Phase 01 知らなくても良いこと

文字数 15,365文字

 あるバンドが全盛期の時に、「冷静に考えると『無限大のようにする』って英文法的におかしくないっすか?」と口にしたのは昔の友人だったか。僕だってそのバンドは好きだし、今でもサブスクで時折アルバムを聴くことがある。しかし、曲を聴く度にどうしても友人の言葉が頭を過ぎって仕方がない。確かに、英文法において「Do」と「As」で「~として行う」とか「~のようにする」となるのは分かる。そして、「Infinity」は一般的に日本語で「無限大」と訳すことが多い。これも分かる。ただ、それで――「無限大のようにする」となるのは確かに滑稽な話である。まあ、日本のロックバンドの名前なんて、所詮外国人から見れば適当でかつ酷いネーミングなのは分かるのだけれど。
 そういえば、あの頃の僕は――世間知らずで未熟だった。だからこそ、「知らなくても良いこと」を知る術はなかったのか。しかし、スマホが普及した結果――「知らなくても良いこと」を容易く知ってしまう世の中になってしまった。例えば、「とある芸能事務所はお偉方が所属タレントに対して性的暴行をしていた」とか、「総理大臣が裏金でパーティーを行っていた」とか――スマホやSNSが普及していない時代に「暗黙の了解」として世間体に封印されていたことを、安易に知ってしまうことが多い。その結果、僕は世間において「生きづらい人間」ということになってしまった。
 確かに、僕は――昔から「周りから半歩ズレている」と指摘されていた。僕は周りに対して歩調を合わせようとするのだけれど――上手く行かない。なぜ、そんな簡単なことが上手く行かないのかというと――「発達障害という精神疾患を患っているから」という理由だった。
 そもそも、僕が発達障害を患っていることを知っているのは親と数少ない友人しかいない。もちろん、その友人の中には――「『無限大のようにする』というバンド名が英文法的におかしい」とツッコんだ友人も含まれている。
 当然、発達障害であると分かってから――世間は僕に冷たくなった。精神科の先生から「発達障害です」という診断結果を言い渡されたのが14歳の頃。そして、進学校への進学を目指していた僕は――当時の担任から「進学校を諦めて養護学校へ行ってくれ」と言われてしまった。それは、僕の人生がドン底へと突き落とされた瞬間だった。仕方がないので、僕は養護学校へと進学した。養護学校へ進学するということは――「大学への進学は諦めろ」ということと同義語だった。当時、京都にある立志社大学という大学への進学を目指していた僕は――その現実に絶望して自らの手で命を絶とうと思った。――自傷行為で命を絶とうとする方が間違っているのか。
 そして、養護学校を卒業してから――僕は引きこもりの日々を送っていた。どうせ、僕は「世間に出るべき人間じゃない」のだから。
 もしも、自分が発達障害なんかじゃなかったら、この人生はどうなっていたのだろうか? 普通に立志社大学に進学して、普通に立志社大学を卒業して、そして――それなりの企業に就職出来ていたのか。しかし、僕の世代は「東日本大震災」という足枷で就職難だった時期だ。――もっとも、東日本大震災が無くてもリーマン・ショックをきっかけとした不景気で近年稀に見る就職難だったのは事実なのだけれど。
 そんな僕に対して転機が訪れたのは――引きこもり生活を送ってから8年ぐらい経った頃だったか。事態を重く見たケースワーカーが「神戸で就職しませんか?」と提案してきたのだ。当然、僕はそれを拒否しようと思ったが――こんな田舎町に住むぐらいだったら、いっそ神戸に出た方がマシか。
 結局、色々あって僕は芦屋(あしや)に生活拠点を置くことにした。田舎町である豊岡(とよおか)と比べると――神戸や芦屋は「こんな僕でも容易く受け入れてくれるんだ」と思った。しかし、数年前に未知の疫病が流行ってから、僕は再び引きこもりになった。理由は、就職が内定していた企業から内定を取り消されてしまったからだ。後で分かったことだが、疫病によって――その会社が倒産したのだ。
 そして、内定を取り消された日に――僕は阪急芦屋川駅のホームから飛び降りた。というか、わざと線路に転落した。こんな僕なんか、電車に()かれて死んだ方がいいのだろう。そう思ったのだ。でも、僕はそれで死ねなかった。というよりも――その場にいた誰かが非常停止ボタンを押したことによって、僕は一命を取り留めてしまったのだ。――こんなこと、望んでいなかったのに。誰が、こんな僕に対して「非常停止ボタン」という無駄な延命装置(デバイス)を押したのだろうか?
