第5話 蕎麦

文字数 623文字

 蕎麦

〝しっぼくそばで しっぽり濡れて

 あたしゃ あんたのそばがいい

 待てど 暮らせど こない日にゃ

 あたしゃ あんたを 花で巻く〝

 蕎麦を都々逸で唄えばこんな所でしょうか。

 私は、生まれも育ちも東京なので地元の味といったら、まず蕎麦に思い当たります。
 
 この蕎麦屋、東京では商店街に最低一軒はあり、カップ蕎麦全盛の令和にあっても潰れぬ強さを持っています。
 
 その起源は、江戸時代は八代将軍吉宗の時代まで遡るというのだから恐れ入る、悠に二百年以上の伝統があります。
 
 三代将軍家光の頃から始めた参勤交代で、諸藩は江戸屋敷を保たざるを得なくなった。あるいは、江戸城の改修工事で公共工事が拡大して全国から独身の働き手が集まって来た。

 そこで、この独身男の胃袋を容易く満たすために屋台で蕎麦が売られた。江戸時代当時、二八蕎麦が十六文だから、ざっと現代貨幣で三百円チョット、現代と似ているではありませんか。

 それで腹を満たした独身男は、今度は下町(江戸南部の千住や本所など)の木賃宿に泊まって秘蔵の春画を密かに見てはドキドキしていた。

 まるで漫画喫茶を根城にAVを見ている非常勤ではありませんか。

 「それじゃあよ、江戸時代の蕎麦はファストフードってことになるぜ」
 下町の人間ならそう言い出すかもしれません。

 否、駅蕎麦で出される蕎麦は、○ックで待たされるハンバーガーよりも早く出てきます。

 世界一早く出る、最速のファステストフードではないでしょうか。
 

 
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