と紫陽花がきれいに咲く季節が多かった。
キラキラと光る木漏れ日のようなお天気雨
道案内をする様な飛び方をするハンミョウの姿を追って、
迷い込んだ
季節の花々が迎えるように咲き誇る
特に 紫陽花が美しく咲いている季節には、縁結びの御利益があり
御縁がある人と巡り逢える…という噂がたった。
人間が作った新しい
またできた。
「噂をまいたのは
「はぁ?!
なんで?」
「いつの世も縁結びっていうおまじないは人間の大好物なのよ。
参拝者がいないと神社が寂れてしまうでしょう?」
「確かにね…
色恋沙汰はどの時代でも尽きないよね。
人間って変わらないものとか、永遠とか好きだよね…
都合よく解釈は変えるくせにな。」
人間が作った御祭の縁日を横目でみながら
風に揺れる紫陽花の花のなかに消えた。
― 第二章 絆とは縁と念いで出来ている? ― 完