 あの転落事故の結果――僕は「全治半日」と診断された。要するに、半日間の入院を余儀なくされたのだ。それで何かが変わるかと思えばそうでもなく、むしろ看護師から「駅のホームは命を絶つ場所じゃない」とキツく言われてしまった。
 それから、僕は就活が億劫(おっくう)になった。どうせ、僕を雇ってくれる会社なんてない。――最近跋扈(ばっこ)している「闇バイト」ですら、僕を選考から落とすだろう。
 こんな僕だけど――パソコンの扱いは他の人間よりも慣れていた。まだ「プログラマー」という職業が一般的じゃなかった頃からプログラマーを目指していたから当然だろうか。――あの進路相談のせいで、僕はその夢を断たれてしまったのだけれど。
 ――パソコンを使う仕事なら何でもいい。僕はそう思って、「ジョン・ドゥ」という名義で小説を書き始めた。一見すると、ジョン・ドゥという名前の響きはかっこいいのだが、要するに――「名無しの権兵衛」である。
 そもそも、ジョン・ドゥの「ジョン」は「John」と綴り、そして――「ドゥ」は「Doe」と綴る。ジョン自体はありふれた外国人の男性名であり、日本人で言うところの「太郎」と言っても過言ではない。しかし、アメリカやイギリスにおいて「ドゥ」という名字は存在しない。――架空の名字なら、何をやっても許されると思った。
 ネット上でジョン・ドゥを演じるのは気楽だった。どんなにかっこよく着飾っても、所詮は「名無しの権兵衛」だから当然だろうか。僕のしょうもない作品に対する読者やファンも、一定数付いていた。しかし、そのファンの中に――気になる人物がいた。
 自分のことを「ウェストリバー」と名乗る人物。ウェストリバーは恐らく「西川」という名字を英語で直訳したモノだろう。――僕の中で「西川」という名字の友人といえば、矢張り「西川沙織(にしかわさおり)」だろうか。要するに、バンドの名前に対して「日本語で『無限大のようにする』」と指摘した張本人である。
 僕は、思い切って「ウェストリバー」という人物に対してメッセージを送信した。
 ――いつも僕の作品を読んでくれてありがとうございます。
 ――突然ですが、あなたは西川沙織さんですよね?
 ――僕はネット上でジョン・ドゥと名乗っていますが、本名は卯月礼華(うづきあやか)です。覚えていませんか?
 ――まあ、同級生だったのは中学生の頃だったから、覚えていないと思いますけど。
 ――メッセージに対する返事、お待ちしております。
 これでいいか。僕はコミュ障だから、そういうモノが苦手である。――だから、就活でも面接で落とされてしまうのか。しかし、自分で使っているダイナブックの前だと、そんなことはお構いなしにメッセージを紡ぎ出していく。矢張り、使い慣れているパソコンだからこそ――思っている事が書けるのか。
 メッセージに対する返事は、僕が想定しているよりも早く来た。
 ――えっ、ウッキーなの? マジ?
 ――文章を読んでいて「ウッキーっぽい」と思ってたけど、本当にウッキーが書いているとは思わなかったわ。
 ――そうだ、どこかで会わない? ウッキーが住んでいる場所次第だけど。ちなみに、私は吹田(すいた)に住んでいるわよ。
 吹田か。――サッカークラブの古豪であるガッツ大阪の本拠地というイメージしか持っていないな。僕はどういう訳か地元のビクトリア神戸じゃなくて神奈川県に拠点を置く川崎フロンティアーレを応援しているからどうでもいいのだけれど。
 とりあえず、僕は西川沙織に対して返事を送った。
 ――僕なら、芦屋に住んでいる。
 ――吹田は少し遠いな。ここは一つ、中間地点の梅田で手を打たないか?
 当然、返事は送られてくる。
 ――芦屋なの? セレブじゃん?
