第13話 囲炉裏ばた

文字数 636文字

いろりばた

 色々な料理、グルメが紹介される現代日本。日本料理の和食だけでなく、中華料理に韓国料理、カレーに代表されるインド料理やハンバーガーなどのアメリカ料理、フランス、イタリアと喧しい限りだ。

 都会のような古今東西の料理が渦巻く処をちょっと離れて、都心から離れた秩父のような山里に行ってみると、囲炉裏端で榾木がパチリッと鳴く光景に出くわす。

 囲炉裏端に刺さっているのは、地元で獲れた鮎の塩焼きだ。これを地元の山で採れた山菜の塩漬けとともにいただく。なんとも滋味であり、この精神的な安定感は何であろうか。

 山宿の 鮎の塩焼き 囲炉裏端

 このような山里では、そう遠くない昔の昭和四十年代頃まで、年用意は囲炉裏端で夜なべして行っていた。囲炉裏端でうつらうつらしているうち、外から射し込む朝陽の光で目覚めたという話もよく聴いた。山里の寒風が轟く中、内を温める囲炉裏端は確かな人の拠り所だったに違いない。

 囲炉裏端 セーター編んで 年用意

りんごの里として有名な青森では、しばれる雪の夜に祖母や祖父が囲炉裏端に居て、孫たちに昔話や民間伝承を口伝えに聴かせたというが、現代のセントラルヒーティングの家屋ではそれもならない。一箇所に集まる意味がないからだ。

 風の子が 頬紅くする 囲炉裏端

ばたばたとした都会の喧騒を離れて、郊外の山里で囲炉裏端に座ると何かしら落ち着くのは、中の暖かさとは裏腹に外で吹雪く寒風のせいなのかもしれない。

 ビュービューと 寒風聴こえる 囲炉裏端
 

 

 
 



 

 
 
 
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