 ――それはともかく、梅田ならちょうど良いわね。その手に乗るよ。
 僕は「ありがとう」というメッセージを送って、チャットを終えることにした。それにしても、西川沙織か。もしも、彼女がいなかったら――僕はとっくの昔に死んでいたかもしれない。それぐらいの仲だったのだ。
 そもそも、彼女との付き合いは――中学1年生の頃に遡る。陰キャだった僕は、一番後ろの窓際の席でつまらなさそうに授業を受けていた。その時に、たまたま隣の席にいたのが、紛れもなく彼女だった。彼女は休み時間の度に講談社ノベルス版の『魍魎の匣』を読んでいた。――京極夏彦を読んでいるとなると、いちファンとして見過ごせない。
 5月も半ばに差し掛かった休み時間、僕は思い切って彼女に声をかけた。
「――京極夏彦、好きなのか?」
「えっ、好きだけど――それがどうしたの?」
「その分厚いノベルスは、紛れもなく京極夏彦のモノだろう?」
「その通りよ。――そういえば、隣の席なのに名前聞いてなかったわね。名札に『卯月』って書いてあったけど、下の名前はなんて言うの?」
「礼華だ」
「なるほどねぇ。――ホントに女の子?」
「ああ、生物学上では一応女性ということになっているらしい。――僕は気に入っていないけど」
「所謂『性同一性障害』とか、そういうモノ?」
「いや、違う。飽くまでも恋愛対象が男性であることは自覚している」
「へぇ。――面白いじゃん。友達になろうよ」
「こんな僕を友達にしていいのか?」
「いいのよ。――正直言って、今のままじゃ寂しいでしょ?」
 それから、僕は西川沙織と友人になった。――中学校に進学して初めての友人だったのは、言うまでもない。そんな彼女とは、中学2年生の頃まで同級生だった。しかし――3年生だけは別々のクラスになってしまった。理由は、彼女が特進クラスに進級せざるを得なくなったからだった。――どうせ、僕はスクールカーストでも下の方の人間だ。その時点で僕の青春にピリオドが打たれてしまったのは当然だろう。
 そんな彼女が、僕の小説を読んでいた? どういうことなんだろうか。そんなことを考えながら、僕は阪急で梅田へと向かうことにした。――西宮北口で特急に乗り換えるのって、地味に面倒くさい。
 梅田に向かう特急の中で、なんとなくスマホの音楽アプリを起動させる。――件のバンドのアルバムよりも、女性ロックシンガーのアルバムの方が多いな。そういえば――彼女もその女性ロックシンガーが好きだったか。音楽の授業でチラッと言っていた。
 無音状態で車窓を見ているのも暇なので、その女性ロックシンガーの中で一番の名盤と言われるアルバムを適当に再生させた。梅田に到着する頃には曲の折り返し地点だろうか。そのアルバムには――月9ドラマの主題歌からアニソンまで幅広く入っている。ネイティブアメリカンの民族衣装を身に纏った彼女のジャケット写真が、当時はかっこいいと思っていた。もっとも――先行シングルの「侍をイメージした衣装」の方が有名かもしれない。カバー曲なのに。
 アルバムが折り返し地点に差し掛かると同時に、車窓にはテレビ局の社屋と梅田スカイビルが見えてきた。――梅田に到着したのだ。どうせ特急の終着駅なので、僕は曲の再生が終わると同時に駅のホームへと出た。――そういえば、西川沙織との待ち合わせ場所を指定していなかったな。そう思った僕は、待ち合わせ場所に「ヨドバシ梅田の8階のエレベーターホール」を指定した。
 結果的に、彼女もヨドバシ梅田で待ち合わせをするつもりだったようで――「8階まで来てほしい」と指定したことによって、利害関係が一致した。ヨドバシ梅田の8階はレストラン街になっているので、話をするならちょうどいいだろう。
 8階でエレベーターを降りると、手を振る女性の姿が見えた。女性は切り揃えられた前髪に、長い髪を靡かせていた。――紛れもなく、僕が知る西川沙織という女性のモノだった。
「ウッキー、こっちこっち。――中学生の頃から全然変わってないわね」
「変わっていないのか。――まあ、変えるつもりなんてないし」
 僕は長い髪を嫌っているので、常に美容室でベリーショートの髪にするように頼んでいる。髪を染めようと考えたこともあったが――矢張り、僕は黒髪の方がシックリ来ると思っていた。その結果、あまり女性らしくない髪型になってしまったのだけれど。
「それでさ、ウッキーはどこの店に行くか決めてんの?」
「決めていない。――沙織ちゃんに任せる」
「仕方ないわね。ここはガッツリ行きましょ」
 そう言って選んだのは――韓国料理店だった。まあ、ガッツリ食べようと思ったらそうなるか。僕は石焼きビビンバを、沙織ちゃんは参鶏湯のセットを頼んだ。ついでに2人用の焼肉セットも追加した。
 料理を食べながら、沙織ちゃんは話を振る。
「まさかウッキーが匿名小説家として活動してるなんて思ってなかったわ」
「そうか?」
「そうよ。小説を読むのは好きでも、書くのはどうだろうと思ってたし」
「――僕はペンよりキーボードの方が早い。スマホのフリック操作はそれなりだけど」
「ああ、なるほどねぇ。確かに、ウッキーは文字を打つ速度が早いもんね」
「だから、一度はプログラマーを目指したこともあった。――結局、ダメだったんだけど」
「障がい者雇用とかは考えていなかったの?」
「こんなクソ田舎で僕を雇ってもらえるとは思えない」
「――そうね。私も大学に通ってた頃は『地元での就職』を考えてたわ。でも、矢っ張りあんな田舎じゃマトモな企業も無い訳。――結局、大阪での就職を選んだわ」
「その結果が吹田だったのか」
「そうよ。――吹田って、案外何もないわね」
「当然だろう。ガッツ大阪の招致活動がなければ、ただの万博跡地だっただろうから」
「遊園地も潰れたしね」
 確かに、西九条にハリウッドを模した遊園地が出来るまで――大阪の遊園地といえば専ら吹田か枚方を指していた。しかし、ジェットコースターの死亡事故で吹田の遊園地は閉園を余儀なくされた。
 遊園地の跡地には、三井不動産がららぽーとを、東急が映画館をそれぞれ招致した。そして、最後のピースを埋めるが如くガッツ大阪のホームスタジアムが新設されることになった。――もっとも、そこから離れると何もないのは事実だけれど。
「吹田に住んでいる以上――ガッツ大阪の試合には見に行くのか」
「残念だけど、私は鹿島アントリオンのサポーターよ。ビクトリア神戸ですらないわ」
「そういえば、そうだったな」
「とはいえ、矢っ張りビクトリア神戸と鹿島アントリオンの試合がある日は見に行くけどさ。――アウェイ側で」
「それはそうだな」
 それからしばらく、沙織ちゃんとは他愛のない話をしていただろうか。――久々に会ったから、色々と話が飛ぶのは仕方ないのか。とはいえ、互いにアルコールが入っていないだけマシなのだろう。
 他愛のない話が続いた後で――話は漸く本題に入った。
「それで、どうして僕に会いたいと思ったんだ?」
「そうねぇ。――ウッキーなら信じてもらえると思って話を振ったんだけど」
「?」
「ウッキーはさ、『悪魔による犯行』を信じるタイプ?」
「どうだろうか。京極夏彦の小説は大体が『妖怪による犯行』という体で話が進んでいくが」
「確かに、そうだわね。――とりあえず、このニュースを見てほしいの」
「ニュース?」
 そう言って、沙織ちゃんはスマホでニュースサイトの記事を見せてくれた。
吹田市で社長宅が全焼 容疑者は未だ捕まらず
 ――そういえば、そんなニュースがあったな。僕はなんとなく記憶をディグることにした。

 僕がそのニュースを知ったのは、今から1週間ぐらい前だった。確か――ビクトリア神戸がクラブ創立以来初となる1部リーグ優勝を果たした日だったか。僕はテレビを持っていないので、ニュースを知るのは(もっぱ)らニュースサイトしかない。当たり前の話だけど、地域のニュースは大半がビクトリア神戸の優勝を祝う記事が多かった。その中で――件の放火事件のニュースを見つけた。吹田で社長宅といえば、矢張り松島電器(まつしまでんき)だろうか。
 松島電器は、ガッツ大阪の母体企業となった大手総合電機メーカーである。創業の地は門真市だが、本社機能があるのは吹田である。――そういう訳で、ガッツ大阪は吹田に本拠地を構えることになった。創業者の名前は松島幸造(まつしまこうぞう)という名前だが、今の社長はその子孫ではなく――普通のCEOである。
 CEOの名前は、化野光雄(あだしのみつお)だったか。彼は経営が傾いた挙げ句ガッツ大阪のクラブ創立以来初となる2部リーグ降格を招いたCEOの首が切られ、その後任として松島電器の経営を任されることになった。もちろん、大幅な事業見直しがあったからこそ――松島電器はドン底から這い上がった。その結果、現在では茨城県にある帆立(ほたち)製作所と並んで日本における総合電機のシェアを二分している。ちなみに、帆立製作所も「(かしわ)ソレイユ」というサッカークラブを持っているので――両者のサポーターがぶつかる試合は別名「家電ダービー」と呼ばれている。――ぶっちゃけ、富士山通信工業が母体の川崎フロンティアーレも仲間に入れるべきだろう。
 それはともかく、僕はその放火事件について興味を持った。なぜ興味を持ったかというと――たまたま読んでいた鳥山石燕(とりやませきえん)の『画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)』の中に「火車」という妖怪がいたからだ。――別に、京極夏彦を意識して読んでいた訳じゃない。
 火車という妖怪は、その名の通り火を(まと)った車を引いた化け物として描かれている。その化け物は猫として解釈されることもあれば、鬼として解釈されることもある。――もっとも、妖怪なんて姿かたちが分からないモノなのだけれど。伝承によれば、生前に悪事を働いた人間の葬儀に現れ、その死体を喰い散らかすらしい。
 当然、化野光雄という人物は放火事件に巻き込まれている。――矢張り、この事件は火車の仕業なのだろうか? いや、そんな京極夏彦の小説みたいな展開がある訳ないか。小説は――飽くまでも小説でしかない。
 しかし――大阪府警が捜査を進めたところ、彼は邸宅が放火される前に毒殺で命を落としていた。つまり、誰かが彼を殺害した上で放火したのか。となると――矢張り、この殺人事件は火車の伝承に見立てているのだろうか。僕はそんなことを思いながら、事件の進展を見つめていた。
 事件の進展がないまま1週間が経過したところで、僕は沙織ちゃんから詳しい話を聞くことになった。周辺住民なら、何かしら事件の仔細(しさい)について知っていても良さそうだ。
「それで、沙織ちゃんは件の放火事件について『火車の仕業なんじゃないか』と思っているのか。――京極夏彦の『魍魎の匣』じゃあるまい」
「矢っ張り、そうなるよね。でも――私は近隣住民というか、ミステリオタクとしてこの事件を放っとけないのよ」
「なるほど。――僕は探偵じゃない」
「それはそうだけどさ、なんとなくウッキーの力を借りたいなって思って」
「どうしてだ」
「――この事件、結構複雑に入り組んでると思ってんのよね。もしかしたら、松島電器の存続にも関わるんじゃないかって思って」
「そんな大袈裟な話、ある訳ないだろう」
「でも、この記事を読んでよ。――ゴシップ誌のネット記事で申し訳ないけどさ」
 僕は、再び沙織ちゃんからスマホを手渡された。
松島電器に潜む黒い影 謎の宗教団体との蜜月関係
 記事の掲載日は今から2日前か。――松島電器は宗教団体が絡むような企業じゃないと思っていたが、この記事を読む限り関係がありそうだ。
 僕は一通り記事を読み終わったところで、沙織ちゃんにスマホを返した。
「眉唾な記事を信じるのもどうかと思うが――確かに、ゾロアスター教に似たような信仰があるな」
「ゾロアスター教って、世界最古の宗教って言われてるアレ?」
「そうだ。――サンブレイズ広島の母体企業である松田重工(まつだじゅうこう)は知っているか?」
「もちろん、知ってるわよ。――言われてみれば、松田重工のブランドって『MAZDA』って綴るわね」
「そうだ。『MATSUDA』じゃなくて『MAZDA』というスペルに意味があるんだ。これはゾロアスター教の光の神である『アフラ・マズダー』から来ている。ちなみに敵対する闇の神は『アンリ・マユ』と言う。――もっとも、『アーリマン』の方がシックリ来るだろうけど。ちなみに、ゾロアスター教の死体は土葬や火葬ではなく鳥が死体を啄む――鳥葬を用いられることが多い」
「鳥葬ねぇ」
「急に神妙な顔になってどうしたんだ」
「実はさ、最近この近辺で妙な死体が発見されることが多いのよね」
「妙な死体?」
「死体の放置場所は決まって私が住んでいる家の近くにある公園で、なおかつ同じ制服というか――衣類を身に纏っているのよね」
「それって、まさか――」
「青いジャージ。――松島電器の職員が着る制服よ」
 松島電器の職員を狙った――連続猟奇殺人事件? 僕は、沙織ちゃんの一言で心臓の鼓動が高鳴った。
 仮に、松島電器の職員の中にゾロアスター教を信仰している殺人犯がいたら、大事では済まされない。もしかして、沙織ちゃんが僕を頼った理由は――「自分の命が狙われるかもしれない」と思っているからか。僕は、念のために沙織ちゃんに今の仕事を聞くことにした。
「吹田に住んでいるということは――矢っ張り、今は松島電器で働いているのか?」
「そうよ。――私、松島電器のオートモーティブ事業部でエンジニアとして働いているのよ」
「そうか。――オートモーティブ事業部ってことは、カーナビや自動車のプログラミングか」
「ご明察。――もっとも、ウッキーほどプログラミングは得意じゃないけどね」
「謙遜するな。僕だって、発達障害を患っていなかったら今頃大企業でエンジニアとして働いている」
「まあ、そう言わずに――ウッキーには松島電器に潜入してCEO殺しの犯人を突き止めて欲しいって訳」
「――仕方ないな。その手に乗ろう」
「マジで?」
「マジだ。――でも、そんな部外者がノコノコと入っていいのか」
「うーん、カーナビのプログラミングを手伝う期間工ってことにしておこうかしら?」
「なるほど。――報酬は出るのか」
「出る訳ないじゃないの。ノーギャラよ」
「それはそうだな」
「じゃあ、これ――入館証と制服だから。事件が解決したら返してね」
 こうして、僕は松島電器に「期間工のエンジニア」として潜入することになってしまった。――沙織ちゃん、もうちょっと人使いというモノを考えて欲しい。
 入館証には「松島電器 オートモーティブ事業部 エンジニア 卯月礼華」と書かれている。――本物の入館証で間違いないらしい。そして、手渡された制服には「MATSUSHIMA」の刺繍が施されている。青と黒を基調とした制服は、ガッツ大阪のユニフォームを思わせる。――もしかして、ガッツ大阪のチームカラーもここから来ているのか。ちなみに、ガッツ大阪のライバルチームであるゴラッソ大阪はピンク色と紫色がチームカラーになっている。――かといって、ゴラッソ大阪の母体企業である八俣農工(やまたのうこう)のトラクターはピンク色ではない。そんなトラクター、ある訳がないだろう。
 入館証と制服を受け取ったところで、沙織ちゃんは吹田へと戻ることになったらしい。――矢張り、仕事が忙しいのか。というよりも、僕が暇を持て余しているだけなのかもしれない。仕方がないので、冷めきってしまったビビンバを食べることにした。もちろん、ランチ代は沙織ちゃんの奢りだった。
 帰りの電車の中で、件のアルバムの続きを聴く。――そういえば、沙織ちゃんはこのアルバムの中に入っている『プラスティック・タイムマシーン』という曲が好きだったな。もちろん、僕もこの曲が好きだ。このアルバムが発売された頃の彼女は、アーティストとしてだけではなくモデルとしても絶大な人気を誇っていたか。というか――デビューのきっかけが「読者モデルとして活動していたところに大物プロデューサーが『歌手としてデビューしてみないか』とオファーを出して、アイドルとしてデビューした」という経緯がある。アイドル時代の彼女は所謂「大物プロデューサーの曲」というイメージが強かったが、そのプロデューサーの元を離れてからは「パンクなシンガーソングライター」として自我を持った。その結果――あるマラソン選手がモチベーションを上げるために曲を聴いて、シドニーオリンピックで日本女子マラソン史上初となる金メダルを獲ることになった。
 当然、それからの彼女の躍進は止まらなかった。――マラソン選手が聴いていた曲が収録されていたアルバムのジャケットはセミヌードだったので、正直言って僕は目のやり場に困っていたのだけれど。
 そんなアルバムの次にリリースされたのが――『プラスティック・タイムマシーン』が収録されているアルバムである。小学生の時に不登校だった僕は、この曲を聴いて励まされることが多かった。そして、先行シングルでもあるカバー曲で『腑甲斐ないなんて自分を責めんな』と指摘されて――僕は漸く不登校から抜け出すことに成功したのだ。
 しかし、そんな快進撃も――所属レーベルのお家騒動というカタチで止まってしまった。紅白出場と同時に発表された1年間の活動休止を経て2004年に戻ってきたが、矢張り彼女の人気は回復しなかった。――沙織ちゃんと友達になったのは、彼女の人気が凋落してすぐくらいだっただろうか。同世代のファンが少なかったので、僕は少し嬉しかった。
 そういえば、彼女は曲において一人称で「僕」を使っていたな。――男性目線から見た女性の歌詞を書いているから当然だろうか。「私」が「僕」たる所以も、もしかしたら彼女の曲から影響を受けているのかもしれない。知らんけど。
 そうこうしているうちに、西宮ガーデンズが見えてきた。――西宮北口へと戻ってきたのだ。ここから普通電車に乗り換えて芦屋川駅へと戻ったら、僕の家はすぐそこである。――要するに、阪急芦屋川駅のすぐ近くにあるアパートだ。芦屋にあるからすべてのアパートが小綺麗というわけではなく、築35年で家賃は安い。とはいえ、築35年ということは――当然ながら、阪神大震災という災禍は生き抜いていることになる。そこのアパートの203号室に、僕は住んでいる。
「――また、宗教の勧誘か」
 そうやって独り言を呟いて、僕は勧誘チラシをくしゃくしゃにした。そして、ゴミ箱に放り込んだ。
 僕の部屋は――お世辞にも綺麗とはいえない。そして、女子力なんてモノはない。女子力があるとすれば――最近流行っている超能力少女のアニメのぬいぐるみとフィギュアが置かれていることだろうか。それ以外は、京極夏彦のノベルスとロボットアニメのプラモデルが乱雑に置かれている。――こんな部屋、沙織ちゃんに見せられないな。
 スマホの時計を見ると、午後4時を指していた。今日は土曜日だから――松島電器への潜入捜査は月曜日からだろうか。そんなことを思っていると、沙織ちゃんからスマホ宛てにメッセージが来た。
 ――今日はありがと。
 ――早速だけど、松島電器への潜入捜査の日取りが決まったわよ。
 ――上長に相談したところ、月曜日に来て欲しいって言われたわ。
 ――勤務先は松島電器の本社よ。淡路駅で下車したら、送迎バスが待っているはずよ。
 ――それじゃあ、月曜日に待ってるから。
 メッセージはそこで終わっていた。それにしても、本当にそれで事件の連鎖を止められるのだろうか? 僕はそれが不安だった。
 なんとなく、ダイナブックの電源を入れる。調べるべきモノは――矢張り、ゾロアスター教に関することだろうか。僕もなんとなくは知っているが、そこまで詳しいという訳じゃない。むしろ――知らないことの方が多い。というか、所詮こんなモノなんて「知らなくても良いこと」なのだろう。そう思いつつ、僕はウィキペディアやオンライン百科事典でゾロアスター教を適当に調べることにした。とはいえ、ウィキペディアが事実とは限らない。――もうちょっと、こう、詳しく調べることは出来ないのか。
 色々と考えているうちに、時刻は午後6時になってしまった。――図書館へと行くなら、明日だろうか。とりあえず、今日のところはさっさと寝てしまおう。

 翌日。僕は図書館へと向かった。もちろん、ゾロアスター教について調べるためである。
 バイクに跨って、芦屋川をひたすら降りていく。この時期は風が冷たいが――暑い夏に大量の汗をかくよりはマシだろう。
 市立図書館があるのは、谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)の邸宅の隣だ。芦屋を活動拠点にしていた偉大な小説家がいることを思うと――僕は彼に対してリスペクトをすべきだろうか。『細雪(さざめゆき)』しかまともに読んだことがないけど。
 図書館の中は――日曜日ということもあって、子連れで溢れていた。僕は子供が嫌いなので、ワイヤレスイヤホンで雑音を消去させる。そして、「宗教」の棚を調べることにした。――お目当ての本はすぐに見つかった。矢張り、ゾロアスター教に関する本は一定数のニーズがあるのか。
 適当に関連図書を借りて、僕はアパートへ戻ることにした。そして、早速本を読み始めた。
 ゾロアスター教というのは、その名の通りゾロアスターという宗主の元に生まれた宗教である。その歴史は世界三大宗教の1つであるキリスト教よりも古く、紀元前1000年まで遡る。普通の宗教なら、偶像と呼ばれるモノを崇拝するのだが――ゾロアスター教の場合、崇拝するモノは炎である。故に、「拝火教」とも呼ばれている。
 教義は善悪二元論という考えの元に成り立っており、唯一神である「アフラ・マズダー」と此の世のすべての悪である「アンリ・マユ」という2つの神の戦いの末に――アフラ・マズダーが勝つということになっている。そして、ゾロアスター教の最大の特徴は――「拝火教」という名前が付いていることから分かる通り、死体を燃やすことはタブーである。故に、死体は放置して、鳥が啄んで処分するのを待つことになる。――鳥葬だ。
 ゾロアスター教の考えは色々な所に影響を与えており、占星術や錬金術といった中世の魔術のようなモノにも影響を与えたらしい。僕は所謂「仏教徒」なので、こういう考えが逆に新鮮に見えた。――当然、どっぷり浸かるつもりはないのだけれど。
 仮に、化野光雄が鳥葬のために殺害されたのなら、これは矢張り彼に恨みを持つ人物による犯行なのだろうか? それとも、本当に彼はゾロアスター教を信仰していたのだろうか? ――今はまだ、そんなことを考えるフェーズじゃないのは分かっていたが、矢張り考えざるを得ない。
 そういえば、ゴミ箱に捨てた宗教の勧誘チラシには「ソロモンの導き」と書かれていたな。ゾロアスターはイランの人物で、ソロモンはイスラエルの人物か。――関係ありそうに見えて、関係は無いな。しかし、同時期に活躍したオカルティストであることに変わりはない。一応、念頭に入れて潜入捜査を行うべきだろうか。
 ――日本で、そういう類の宗教団体っているのだろうか? 疑問に思った僕は、ダイナブックで適当に「ゾロアスター教 日本」と調べることにした。すると、ある宗教団体の名前が引っ掛かった。名前は「蘇魯阿士徳の会」だったか。教団のサイトを見ると、「現代日本で唯一となるゾロアスター教系の宗教団体」と紹介されていた。――ところで、「蘇魯阿士徳」ってなんて読むのだろうか? 今はどうでもいいか。
 そういえば、沙織ちゃんが見せてくれた松島電器のスクープ記事にも「蘇魯阿士徳」という単語が見えていたな。何か関係があるのか。そう思いながら、僕は教団のサイトをディグっていた。――新興宗教のサイトにしては、出来が良いと思った。僕も、この作りを見習うべきか。
 色々と調べているうちに、僕はあるページに辿り着いた。――ページには「信者からの声」と書かれていた。
「信者からの声」には、様々な信者のコメントが寄せられていたが――僕は、その中にある人物の名前を見つけた。見覚えのある顔写真。見覚えのある名前。――化野光雄だった。
 曰く、「私はこの教団に入信したお陰で、M電器のCEOとして成功を収めました」という文章が書かれていた。どうせ「有名人を利用した違法な布教行為」だと思っていたが――あの記事を読んだ後だと、なんだか現実味が増してしまう。僕は改めて件のニュース記事を読むことにした。
松島電器に潜む黒い影 謎の宗教団体との蜜月関係 週刊近代ネット 令和×年12月2日
 近年、日本における総合電機メーカーとしてその座に君臨している松島電器。ドン底からのV字回復は「令和の奇跡」とも称されている。そんな松島電器のCEOである化野光雄に対して、ある黒い噂を突き止めた。それは民自党の政治献金問題で取り沙汰された「蘇魯阿士徳の会」との付き合いである。
「蘇魯阿士徳の会」は、最近全国で布教活動を盛んに行っている宗教団体である。「蘇魯阿士徳」は「ぞろあしと」と読む。漢字だけならピンとこないかもしれないが、これは中国における「ゾロアスター」の当て字となっている。つまり、「蘇魯阿士徳の会」はゾロアスター教系の教団である。
 教祖は「池口作太」という人物であり、創設は1992年(平成4年)と新興宗教の中では割と新しい方に入る。池口作太はイラン旅行の際にゾロアスター教の考えに衝撃を受け、そのまま日本での布教を決意した。初期の信者の数は100人程度だったが、「地方巡業」という名の布教活動も功を奏し、その勢力は衰えるどころか増すばかりである。現在の信者数は、全国で約10万人いると言われている。特に信者が多い場所は大阪府の吹田市だが、そこは松島電器の本社機能と工場がある場所だ。つまり、松島電器のV字回復の裏には――「蘇魯阿士徳の会」の信者による献金があるのではないかと考えている。
 ――こんな眉唾な記事、誰が真に受けるのだろうか。僕はそう思いながら記事を読んでいた。しかし、沙織ちゃんが松島電器の社員なら、この話はかなりの信憑性がある。それに、「蘇魯阿士徳の会」といえば、民自党の政治資金パーティーの資金源となっていた宗教団体であることもすっぱ抜かれている。
 そもそも、どうして民自党と「蘇魯阿士徳の会」の蜜月関係が明らかになったのかというと――当時の総理大臣が教団の二世信者に暗殺されたからである。事態を重く見た民自党が教団とのつながりを精査したところ、30年にも及ぶつながりが明るみになった。その結果――民自党の支持率は急激に低下、現在では「駄作」と言われた今年の大河ドラマの平均視聴率よりも低い支持率となっている。――だからと言って、野党もあまり信用できないのが実情なのだけれど。多分、このままだと「日本」という国はかちかち山で狸が作った泥舟のように沈んでしまうのだろう。そして、中国に乗っ取られるのがオチだ。
 政治的なことを考えても仕方がないので、僕は松島電器のサイトにアクセスすることにした。見るべき場所は個人向けサイトではなく企業情報サイトか。――千里丘の上に、松島電器の社屋は建っている。かつて、千里丘は松島電器が都市開発を行った「千里ニュータウン」として関西人の憧れの場所となっていた。しかし、高齢化が進んだ結果――千里ニュータウンはゴーストタウンと化してしまった。それは、遊園地の閉園も大きく影響した。ここの所、松島電器は「ガッツ大阪の本拠地を吹田市から大阪市に移す」という話もあるらしいが――サポーターからは「ゴラッソ大阪に塩を送るつもりか」という反発が相次いでいるという噂を聞いた。――もっとも、川崎フロンティアーレのサポーターである僕が知るのも野暮な話ではあるが。
 そもそも、大阪府という場所は北摂と市内、そして南部という3つの区分で分けることができる。しかし、行政同士の仲が悪い。
 かつての大阪府は腐敗した行政でお世辞にも「第2の首都」と言うにはあまりにも見苦しい状態だった。特に大阪市内の悪政は京阪神どころか関東の人間の間でも有名だったぐらいだ。そんな悪政に喝を入れるべく、とあるカリスマ弁護士が立ち上がって大阪市長になった。その結果――大阪市の行政は見違えるように改善した。しかし、革命が起きたのは大阪市内と南部に位置する堺市だけである。つまり、その他の地域は放ったらかしである。――もしも、松島電器という存在がなければ吹田はどうなっていたのだろうか? 考えただけでも恐ろしい。――まあ、兵庫県の北部よりは遥かにマシだろうけど。
 ダイナブックの前でそんなことを考えているうちに――時刻は午後6時になろうとしていた。流石にお腹が空いた。何か口にしなければ。
 僕は適当にウーマーイーツでラーメンを注文した。なんだか自炊するのも面倒だし、買い物に行くのも面倒だったのだ。
 注文してから数分後、正方形のリュックを背負ったお兄ちゃんがチャイムを押してきた。――ラーメンが来たのだ。愛想良くラーメンを受け取った所で、僕はそれを口にした。たまには、鶏白湯も悪くはないだろう。
 明日から松島電器で勤務と言う名の潜入捜査を行うので、今日はもう寝ることにした。明日から、どんなことが待ち受けているのだろうか? あまりそういう事は考えたくなかったが――今は考えざるを得ない。矢張り、化野CEOを殺害したのは松島電器の社員なのか。それとも――「蘇魯阿士徳の会」の信者なのか。どちらにせよ、しばらくは厄介な仕事に付き合うことになりそうだ。そう思いながら、僕は瞼を閉じた。
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